【取材後記】なぜ石田尾議長は議会取材を拒むのか/編集委員会
議場での発言に責任を持つ町議会に

屋久島町議会が議会取材のルールとして、「自由に撮影と録音を許可」と「日本新聞協会などの加盟社に限定」の2案について協議していることがわかりました。フリー記者らの取材を拒否する石田尾茂樹議長に対して、私たち「屋久島ポスト」が抗議したことがきっかけで始まった議論ですが、ここまで話が進んでも大きな疑問が残ります。
目立つ「結果責任を負わない発言」
どうして、日本新聞協会などの加盟社に限定する案が出ているのか?
この案は、いま石田尾議長が屋久島ポストの取材を拒否する理由と同じです。多くの町議が「広く開かれた町議会」をめざすと言っているのに、なぜそこまで制限する必要があるのでしょう。
屋久島ポストでは、過去の議事録を調べて、各町議の議会発言を検証する作業を続けていますが、そこで目立つのは、結果責任を負わない発言の多さです。その最たる例は、荒木耕治町長らによる出張旅費不正問題に関するもので、多くの町議が不正調査に反対する発言を続けたため、結果的に一連の不正が刑事事件に発展してしまいました。
石田尾町議、不正調査に反対「刑事告発してください」
2020年3月の町議会もそうでした。あらたに不正が発覚した岩川浩一副町長(当時)について、減給処分をする前に調査するべきだとする意見に対し、石田尾議長はこう発言しています。
「刑事告発してくださいよ。やればいいじゃないですか」
【動画】2020年3月の町議会で、屋久島町幹部らによる一連の出張旅費不正問題をめぐり、「刑事告発してくださいよ」と発言した石田尾茂樹町議
その段階で、不正を調査する百条委員会を立ち上げていれば、刑事事件になるのを避けられたはずですが、石田尾議長は「刑事告発してくださいよ」と発言。そして、その言葉どおりに岩川氏は告発され、荒木町長らと同様に起訴猶予の不起訴処分になりました。
いま思えば、あの時に刑事告発を促すような発言をせずに、町議会が独自に不正調査をしていたら、きっと刑事事件にはならなかったでしょう。つまり、石田尾議長の発言は、結果的に一連の旅費不正問題を刑事事件に発展させ、屋久島町の社会的な信頼を失墜させる一つの要因になったとも言えます。
6月から議会動画を配信予定
これまで、屋久島ポストは議場から締め出されながらも、町役場内に設置された議会中継のモニターで取材を続け、町民の皆さまに議会の様子を伝えてきました。その結果、この記事で紹介した石田尾議長のケースも含め、町議による数々の「問題発言」を記録してきました。
今年6月からは、全国の地方議会の後を追って、ようやく屋久島町議会でもユーチューブを利用した動画配信が始まる予定です。そんな時代なのに、それでも議会取材を「日本新聞協会などの加盟社に限定」する合理的な理由は、どこにも見当たりません。
あとで振り返って検証されても、町議の皆さんが責任ある発言をしていれば、何も心配はないはずです。むしろ、自分の議場での発言が広く知られ、多くの町民から信頼されることにもつながるでしょう。
