屋久島町「熱中症リスク」「長い拘束時間」を理由に休憩室を整備 町営牧場 過重労働死訴訟

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被告町、長峰牧場は「風通し良く」「作業環境も過酷ではない」 町産業振興課「早急に休憩場所の設置が必要」として約94万円で整備
牧場訴訟メイン1

【上左】屋久島町営長峰牧場の衛星写真(Google Earth より)【上右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町役場

 20198月に屋久島町営の長峰牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、慰謝料など約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。

 この長峰牧場で昨年、町が作業員用の休憩室を整備していたことが125日、屋久島ポストの取材でわかった。それまで牧場の事務所内には休憩室はなく、町は夏場の熱中症リスクや長い拘束時間を理由に、「早急に休憩をとることができる場所の設置が必要」として整備。その一方、訴訟で町は、長峰牧場が標高約140メートルで「風通しも良く」「作業環境も過酷と評価できない」として、田代さんの過重労働はなかったと主張している。

町産業振興課「作業員が休憩できるスペースがない」

 町への情報公開請求で開示された関係文書によると、町産業振興課は20247月、長峰牧場の事務所内にシャワーやトイレを完備した休憩室を整備するため、町内の業者と約94万円で工事請負契約を結んだ。その際に同課は、休憩室の必要性として、次の理由を挙げて予算を確保した。

「現在長峰牧場の牛舎に事務所が併設されていますが、備品等の管理を行っているため室内が非常に狭くなっており、牧場作業員が休憩をとるスペースが確保できない状態となっています」

「牧場作業は外作業であるため、これから夏になり暑さが厳しくなるため、作業中の熱中症等のリスクが非常に高まります

牧場は拘束時間も長いため、早急に休憩をとることができる場所の設置が必要だと考えます」

町開示文書
長峰牧場の休憩室を整備する工事業者を選定する際に、屋久島町が作成した文書。「熱中症等のリスク」や「牧場は拘束時間が長い」などとして、休憩室の必要性を説明している(※モザイクは屋久島ポストが加工)

被告町、職員は「自家用車の中で寛いでいた」

 その一方、被告の町は鹿児島地裁に提出した準備書面で、「長峰牧場は、標高約140メートルの山間に存在し、風通しも良い上に」、田代さんが休憩する際に「自家用車の中で音楽を流しながら寛いでいるということが普通に行われていた」と指摘。さらに「長峰牧場における業務は、一般的なイメージとして抱く不規則かつ過酷な肉体労働を要する牧場業務とは大きく乖離している」「作業環境も過酷と評価できるものではなかった」などとして、田代さんの過重労働はなかったと主張している。

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