町を揺るがせた出張旅費不正の監査、請求から6カ月 手付かず いつ終わる?

yakushima-post

「定期監査もあり、手付かずに」

ファイルの旅費精算書に付箋を貼っただけ

朝倉・代表監査委員「住民監査請求もなく、年に40日ほどの仕事だと言われて引き受けた

住民監査請求
2021年3月10日、出張旅費不正問題について住民監査請求を受けた
朝倉富美雄・代表監査委員(中央)。右は議会選出の寺田猛・監査委員(当時)

 鹿児島県屋久島町の荒木耕治町長らによる出張旅費の不正受給問題をめぐり、町役場と町議会の出張に不正はなかったかを監査する作業が、荒木町長からの監査請求を受けた2021年4月以降、約半年にわたって手付かずだったことがわかった。監査委員は対象期間に航空機を利用して出張した職員らをリストアップし、最近になって監査の準備を始めた。

 この問題は町の幹部らが刑事告発され、起訴猶予処分になる事件にまで発展した。嫌疑不十分の不起訴ではない。嫌疑を十分に立証できると判断したうえで、本人の反省などを考慮しての猶予だ。問題の発覚から2年以上が経った今も詳細は不明のまま。町民の税金が適切に使われているかをチェックする「住民の目の最後のとりで」(*1)とも言われる監査制度(*2)は機能しているのか。真価が問われている。

町の財務や事業をチェックする監査委員

 監査委員は、地方公共団体の財務や事業について監査をする機関で、地方自治法によって設置が定められている。首長や議会などから独立して存在し、屋久島町では2人の監査委員が任命されている。その監査委員に対し、荒木町長が20214月、退職者を含む一般職員と特別職、そして町議の20142019年度における航空機を利用した出張について、地方自治法に基づく監査を請求した。

 屋久島町など人口25万人未満の市町村では、「議員」1人と、「識見を有する者」1人の計2人が監査委員になる。町議会選出の相良健一郎委員は今年10月から監査委員になり、代表監査委員の朝倉富美雄氏は2011年から務めている。
代表監査委員
2021年3月10日の屋久島町議会で、出張旅費不正問題の監査について答弁する朝倉富美雄・代表監査委員(中央)

6カ月間で「付箋を貼ったぐらい」

 監査についての事情を知る関係者によると、10月まで旅費不正の監査は手付かずだったという。

 なぜ、半年もの間、何もできなかったのか──。

 代表監査委員の朝倉氏は「定期監査もあり、手付かずになってしまった」と説明。さらに「住民監査請求などもなく、年に40日ほどの仕事だと言われて引き受けた。報酬も定額(月5万7100円)で決まっているので、自分の仕事を優先しなくてはならない」などと釈明した。

 関係者によると、10月までにした作業は、出張記録をまとめたファイルの旅費精算書に付箋(ふせん)を貼ったぐらいだったという。

 監査委員になったばかりの相良氏が前任者の寺田猛町議(当時)から引き継いだのは、出張の旅費精算書をまとめたファイルで、それだけだったという。「怪しい」と思われる箇所に複数の付箋が貼ってあった。「とにかく早く監査をしなければ」と思ったという。
精算書アップ
不正が疑われる出張旅費の精算書。実際の航空運賃や経路と違っている可能性がある

不正領収書の有無、旅行会社に照会へ

 出張旅費の不正受給があったかどうかを調べるには、航空券の領収書を発行した旅行会社に照会をかけて、実際の航空運賃を調べる必要がある。これまでに発覚した不正で、実際より高額な航空運賃が記載された領収書がいくつも見つかっているからだ。

 しかし、この作業すらやっていなかった。

 実際に監査の準備が始まったのは今年10月からで、まず初めに対象期間に航空機を利用して出張した120人ほどをリストアップした。そして、旅行会社から「個人情報」を得ることに同意を求める文書を121日付で全対象者に郵送し、1213日までに承諾書を返送することを求めているという。

 屋久島ポストが入手したその承諾書にはこう書かれてあった。

〈本監査を進めるに当たって、貴殿が航空券等を購入した業者に対し金額や日付の照会を行う必要があります〉

 総務省によると、首長が申し立てた監査については、「法的に期限の定めがないため、時間がかかっても問題がなく、各自治体の判断になる」という。

 代表監査委員の朝倉氏は今年8月の町議会で、監査終了のめどは今年度末と表明している。だが、町民に対して、その約束を本当に守れるのかどうか、現時点では見通せていない。
20170421副町長)領収証
岩川浩一前副町長が出張旅費の精算書に添付した不正領収書。実費より高額の航空運賃が記載され、但し書きの経路も実際とは違っていた

疑問が残った「165件」の出張

 屋久島町幹部らをめぐる一連の出張旅費不正問題は、荒木町長が公務出張した際、町が購入した普通運賃の航空券を払い戻し、65歳以上が利用できる格安のシルバー割引料金で搭乗して、その差額を着服した問題から始まった。

 その後、岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長()らによる架空領収書を使った不正も発覚し、荒木町長ら町役場と町議会の幹部4人が詐欺などの疑いで刑事告発された。その結果、鹿児島地検は202010月までに全員を起訴猶予処分として、それぞれの容疑事実を認めた。その不正は一般職員にも広がり、一連の被害総額は少なくとも約230万円にのぼった。

 この状況のなかで、住民団体「清く正しい屋久島町を創る会」は、町役場に残された20142019年度の全出張記録を開示請求し、約16000枚の公文書を入手。退職者を含む全職員と全町議が、航空機を利用した出張の全記録を調査したところ、165件の出張について「要調査」と判断し、今年3月に住民監査請求を申し立てた。

 しかし、町監査委員は4月に住民監査請求を却下。一方、一部の町議が第三者による調査を求め続けていたため、荒木町長は監査委員に対して監査を請求していた。

*1) 「監査委員が公費返還求める請求を棄却 町議海外研修費」朝日新聞, 1997128日付朝刊宮城県版.

*2) 総務省「地方公共団体の監査制度に関する研究会報告書」(2021124日取得). 総務省「監査委員制度について」(2021年12月4日取得).

姉妹メディア「ほっとやくしま」

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました