遺族、町の労務管理に対し「落ち度が重大」「極めて悪質」 屋久島町営牧場 過重労働死訴訟
町「高血圧症」など理由に損害賠償額は「少なくとも5割に減額」 遺族「労務管理上の落ち度が重大」として減額を否定
【上左】屋久島町営長峰牧場の衛星写真(Google Earth より)【上右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町役場
2019年8月に屋久島町営の長峰牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働で心筋梗塞を発症したことによる公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、慰謝料など約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。
この訴訟の第5回口頭弁論で、遺族側は「被告の労務管理上の落ち度が重大」であるとして、田代さんの健康状態などを理由に損害賠償額を減らす「素因減額」は否定されるべきだと主張した。これまで町は、もし町の安全配慮義務違反と田代さんの死亡に「相当因果関係」が認められる場合は、「少なくとも5割の素因減額がなされるべきである」と主張していた。
町、被害者の過失考慮した民法722条2項の適用を主張
町は鹿児島地裁に提出した準備書面で、仮に「(田代さんの)死亡結果が心筋梗塞であり、被告町に何らかの安全配慮義務違反が認められ、かつ、当該安全配慮義務違反と心筋梗塞との間に相当因果関係が認められる場合」は、田代さんの「高血圧症」や「長期の喫煙歴」など「多数の危険因子が心筋梗塞の発症に大きく寄与していることは明らかである」と指摘。それを踏まえ、被害者の過失を考慮して損害賠償額を算定することを規定した民法722条2項を適用し、「少なくとも5割の素因減額がなされるべきである」と主張していた。
遺族、町は「長時間勤務」「連続勤務」「暑熱環境」を放置と主張
それに対し遺族側は、田代さんの業務内容と勤務体制について、次の指摘をした。
「勤務時間が長時間になっている」
「休日のほとんどない連続勤務になっている」
「暑熱環境も過酷であること等の業務の過重性を容易に認識し得た」
そして遺族側は、そのような労働環境であったにもかかわらず、「(町は)業務量・業務内容の負担軽減や十分な人員補充、暑熱対策等の具体的な措置を全く講じないまま、長時間勤務や連続勤務、暑熱環境等を是正する措置を怠った」と主張。さらに、客観的に過重勤務は認識可能であり、使用者として必要な労務管理を全くしていないとして、「その落ち度は重大である」とした。また、田代さんは作業日報を雇用契約書にある週40時間の勤務時間で記載するように指示されており、町の労務管理は「極めて悪質である」と主張した。
それらを踏まえ、遺族側は「被告らの労務管理上の落ち度が重大である本件においては、過失相殺は否定されるべきである」と反論した。
町が指摘する健康上の「危険因子」も否定
さらに加えて、町が指摘する田代さんの健康上の「危険因子」について、遺族側は次の指摘をした。
「その数値が正常値(基準値)の範囲内かそれをわずかに超える程度」
「平成28年(2016年)1月というかなり以前の一時的な数値」
「その後の経過・状態が全く不明なもの」
「本件発症直前には業務が要因となって重症化した」
それらの指摘を踏まえ、遺族側は「被告の労務管理上の落ち度が重大である本件においては、上記の通常見られる程度の素因や本件発症当時の状態が不明な素因をもって素因減額をすることは否定されるべきである」と主張した。