【取材後記】職員死亡の責任を放棄して臨む町長選 屋久島町営牧場 過重労働死問題
公務災害認定から8カ月 調査も報告もせず沈黙を続ける荒木町長
遺族に謝罪しないまま 10月24日に町長選出馬へ

町職員が独り作業中に亡くなった屋久島町営長峰牧場(グーグルアースより)
屋久島町営の長峰牧場で公務中に過重労働で死亡した町職員(当時49)の公務災害が認定されてから、まもなく8カ月となる。公務災害とは、民間会社などで起こった労働災害と同じで、公務員が公務で負傷または死亡したときに認められるもので、雇用主は刑事と民事の両面において、重い責任を負うことになる。
もし、民間会社で社員の死亡が労災に認定されたら、社長を含めた管理職は労働基準監督署に報告をしたうえで、労災保険で補償の手続きをしたり、再発防止策を講じたりしなくてはならない。さらに、遺族から損賠賠償請求訴訟を提起されたり、業務上過失致死などの容疑で刑事告訴されたりする可能性もある。
それにもかかわらず、この8カ月間、荒木耕治町長は公務災害の事実を町議会で報告することもなく、職員の死亡について調査したり、再発防止策を講じたりしないまま、じっと沈黙を続けている。さらには、荒木町長は遺族を訪ねて謝罪することもなく、まるで「他人事」のように、自分が雇用した職員の死から目を背けている。
公務災害の認定理由を確認しない町幹部
この職員の死亡について、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部は今年2月14日に公務災害と認定したが、そのすぐ後に開かれた町議会3月定例会における町幹部の対応は最悪だった。
まず、荒木町長は「諸般の報告」や「行政報告」のなかで、亡くなった職員に対して哀悼の意を表わさないばかりか、公務災害が認定された事実すら報告せず、完全に無視をした。そして、町議から公務災害について質問が出されると、荒木町長は総務課長を答弁に立たせて、「その原因が(地方公務員災害補償基金から)詳細に示されてない」として、町から公に報告する予定がないことを明らかにした。
荒木町長ら町幹部には、雇用主として重い責任があるのに、公務災害の報告をしない理由が「その原因が詳細に示されていない」とはどういうことだろう。本来であれば、自分たちから率先して同基金に問い合わせて、その原因を確認すべきなのに、これでは雇用主としての責任を完全に放棄しているのと同然である。
労基法に違反した雇用契約
それにしても気の毒なのは、亡くなった職員とその遺族だ。
労働基準法に違反する形で雇用契約を結ばされ、1カ月に100時間を超える時間外勤務をしても、月給は23万9000円の固定給だった。ボーナスも通勤手当も一切支給されず、有給休暇を翌年に持ち越すこともできない規定になっていた。
そして、過重労働で心筋梗塞を発症して死亡したとする公務災害が認定されても、荒木町長は自ら議会で報告しないばかりか、遺族に面会して謝罪すらしていない。
尊い命が失われ、その責任が雇用主の自分にあるとわかっていながら、現実に向き合わない地方自治体の首長。そんな荒木町長が10月24日、4回目の当選をめざして屋久島町長選に出馬する。
