【視点】「町政刷新」の民意を反故にした共倒れ候補の重責 屋久島町長選2023
民意6割超、荒木町政に「NO」➡ それでも4期16年の長期町政へ
現町政の「継続か?」 それとも「刷新か?」――。
屋久島町長選は10月29日に投開票があり、現職の荒木耕治氏(73)が当選し、4期16年にわたる長期町政を担うことになった。選挙の勝敗だけをみれば、町民が3期12年続いた荒木町政を評価し、「現町政の継続」を選んだ格好だ。だが、各候補の得票数を詳細にみると、屋久島町民の民意は「現町政の刷新」だったことがわかる。
「町政刷新」4786票 > 現職・荒木氏 3059票
荒木氏の得票数3059票に対し、それぞれ現町政の「刷新」を訴えた岩川卓誉氏の2650票、小脇清治氏の1388票、矢野憲一氏の748票を合わせると4786票となり、荒木氏を1727票上回った。つまり、投票した有権者7894人のうち、その約61%が現町政の「継続」を望まなかったということである。
岩川氏・小脇氏 4038票 > 現職・荒木氏 3059票
さらに、旧上屋久町の北部、旧屋久町の南部という「地盤」でみると、それでも民意が「現町政の刷新」にあったことがわかる。
荒木氏と矢野氏は同じ北部の宮之浦地区の出身で、支持者が重なり競合する。その一方、岩川氏と小脇氏は南部の安房地区の出身で、北部に対抗する地盤に支持者を持つ。そして、荒木氏の3059票に対し、岩川氏と小脇氏の得票数を合わせると4038票で、荒木氏を979票も上回る結果となり、数のうえでは完全に「荒木氏の敗北」だった。
「誰が町長になるのか」を優先して民意を裏切る
それにもかかわらず、荒木氏に4選を許した最大の原因は、岩川氏と小脇氏が共倒れになったことだ。同じ「現町政の刷新」という公約を掲げ、ともに南部の出身であれば、候補者を一本化して対抗し、不正が続く屋久島町政を正常化できたはずである。
その意味で、多くの民意を反故にした岩川氏と小脇氏の責任は、極めて重いと言わざるを得ない。「誰が町長になるのか」ではなく、「新たな町長は何をすべきなのか」という考えを優先していれば、刷新を望む民意を裏切ることはなかっただろう。
自身と反する民意を受け止める4期目を
一方、対抗馬の「失策」で4選を果たした荒木氏には、出張旅費不正精算や補助金不正請求事件など、度重なる不正や不祥事を猛省して、刷新を望む民意をくみ上げてもらいたい。「一票でも勝ちは勝ち」。前回の町長選で、43票の僅差で勝った荒木氏はそう開き直っていたが、自身と反する民意を受け止められないようでは、屋久島町民1万2000人のトップはとても続けられないだろう。
刷新を望む民意を背負い荒木町政にどう向き合うのか
さて、「現町政の刷新」を掲げて戦った3氏は、これから始まる4期目の荒木町政に対し、どのように向き合うのか。
特に次点となった岩川氏には、刷新を望む多くの民意を背負った重い責任がある。まだ36歳。選挙公約では「町を変えるのは今が最後のチャンス!!」がスローガンだったが、今回の町長選を「最後」にすることなく、いまの荒木町政が抱える問題に対し、果敢に立ち向かってもらいたい。

