町の「金庫番」会計管理者(会計課長)も不正精算 屋久島町出張旅費不正問題

yakushima-post

町監査委員も不正を認定、元会計課長の桑原氏は差額を返還

荒木町長、虚偽の領収書が発行された経緯を確認へ

桑原氏は取材に応じず
領収書

屋久島町会計課の桑原幸夫課長(当時)が出張旅費の精算書に添付した領収書。5万4800円と記載された航空運賃は、実際は3万9000円だった

 鹿児島県屋久島町の荒木耕治町長らによる出張旅費不正問題をめぐり、町の会計管理者だった桑原幸夫・会計課長=当時、20193月末に定年退職=が虚偽の領収書を旅費精算書に添付するなどして、実際より高額な航空運賃を請求していたことが屋久島ポストの取材でわかった。会計管理者は荒木町長から任命された町の「金庫番」で、独立した立場で町の会計処理に責任を持つ役職。これで町長や副町長らに続き、町の会計を預かる責任者までが旅費不正に関与したことになった。荒木町長は取材に「常識的にはあり得ない」とする一方、桑原氏は取材に応じていない。


会計管理者は独立して会計を管理

 会計管理者は市町村などの地方公共団体の会計事務を行う補助機関で、地方自治法によって設置が定められている。2007年の同法改正で町では「収入役」が廃止され、それに代わる役職として置かれた。町長ら町執行部からは独立性を保ち、事業の実施と会計処理を分けることで、より厳格なチェック機能を果たすことが求められている。

 町が開示した出張記録によると、その会計管理者だった桑原氏は20161119日~21日、町出身者でつくる「近畿屋久島会」の定期総会に出席するため、大阪市へ出張した。その後、出張から帰った桑原氏は、屋久島から鹿児島空港を経由して、単純に大阪を往復したとする旅費精算書を作成。鹿児島空港と大阪・伊丹空港間の航空運賃として、片道で「27400円」、往復で計「54800円」と記載したうえで、「航空券代として」「¥54,800」と書かれた領収書を添付して、宿泊代なども含めた総額101900円の旅費を町に請求した。

大阪往復のはずが、なぜか帰りに長崎へ

 ところが、桑原氏が旅費精算書に記載した行程と航空運賃は、実際とは違っていた。

 屋久島ポストが入手した関係文書によると、桑原氏は1121日に伊丹空港から搭乗する際に、鹿児島空港行きではなく、長崎空港行きの便に搭乗。目的は不明だが、長崎で何らかの用事を済ませた後、屋久島に帰ったとみられる。

 航空運賃については、往路の鹿児島空港~伊丹空港の片道運賃は27400円とされていたが、実際は9900円安い17500円だった。また、復路でも同じ行程で27400円の片道運賃が記載されていたが、実際の行程は伊丹空港~長崎空港で、運賃も5900円安い21500円だった。

赤字)会計課職員1
町会計課の桑原幸夫課長(当時)が提出した旅費精算書。実際の支払いより高額の航空運賃が記載されているほか、11月21日の行程も「伊丹空港~鹿児島空港」ではなく、実際は「伊丹空港~長崎空港」だった

実際より高額な航空券代の領収書を添付

 但し書き「航空券代として」、金額「¥54,800」と記載された領収書も、実際の支払い内容とは違っていた。桑原氏が支払った航空運賃は、鹿児島空港~伊丹空港~長崎空港の39000円で、領収書の額面より15800円安かった。さらに航空券とは別に、宿泊代として9300円を旅行会社に支払っており、その金額も領収書に含まれていたとみられる。

 桑原氏が公務で長崎に立ち寄る理由はなく、公務出張で認められる航空運賃は往路の17500円のみで、37300円を余分に受け取った疑いがある。また、旅費精算書には長崎経由の行程が記載されていないことから、虚偽有印公文書作成・同行使の可能性もある。

領収書)会計課職員
旅費精算書に添付された領収書。実際より高額の航空券代が記載されていたほか、宿泊代も含まれていた疑いがある

監査委員は虚偽領収書の発行経緯を調査せず

 桑原氏のケースは20213月の町議会一般質問で、「元会計課職員」の不正として、初めて指摘された。当初、町は職員名を黒塗りにして、会計課に所属する職員の出張記録として公文書を開示。その後、町が退職した元職員の出張だと町議会に認めたため、退職者を含めたすべての出張について、監査を求める声が上がった。

 それを受けて、町監査委員は2014年度~2019年度にあった441件の出張を対象に監査を始め、そのうちの150件に対し、航空券を販売した旅行会社に航空運賃の照会をかけた。その結果、精算書の金額と差額があった38件について、出張者本人から事情を聴き、2022331日に監査報告書を荒木町長に提出していた。

 その報告書によると、桑原氏の出張については、出張者を匿名にしたうえで、「本人聞き取りでは私用により長崎経由で帰鹿したとのことだが、その行程で指示を受けた確認が出来ず、よって鹿児島⇔伊丹として取り扱う」と説明。精算書に記載した航空運賃の54800円に対し、実際の金額は39000円だったとした。

