勤務記録の改ざん指示 町「課長でなく係長」 屋久島町営牧場 過重労働死問題

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「労基法に触れる」と167時間の勤務に改ざん 産業振興課長「違法性の認識なかった」

地方公務員災害補償基金、町の杜撰な労務管理体制を認める

改ざん指示20230315⓶

 2019年8月に屋久島町営牧場で男性職員(当時49)が公務中に死亡し、その3年半後の今年2月に過重労働による公務災害と認定された問題――。

 亡くなった職員の勤務時間の記録について、「週40時間以下になるように改ざんを求められていた」とする遺族側の訴えに対し、屋久島町側が改ざんの指示は牧場を所管する産業振興課長ではなく、「(同課の)係長であったものと思われる」と、公務災害を認定した地方公務員災害補償基金に説明していたことがわかった。

 その係長は、職員が亡くなる約4カ月前に退職。その後も勤務記録の改ざんは続いたが、町は正規の時間外勤務は命令していないとして、同課長に「違法性の認識はなかった」と主張したという。

畜産係長「作業日報を雇用契約書通りに書き直して欲しい」

 同基金の鹿児島県支部が遺族に開示した説明文書によると、職員と一緒に働いていた元同僚は基金への陳述書のなかで、「産業振興課畜産係長の●●さんから、『労基法に触れるので、作業日報を雇用契約通りに書き直して欲しい』と改ざんを求められた」と主張。実際には休日なしの長時間労働が続いていたが、「167時間で作業日報を作成していました」と説明したという。

雇用契約を優先 週40時間超は「正規の時間外勤務と考えない」

 それに対し、町は指示をした係長は「業務内容、業務量からして週40時間の勤務で足りるとの認識」だったと主張。雇用契約で定められた週40時間を超えて勤務した場合は、「正規の時間外勤務としては考えないという主旨で当該指示をしたと推測される」と説明したという。

 さらに町は、勤務記録の改ざん指示について、「直接所属長の産業振興課長が出したものでなく●●係長であったものと思われる」と推察。20193月に係長が退職した後も改ざんは続いたが、「そもそも正規の時間外勤務は命じておらず、また、業務内容、業務量に照らして時間外勤務を命じなければならないものとは認識していない」として、同課長には「違法性の認識はなかった」と主張したという。

基金「時間外勤務が生じないことが所与の前提」

 町の主張を受けて、遺族は「係長が独断で指示したものとは考えにくい」として、同課長に対し「無責任」だと反論した。

 それを踏まえ、同基金の鹿児島県支部は町の労務管理について、「時間外勤務が生じないことが所与の前提となっており、また、時間外勤務を含めた業務配分を現場の職員に任せ、そもそも業務命令権者として主体的に勤務時間を管理する体制になっていなかった」と判断。さらに、暑い夏の時期における連日の屋外作業で「本人の業務負荷は相当程度に強度であった」として、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定した。

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