【視点】荒木町政、訴訟にまみれた4期目の船出 屋久島町長選2023

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出張旅費不正、補助金不正、高額贈答、職員の過重労働死 すべて調査せず放置したまま 3059票の民意で4

一方、6割超の民意は現町政に「NO
【視点】訴訟まみれの船出

 念願の4選を果たした屋久島町長、荒木耕治氏の3期目は不正と不祥事、そして訴訟にまみれた4年間だった。

荒木町長、出張旅費200万円着服

 3選した直後の201912月には、荒木町長が航空運賃の高齢者割引を悪用して、出張旅費の不正精算をしていたことが発覚。普通運賃の航空券を払い戻し、格安の高齢者割引で買い直す手法で差額の着服を繰り返した結果、被害の総額は約200万円にもなった。
南日本新聞2019年12月27日付①
屋久島町の荒木耕治町長の出張旅費着服について報じる南日本新聞1面の記事(2019年12月27日付 ※著作権保護のため記事本文にモザイク加工をしています)

【動画】出張旅費の着服問題で町民から辞職勧告書を手渡される荒木耕治町長(2020年1月10日、屋久島町役場議会棟)

副町長ら虚偽領収書で不正精算

 さらに出張旅費の不正精算は、岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長(当時)ら町役場や町議会の幹部らにも広がった。

 岩川副町長らは実際の航空運賃より高い金額が記載された虚偽の領収書で精算し、その差額を着服していた。不正精算に使われた虚偽の領収書は、少なくとも15枚が確認されたが、荒木町長は領収書が発行された経緯を調べることなく、いまだにこの問題を放置し続けている。
01岩川副町長)領収書名古屋

岩川浩一副町長(当時)が不正精算に使った虚偽の領収書。実際より高額の航空運賃が記載され、但し書きの経路も実際とは違っていた

国に虚偽報告で補助金1668万円返還

 202111月には、町が水道工事の補助金を国に申請する際に、工事が未完成の段階で「すべての工事が終わった」と虚偽の報告をしていたことが発覚。その結果、町は国から補助金と加算金の約1668万円を返還するように求められ、町民の公金から返納した。

 ところが町は、補助金返還の責任について、一方的に「工事が遅れた業者側にある」と主張。それに対し住民訴訟が提起され、荒木町長ら町幹部に約135万円の賠償責任があることを認める一審判決が出たが、町は不服だとして控訴している。
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屋久島町が国に提出した虚偽の工事検査調書。工事が全体の15%しか完成していない段階で「契約図書に基づき良好に施工されている(合格)」と記載していた

国会議員らに高額贈答を続けて住民訴訟に

 20228月には、荒木町長が町長交際費を使って国会議員らに高額の贈答を続けていたことが判明。特に多いのは自民党の森山裕衆院議員(鹿児島4)に対する贈答で、5年間で焼酎180本やイセエビなどの魚介類を贈り、約60万円を町民の公費から支出していた。そして、この交際費問題でも住民訴訟が提起され、荒木町長は約200万円の損害賠償を求められ、いま鹿児島地裁で係争中だ。
無何有など
荒木耕治町長が国会議員らに贈答していた屋久島産の焼酎各種

町職員の過重労働死も放置し 7000万円の損害賠償請求訴訟に

 ここまでは公金に関わる問題だったが、遂には尊い人命が失われる不祥事まで発生した。

 20198月に町営牧場で公務中に死亡した町職員の田代健さん(当時49)の死因について、地方公務員災害補償基金の鹿児島県支部が20232月、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定。田代さんは亡くなる直前まで、連続で約50日間も働き、半年で休日が5日間しか取れないなど、過酷な労働を強いられていた。

 だが、荒木町長ら町幹部は「過重労働はなかったという認識」だとして、遺族への謝罪はおろか、公務災害の事実を町議会で報告すらしなかった。さらには、公務災害の認定理由とされた過重労働について調査することなく、再発防止策を講じないまま放置を続けている。