 町総務課の木原幸治・統括係長は取材に対し、長崎へ立ち寄った出張者が元会計課長であることを認めたうえで、桑原氏が監査報告書に従って、すでに差額を返還したとしている。

 一方、実際より高額な金額が記載された領収書が添付された経緯については、報告書では何も明らかにされなかった。

長崎経由
旅費精算書に記載された出張の行程。11月21日に「伊丹空港~鹿児島空港」と記載されているが、実際は長崎空港に行っていた

旅行会社「詳しい経緯はわからない」

 領収書を発行した旅行会社の幹部は取材に、「詐欺ほう助で告発された元社員が不正に関わった可能性はあるが、すでに退職しているため、詳しい経緯はわからない」としている。

 一連の旅費不正をめぐっては、虚偽の領収書を発行した旅行会社が20205月、当時の責任者だった元社員を詐欺ほう助の疑いで刑事告発。その結果、元社員は同年10月、領収書を受け取った当時の町幹部らとともに起訴猶予の不起訴処分となり、鹿児島地検で容疑の事実が認められている。さらに今回、桑原氏が添付した領収書も同じ旅行会社から発行されている。

桑原氏は取材に応じず

 屋久島ポストは桑原氏に事情を聴くため、複数回にわたって留守番電話に面会を求めるメッセージを残したが、返信はなかった。428日朝には桑原氏の自宅を訪ねたところ、応対に出た家族は「早朝から外出して、帰りも何時になるか分からない」と話した。そのため、訪問した取材者2人の名刺を家族に渡し、「記事を出す前に話を伺いたいので、帰宅してから電話をいただきたいとお伝えください」と依頼した。だが、430日正午現在、桑原氏からの連絡はない。

荒木町長、虚偽領収書の発行経緯「私自身が知りたい」

 荒木町長は屋久島ポストの取材(*1)に、虚偽の領収書を添付した元職員が桑原氏だと認めたうえで、「どうして、(旅行会社が)こういう領収書を出したのか、私自身が知りたい。常識的に考えたら、あり得ないことだ」と疑問視。自身が任命した会計管理者の不正精算については、「やってはいけないこと。重く受け止めている」と述べた。

 また、すでに桑原氏から聴き取りを終えている町監査委員に対し、虚偽の領収書が発行された経緯などを確認したいとした。

*1) 取材は2022428

 

【屋久島町幹部の旅費不正】

●荒木耕治町長

東京などに公務出張する際、町が購入した普通運賃の航空券を払い戻し、格安のシルバー割引で買い直して、その差額を着服した。約37カ月間で払い戻したのは80回以上で、被害額は計約200万円。町民から刑事告発され、20209月に鹿児島地検で起訴猶予の不起訴処分となった。

 

●岩川浩一副町長(当時、20204月に任期満了で退職)

公務出張の旅費に私的な旅行の交通費を混ぜ込む形で、実際の航空運賃や経路とは違う架空領収書を旅行会社から受け取り、実費より約5 万円多く旅費を請求。また、ホテルと航空券がセットになったパック料金を航空運賃として精算し、それとは別に宿泊費を二重請求した。町民から刑事告発され、202010月に鹿児島地検で起訴猶予の不起訴処分となった。
領収書
岩川浩一副町長(当時)が旅費精算書に添付した航空運賃の領収書。金額「¥72,220」と但し書き「鹿児島~名古屋航空券代」が実際とは違う内容だった

 

●岩川俊広議長(当時、現在は町議)

割引航空券を空港で購入したにもかかわらず、普通運賃が記載された架空領収書を旅行会社から受け取り、実際より約5 万円多く旅費を請求。また、自分で購入した航空券を払い戻し、シルバー割引で買い直して、その差額を着服した。町民から刑事告発され、202010月に鹿児島地検で起訴猶予の不起訴処分となった。

領収書1

旅行会社が岩川俊広議長(当時)
に発行した航空運賃の領収書。購入していないのに、領収書だけを発行していた

 

●岩川修司副議長(当時、20202月に議員辞職)

割引航空券を購入したにもかかわらず、2 回にわたって普通運賃が記載された虚偽の領収書を旅行会社から受け取り、実際より約11万円多く旅費を受け取った。町民から刑事告発され、202010月に鹿児島地検で起訴猶予の不起訴処分となった。報道取材に、実際より高額な領収書の発行を旅行会社に依頼したことを認め、「大変悪いことをした」と謝罪した。

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  1. 小脇清保

    昔の行政機構で言えば、町長、助役、収入役と言って、町の三役でした。
    現在はそのような重みは無いとしても、町の金庫番である。
    町長、前副町長と併せ、このような不正行為がまかり通るなど、珍しいとしか思えないほど情けない組織である。
    聞くところでは、最近、返金したという。
    この問題が議会で指摘されてから、やがて2年が経過しようとしている。
    遅きに失した感は否めない。
    他にもあれば更なる追及は必要です。

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