【取材後記】無責任すぎませんか? 町議の発言/編集委員会
旅費不正調査、「自己申告で足りる」→だれも申告せず、さらなる虚偽領収書が発覚
4回目の反対理由は「監査委員を罷免する必要がある」
屋久島町議会の取材を長年していますが、いま振り返ると町議の無責任な発言がたくさんありました。なかでも際立って無責任なのは、一連の出張旅費不正問題をめぐる発言です。
荒木町長の虚偽答弁を信じて百条委に反対
虚偽答弁で旅費着服を否定した荒木耕町長を信じて、不正調査の百条委員会設置案に反対意見を言ったら、実はしっかり着服していて、その総額は約200万円に。その後も岩川浩一副町長ら町幹部の虚偽領収書が次々と見つかりましたが、「航空機だけでなく、船で行った出張も調べるべき」「平等で十分な調査できない」などと主張して、計4回も百条委の設置案を否決してきました。
【動画】荒木耕治町長の旅費不正問題などを調査する百条委員会に対する反対討論(2019年12月17日、屋久島町議会)
石田尾町議「自己申告で足りる」
それら数々の無責任な発言のなかで、最も記憶に残っている一つが、2020年3月の町議会で発議された百条委設置案に対する反対討論です。主に虚偽領収書を使った不正精算を調査するために提案されたのですが、それに対して、現議長の石田尾茂樹町議と岩山鶴美町議はこう言って反対しました。
「自己申告で足りる」「みんなが自己申告すればいい」
【動画】虚偽領収書などの出張旅費不正問題を調査する百条委員会の設置案に対して、反対討論する石田尾茂樹町議(2020年3月23日、屋久島町議会、町役場内の議会中継モニター画面を撮影)
※一部に音声の途切れがあります
航空機だけなく、船の出張も調査するなら「賛成する」
そして2人は、調査対象が航空機を使った出張だけに限定され、船で行った出張が含まれていないことを主な理由として、百条委の設置に反対しました。
その反対討論を聞いた当時、「それなら賛成して百条委を設置したうえで、船を使った出張の調査もすればいいのに」と思ったものです。でも、初めから反対ありきの討論だったようで、もし船で行った出張を調査対象に加えても、次は「鉄道が入ってない」などと主張して、結局は反対していたことでしょう。
そして最も無責任なのは、2人が口を揃えた「自己申告」です。その後の取材や監査で、一般職員も含めて虚偽領収書を使った不正精算が続々と見つかりましたが、監査の実施が決まる前に、だれ一人として積極的に名乗り出た人はいませんでした。
【動画】虚偽領収書などの出張旅費不正問題を調査する百条委員会の設置案に対して、反対討論する岩山鶴美町議(2020年3月23日、屋久島町議会、町役場内の議会中継モニター画面を撮影)
「自己申告で十分」の日高町議も虚偽領収書で不正精算
さらに同年9月の町議会でも、同様に百条委の設置案が提案されたのですが、その時は、日高好作町議がこう言って反対しています。
「再度、何名か客観的な立場で(自分の旅費精算書を)見ていただいて、もし間違いがあれば申し出て正す。 そういうふうに自分の身の処し方は思っています」
つまり、石田尾、岩山の両町議と同じく、「自己申告」でいいということです。
ところが、2022年3月に公表された監査報告で、その日高町議も虚偽の領収書を使って不正精算をしていたことが発覚しました。すると、「何名か客観的な立場」で調べてもらったはずの日高町議は、監査や町議会で「記憶がない」を連発。屋久島ポストの取材には「書きたければ、自由に書いて」と言い放ったきり、取材には一切応じていません。
【動画】虚偽領収書について説明を拒否する日高好作町議(2022年5月24日、屋久島町議会)
「自己申告」では不十分の結果に
数多くの虚偽領収書が見つかったいま、「自己申告」で十分と議会で発言した石田尾、岩山、日高の各町議はどう思っているのでしょう。結果的に自分たちの主張が間違っていたわけですが、それでも町議会は虚偽領収書の不正調査を拒み続けています。
中馬町議、根拠なく「監査委員を罷免する必要」
このように過去の議事録を紐解くと、多くの町議が無責任な発言をしていたことがわかります。そして、4回目の百
条委設置案が否決された6月22日の町議会で、またしても、無責任な発言がありました。反対した9人のうち、ただ一人だけ反対討論した中馬慎一郎町議の発言です。
「(百条委で)調査するとなれば、議会が認めた今の監査委員を罷免する必要がある」
百条委で調査をしたら、監査委員を罷免する必要があるという根拠はどこにもなく、これもまた極めて無責任な発言です。虚偽領収書の問題を放置したままでいいはずはなく、明確に反対する理由が見つからないなかで、無理矢理にひねり出した反対理由だったとしか思えません。
【動画】虚偽領収書調査の百条委員会設置案に対し、反対討論する中馬慎一郎町議(2022年6月22日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより)
議会動画の視聴で緊張感を
6月から議会動画のユーチューブ配信が始まりました。これを機に、ぜひ多くの方に各町議の発言を聴いてもらい、その後、議論された問題がどのような結果になったのかを確認していただければと思います。
多くの町民が町議たちの発言を聴いている。その緊張感が増せば、町議の無責任な発言は減っていくでしょう。
■屋久島町議会YouTubeチャンネル