 そこで、遺族は1019日、屋久島町を相手取り、約7000万円の損害賠償請求訴訟を提起して、荒木町長ら町幹部の管理責任を明らかにしようとしている。
記者会見の全景②
【左】屋久島町営牧場・過重労働死訴訟の記者会見には、報道各社の記者やカメラマンが大勢集まった【右】田代健さんの遺影を前に記者会見する遺族側代理人の立野嘉英弁護士(いずれも2023年10月19日、鹿児島県庁記者クラブ)


それでも荒木氏を支持する民意

 これだけの不正や不祥事、訴訟が続いているなかで、それでも荒木氏に町のトップを続けてほしいと願ったのは、3059票を投じた屋久島町民たちだ。公金だけでなく、尊い人命に関わる問題まで、荒木氏が一切の調査をすることなく放置している事実があっても、それぞれが1票を投じたのであれば、それが屋久島町の民意ということになる。

4786票の民意は正反対

 ただ、その一方で正反対の民意もある。現町政の刷新を訴えた新人3人の得票数を合計すると、荒木氏の得票数を1727票も上回る4786票になる。有効投票数は7845票なので、その6割以上が、人命や公金の問題を軽く扱っているとしか思えない荒木氏に対し、「NO」を突き付けたということだ。

 1111日から始まる荒木氏の4期目は、自身の責任が問われた訴訟を3件も抱えての船出となる。荒木氏を支持した3059票の民意は数々の不正や不祥事を水に流したが、果たして司法の判断はどうなるのか、注目して見守りたい。

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  1. 屋久島一町民

    民意、民意といつも書いてますが、
    執筆者の民意ですか。
    前にもここで書きましたが、選挙が一番の民意ですよ。
    今の選挙制度に疑問があるなら、法律を変えなければなりません。
    今回、荒木候補に投票した人は馬鹿だと言わんばかりですね。

  2. 人の命を大切にしない民意って?

    荒木町長が雇用した屋久島町職員が過重労働で死亡した事実を無視したうえで、それでも当選したのであれば、それが屋久島町民の民意です。
    でも、人の命を大切にしない民意って、果たして許されるのでしょうか?
    屋久島一町民さんは、町役場に使い捨てにされて、命を奪われたご本人、そして遺族の気持ちを無視して、そんな主張をされるのでしょうか。
    荒木町政が一人の人命を奪ったことは、公務災害が認定されているので事実です。これから、その民事訴訟が始まるので、すべてが明らかになるでしょう。
    いまの屋久島町政は、そんな大問題を抱えているのです。
    それでも、 屋久島一町民さんは、同じ主張をされるのでしょうか?

  3. 無慈悲な民意

    人の命なんて、どうでもいい町長と、それを支持する屋久島町の民意って、ことですね。恐ろしい町です。

  4. その「民意」はおかしいと思います

    屋久島一町民さんへ
    選挙が一番の民意だと主張されていますが、それはその通りだと思います。
    ただ問題は、人の命を大切にしない民意って?さんがおっしゃっているように、自分が管轄する業務に従事していた方が、その過酷な仕事のせいで命を落とされたにもかかわらず、その事実をまるでなかったかのように扱い、本来とるべき責任を全くとらなかった、そんな人を町長に再びしてしまった、屋久島町民の民意にあると思います。
    その事実を知らないのか、知っていて見て見ぬふりをしているのかは分かりませんが、どちらにしろ、そんな人を支持する町民が大多数な現在の屋久島の情勢を、末恐ろしく感じています。
    こんな島で良いわけありませんが、荒木町政を変える次のチャンスは、早くても4年後になってしまいました。
    その時までに、少しでもこの「民意」が変わることを、一町民として切に願っています。

  5. 屋久島一町民さんへ

    選挙は多数決ですから、多くの支持を取ればそれが民意でしょう。
    しかしバカ?とは言いませんが、3000人の支持者は、不正、不祥事を容認、職員の死をも無視して良いと言っている事になります。
    これって人として正常でしょうか?何か狂ってるとしか思えません。

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