取材後記

【取材後記】虚偽の「許可」で不法焼却した岩山町議の「悪意」 屋久島町議アパート廃材・投棄焼却事件

yakushima-post

罰金命令を受けた町民「議員だけ注意は不公平な捜査」 岩山町議、その町民には「悪意があったのだと思う」

町から「許可を得ていた」と虚偽説明も
取材後記20230827
【中央】2019年9月の屋久島町議会の一般質問で、ごみのポイ捨てや不法投棄に罰金を科す条例制定の提案をした岩山鶴美町議【左】岩山町議が投棄した廃棄物(2020年9月14日、町民提供)【右】廃棄物を焼却した現場(2021年1月5日、同)

 屋久島町議会の岩山鶴美町議(66)が廃棄物の不法焼却で有罪になるまで1年半もの月日がかかったが、20222月、屋久島ポストがこの問題について初めて記事を配信したのは、複数の屋久島町民から出された疑問の声がきっかけだった。


物置小屋の廃材を私有地で燃やして罰金40万円

 自宅の物置小屋を解体した際に出た廃材を焼却した町民は、裁判所から罰金40万円の略式命令を受けた。自分の土地に深い穴を掘り、すべて燃え切る柱や梁のなどの木材だけを燃やしたのに、「まさか罰金命令が出るとは思わなかった」と首をかしげていた。

捨てた生活雑貨などを片付けたのに罰金50万円

 海岸近くの草むらに生活雑貨や家電などを投棄した別の町民も略式命令を受けたが、罰金額の50万円が預金通帳にないため、消費者金融で借金をして支払った。捨てた物を燃やしたわけではなく、取り調べを受けた警察と一緒に片付けたので、「50万円も罰金を科せられるとは思ってもいなかった」と言っていた。

複数の町民「違法だと知らなかった」

 その他にも、海岸の漂着ごみを片付けて燃やしたことで、罰金70万円を科されたケースもあったが、いずれの町民も自分たちの行為が違法になるとは知らなかったという。そして、ある町民は「なぜ、町議会議員は注意だけなのか。それが事実なら、不公平な捜査だ」と、警察や検察を批判した。

岩山町議、警察や検察に「悪意」がなかったと説明か?

 そこで、岩山町議に取材でそういった町民の声を伝え、「岩山町議が『注意』で終わったことに不満をもつ町民もいるが、どう思うか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「そこに悪意があったということだと思う」

 つまり、岩山町議の場合は、賃貸アパートのリフォーム廃材を投棄や焼却することが違法行為になるとは知らず、自分には「悪意」がなかったということだ。おそらく、警察や検察の取り調べでも、「悪意」がなかったことを伝えるために、違法行為になるとは知らなかったという趣旨の供述をしたのだろうと、その取材時には思った。

投棄1年前に議会で「不法投棄は犯罪で決して許されない」

 ところが、さらに取材を続けると、驚きの事実がわかった。不法投棄をする1年前の20199月にあった町議会一般質問で、岩山町議がごみのポイ捨てにも罰金を科す条例の制定を荒木耕治町長に提案していたのだ。そして、その議事録を取り寄せて読むと、岩山町議に「悪意」がなかったとは、到底思えない発言が数多く並んでいた。

「そもそも、不法投棄というのは犯罪に当たるんですね。法律で禁止されていて、決して許されない行為のはずなんです」

「最近、数件、すごいたちの悪い不法投棄があって、どこの集落とは言いませんけれども、罰金を科せられて検挙したということでした。ああ、やっぱり多いんだなというか、それだけのことをする人いるんだなって、すごい残念でした」

 そして、子どもたちも含めて、ペットボトルや空き缶、タバコの吸い殻などを捨てる屋久島町民のマナーの悪さを強く批判したうえで、「世界に通じるきれいな屋久島を、大人も子どもめざしていきましょう」と訴え、荒木町長に罰金付き条例の制定を提案していた。

違法行為を明確に認識して不法な投棄と焼却

 つまり、岩山町議は、廃棄物を投棄焼却することが廃棄物処理法違反になるということを明確に認識したうえで、自分が経営する賃貸アパートから出た廃材を焼却処分したということである。岩山町議に「悪意」があったことは明らかであり、罰金付き条例を提案した議会議事録の内容について、もし警察官や検察官が知っていれば、単なる「注意」で終わるはずはなかったであろう。

岩山町議「警察も許可と認めてくれた」

 岩山町議は当時の取材に、町から「許可」を取っていて、「警察も『それが(許可だと)確認できた』と言って、許可と認めてくれた」とも説明した。それに対し、どのような許可なのか尋ねると、「畑に木材を運ぶことに許可を受けた。木片をお風呂の焚き物にしたいという人がいるので、木の部分を仮置きしていいという許可だ」と答えた。

石田尾町議ら、「許可」を根拠に調査求める陳情を門前払い

 さらに、20218月の町議会で、この不法投棄焼却問題の調査を求める陳情書が出された際も、岩山町議は「許可」を取っていたと、一部の同僚議員に伝えていた。そして、現議長の石田尾茂樹町議と元議長の日高好作町議は、その「許可」を根拠に調査する必要はないと主張して、町民からの陳情書を門前払いで却下した。

町担当課長、岩山町議に「許可を出した事実はない」

 ところが、屋久島町が「許可」を出した事実はなく、岩山町議の説明はまったくの虚偽だった。屋久島ポストが当時の町生活環境課長に確認すると、「町として許可を出した事実はない」と明確に否定したのだ。

 当然のことだが、廃棄物処理法で禁止された不法な投棄や焼却に対して、県や町が「許可」を出せるはずはない。岩山町議が言う「許可」は、そもそもが絶対にあり得ない虚偽の説明であり、その嘘を警察や検察、町議会で言って回っていたのである。

「悪意」ある廃棄物の不法焼却で有罪に

 2021年にあった当初の捜査で、岩山町議がどのような供述をしたのかは知る由もないが、少なくとも「許可」については虚偽だったということだ。さらには、不法投棄をする1年前にあった町議会一般質問の内容を踏まえると、岩山町議に「悪意」があったことは明らかである。

 今回、岩山町議が一転して罰金50万円の略式命令を受けたのは、不法な投棄と焼却の現場を確認した町民が地検に刑事告発したからだ。そして、その告発状を読んだ検察官は、岩山町議に「悪意」があったと認めて、略式起訴の判断をしたのだと思われる。

 あす828日の全員協議会で、岩山町議は、自身が有罪となった事件について初めて説明する予定だが、廃棄物の投棄焼却をめぐる「悪意」や「許可」について、果たしてどのような釈明をするのだろうか。

投棄焼却現場
【左】岩山鶴美町議が投棄した廃棄物(2020年9月14日、町民提供)
【右】廃棄物が焼却された現場(2021年1月5日、同)

■岩山町議の不法投棄 関連記事一覧


 

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  1. 自分に甘く他人に厳しく

     こういう人は町民の代表になるべきではありません。自分の事を棚にあげて町民には厳しく取り締まるべきだ。なんて、誰がこんな議員を信頼できますか?

  2. たしか

    町長のシルバー割引の差額着服の時に、告発者に名乗り出ていただきたいって言ってたと思うのですが、この事件に関して町が許可したって言ってたみたいですが、その許可を出したってひとの名前を出していただきたいね。いや出すべきだよね。そして誰が嘘をついているかきちんとしないとね。

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました