【視点】過重労働死「弱い者を挫き苦しめる」荒木町長の政治 屋久島町長選2023

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あらきこうじ後援会「政治とは、弱い者のためにこそ」 荒木町長、過重労働死 職員の遺族に謝罪せず「過重労働はなかった」

【視点】牧場と町長
【上】屋久島町の荒木耕治町長(あらきこうじ後援会ウェブサイトより)【下】屋久島町職員が過重労働で死亡した町営長峰牧場の衛星写真(グーグルアースより)

 投開票が1029日に迫る屋久島町長選で4選をめざす荒木耕治町長の後援会は、「討議資料」と称する広報チラシを戸別配布し、荒木町長の政治理念について、こう伝えている。

「政治とは、弱い者のためにこそ、弱い地域のためにこそ。それはいつまでも、あらきこうじの政治理念として彼の中心にどっしりと根付いています」

 だが、屋久島町営牧場で公務中に亡くなった田代健さん(当時49)の遺族に対する対応をみていると、そんな政治理念は微塵も感じられない。

町、公務災害で認定の過重労働死を否定

 田代さんの死因について、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部が今年2月、過重労働が原因で心筋梗塞を発症して死亡したと断定し、公務災害と認めたにもかかわらず、荒木町長は遺族に謝罪することなく沈黙を続けている。さらには、荒木町長ら町幹部は「町としては、過重労働はなかったという認識」だとして、同基金の判断を真っ向から否定する主張をしている。

半年間で休日は5日のみの過酷労働

 しかし、同基金の報告によると、荒木町長ら町幹部は田代さんの勤務管理を一切していなかった。それどころか、1日に約10時間も勤務していたのに、労働基準法に違反しないようにと、勤務記録には16時間半と記載するように指示までしていた。

 その結果、田代さんは20198月に亡くなる3日前までに連続で約50日間勤務していたほか、死亡するまでの半年間で取った休日はわずか5日のみだった。死亡当時、唯一の同僚だった職員は急性肝炎で牧場を離れており、田代さんは一人での勤務を強いられていた。そして、心筋梗塞を発症したのちに7時間以上も放置されたため、適切な医療処置を受けられないまま亡くなった。

訴訟でも「その認識はなかった」の常套句か?

 これだけの事実について、公的機関である地方公務員災害補償基金が認めているのに、荒木町長は「過重労働はなかった」と言い張っているが、何を根拠にそう主張しているのか。そもそも労基法に違反し、雇用主として義務付けられた勤務管理をしていなかったのであれば、田代さんが働いていた勤務時間を知る由もないはずである。

 それでも、荒木町長は「過重労働はなかった」と主張して、田代さんの遺族が1019日に提起する損害賠償請求訴訟で反論するのだろう。そして、自身の責任を回避するために、常套句である「その認識はなかった」という逃げ口上を連発するに違いない。

 これでは「弱い者を挫き苦しめる政治」であり、それが荒木町長の「中心にどっしりと根付いた政治理念」ということになる。

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