【取材後記】なぜ「マスコミ」だけ議会取材ができるのか?/編集委員会
「事実を正確に提供することができる能力、資質を備えた者」とは?
屋久島町議会の石田尾茂樹議長は、調査報道メディア「屋久島ポスト」などを運営する報道機関「地域メディア・屋久島」の議場内での取材を禁止しています。それはなぜか。地域メディア・屋久島が日本新聞協会などに加盟する「マスコミ」ではないからです。
事実を正確に伝えられるのは「マスコミ」だけ?
それでは、なぜ石田尾議長は「マスコミ」だけに取材を特別に許可するのでしょうか。
その理由がわかる文書が見つかりました。3年前、フリージャーナリストの議会取材を排除するために、町議会の依頼で町法務事務専門員の河野通孝氏が作成した「通告文」です。2018年7月27日の町議会議会運営委員会で議題となり、出席した全委員に配布されました。
そのなかで、取材を「マスコミ(報道機関)」だけに許可する理由を次のように記しています。
「会議にかかる事実を正確に提供することができる能力、資質を備えた者すなわち報道機関に限定して許可することとしている」
つまり、町議会は「事実を正確に提供することができる能力、資質を備えた者」に取材を許可するという前提に立ち、それを議長判断で「マスコミ(報道機関)」に限定しているというのです。でも、事実を正確に伝える仕事は、「マスコミ」以外にも大勢の人たちがしています。日本新聞協会などに加盟する「マスコミ」だけを、事実を正確に伝える「能力、資質を備えた者」と限定する根拠はありません。
議員席から取材禁止の理由などを問われた後、手を出して発言を制止する石田尾茂樹議長(2021年12月7日、屋久島町役場議会棟)
あの池上彰さんも取材できないとは・・・・・・
これでは、もし仮に、著名なフリージャーナリストの池上彰氏が雑誌の取材で町議会を訪れたら、石田尾議長は池上氏に対して、こう言わねばなりません。
「あなたは事実を正確に伝える能力と資質があると認められないので、取材は許可しません」
でも、そんなことを言われたら、池上氏は腰を抜かすほど驚いて、東京に帰ってから、閉鎖的な屋久島町議会の体質を批判する記事を書くことでしょう。
ネット媒体などでフリージャーナリストも活躍
インターネットの普及で、いま報道の世界は大きく変貌しており、フリージャーナリストであっても、首相の記者会見に参加しています。マスコミやフリージャーナリストらのニュースを束ねて配信するヤフーやグーグルなどのニュースサイトは、マスコミ各社のウェブサイトより多くの読者を集めて、国民の知る権利に応えています。
そんな状況のなかで、日本新聞協会などに加盟する「マスコミ」だけに、特別に取材を許可する石田尾議長の判断は、報道媒体が紙と電波に限られた時代の「遺産」だと言わざるを得ません。
議会をネット配信するのに、それでも取材制限?
屋久島町議会は来年中に議会のネット配信をする方向で、いま検討に入っています。そうなれば、町民だけでなく、全国、そして全世界の人たちが、自宅や出先で気軽に町議会を傍聴でき、記録のために録画や録音もできるようになります。鹿児島市内に拠点があるマスコミ各社も、実際に議場に来なくても、議会取材ができるようになります。
それでも続けるのでしょうか。「マスコミ」だけの特別許可を。
さらには、法人であるか否か、取材規程があるか否か・・・・・・。今後の傍聴規程の見直しで、そんなことを理由に取材の可否を判断しようとする動きが議会内にある、との情報もあります。でも、ネット配信される議会を、そこまでして制限する合理的な理由がどこにあるのでしょうか。
ここで判断を間違えると、屋久島町議会の傍聴規程は、多くの人々の知る権利を奪う「負の世界遺産」として、後世に引き継がれることになります。