【取材後記】法的責任を業者に押し付けるな/編集委員会
補助金不正請求事件、第三者委員会で公平公正な調査を
鹿児島県屋久島町の水道工事をめぐる補助金不正請求事件を受けて、町は2022年3月1日に国へ報告書を提出しました。いま、その報告書を入念に読んでいますが、そこに書かれた町の「言い分」は、この問題の責任を一方的に業者に押し付けるものばかりです。
「請負業者から(工事)遅延の連絡が無く」
「請負業者の早期に工事を完了する連絡を信じ」
つまり、工事の遅れを招いた業者側に法的な責任があるというのです。そして、町は国に返還した加算金を含む補助金約1668万円について、その全額を複数の業者に請求する方針を示しています。
町の主張と食い違う業者の証言
そこで、工事に関わった業者に話を聞いてみることに。すると、町の主張とはまったく正反対の証言が出てきました。
「工事が未完成だと伝えたのに、町が無理に工事の完成検査をした」
「工事が終わったという虚偽の検査調書を作ったのは町だ」
「町の判断で補助金を申請したのに、なぜ業者の責任なのか」
もし業者の証言どおりであれば、町の工事管理が杜撰だったことになります。そして何より問題なのは、工事が終わったという虚偽の検査調書を作成し、それを国に提出して補助金を不正請求したのは業者ではなく、屋久島町だということです。
屋久島町が国に補助金を申請する際に提出した「検査調書」。工事が終わっていないにもかかわらず、「契約図書に基づき良好に施工されている。(合格)」などと虚偽の内容が記載されている
補助金の返還命令は町に法的責任
今回、厚生労働省が返還命令を出したのは、業者側の工事が遅れたことが理由ではなく、屋久島町が補助金適正化法に違反する形で、補助金を不正に請求したからです。補助金の申請期限までに工事が終わっていないのであれば、正直に厚労省に報告して、予算の繰越手続きをすればいいだけです。それなのに、町はすべての工事が終わったことを装う虚偽の検査調書を国に提出して、計約1億1800万円の補助金を受け取ったのです。
その事実を踏まえれば、法的な責任が屋久島町にあることは明らかです。それにもかかわらず、なぜ町は業者側に法的な責任があると言い切れるのでしょう。
身内だけの不公正な調査で責任回避
理由は簡単です。これまでずっと、町が身内の関係者だけで「調査」をしているからです。それゆえ、町にとって不都合な事実が表に出ることはなく、自分たちにあるのは「道義的な責任」だけだとなります。それに対し、業者側については「債務不履行があった」「工事を早期に終える約束を守らなかった」などと言って、一方的に法的な責任を複数の業者に押し付ける主張を続けているのです。
もし、法律の専門家らを交えた第三者委員会が調査していれば、こうはいかないでしょう。屋久島ポストが取材しただけでも、町と業者の主張は食い違っており、それを深掘りすれば、さらに大きな違いが浮き彫りになるはずです。そして、その食い違いを第三者が公平公正な目で検証することで、どこに真の責任があるのかがわかるでしょう。
いま、町は「第三者」だとする弁護士に依頼して、業者側に請求する金額などを精査中です。しかし、町が代理人を依頼する弁護士が、果たして第三者でしょうか。町が自分で選任する弁護士であれば、それも身内であり、そこに公平公正な目が入る余地はありません。
第三者の調査を拒む町役場と町議会
一連の出張旅費不正問題もそうでしたが、屋久島町は自身の不正や不祥事に対して、第三者による調査を頑なに拒み続けています。それは町議会も同じで、調査特別委員会(百条委員会)の設置案が出されるたびに、圧倒的な反対多数で否決して、荒木耕治町長ら町幹部を守ることに徹してきました。そして、やむなく司法の判断を仰ぐしかなくなり、最終的には刑事事件に発展してしまいました。
ふたたび刑事事件の可能性も
今回の補助金不正請求事件には、複数の違法行為が含まれています。うその検査調書などによる補助金申請は補助金適正化法、工事代金の前払いは地方自治法に、それぞれ違反しています。さらに、その過程で作成した関係文書については、刑法の虚偽有印公文書作成・同行使の疑いもあり、ふたたび刑事事件になる可能性もあります。
それゆえ、一刻も早く第三者委員会を立ち上げ、今回の補助金不正請求について、公平公正な目で調査をする必要があります。このまま、一方的な町の主張を認め、法的な責任を業者に押し付けてはなりません。
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