原告、海底清掃の実績がない業者との特命随意契約は「違法」 屋久島町海底清掃事業・住民訴訟
町、JTBパブリッシングは海底清掃業務について「信用や経験等を有している」➡ 原告、海底清掃の実績なくても優先契約が「所与の前提」
【上左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン【上中・上右】「屋久島町ふるさと納税」と屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより)【下】屋久島町役場
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題をめぐる住民訴訟――。
1月14日に開かれた第3回口頭弁論で原告の渡辺千護町議は、被告の町が競争入札をすることなく、海底清掃事業を手掛けた実績がない業者に業務委託をしたのは、特命随意契約の条件を定めた地方自治法施行令に違反する契約だと主張した。これまで町は、請負業者について「迅速かつ円滑な海底清掃業務のための事業者の選定及び確保」ができる「信用や経験等」を有しているとしていた。
町、優先的にJTBパブリッシングに業務委託
この海底清掃事業で町が業務を委託したのは、旅行大手JTBの出版部門を担うグループ会社「JTBパブリッシング」(本社・東京都江東区)。町は同社が提案した企画に従って、複数の業者が参加した一般競争入札をすることなく、優先的に同社と特命随意契約を結んで事業を実施した。
渡辺町議「海底清掃の豊富な実績が特命随意契約の条件」
渡辺町議は鹿児島地裁に提出した準備書面で、この事業が海底清掃を主目的とした環境保全事業であることを踏まえ、「業務委託業者を選定する際には、その業者が海底清掃事業において豊富な実績を持っているのか否かを判断しなくてはならない」と指摘。だが、JTBパブリッシングには海底清掃事業を手掛けた実績がないことから、特命随意契約の条件を規定した地方自治法施行令第167条の2第2号が定める「その性質又は目的が競争入札に適しない」ケースには当たらないとして、同社との業務委託契約は同法施行令に違反していると主張した。
「町は海底清掃を専門とする団体や業者を探さなかった」
さらに渡辺町議は、海底清掃活動を続けているNPO法人「海未来」(本部・大阪)が15年間に63トン、公益財団法人「日本釣振興会」(本部・東京)が毎年10~30トンのごみをそれぞれ回収している実績があることを説明。こういった活動事例があるにもかかわらず、「被告は海底清掃を専門とする団体や業者を探すことなく、全く海底清掃事業の実績がないJTBパブリッシングと独占的に特命随意契約を結んだ」として、この事業の企画提案をした同社と契約することが「所与の前提」だったと主張した。
NPO法人「海未来」のウェブサイトに掲載された活動実績
町、JTBパブリッシングは「JTBの関連会社で信頼性が高い」
前回の口頭弁論で町は、JTBパブリッシングが「親会社であるJTBの関連会社であることから信頼性が高く、JTBが全国的にみて最大手の観光事業会社」であると指摘。さらに、JTBパブリッシングについて「迅速かつ円滑な海底清掃実施のための事業者の選定及び確保、清掃状況の撮影や的確なPR活動といった事業を遂行できる信用や経験等を有している」と主張していた。
この住民訴訟で渡辺町議は、海底清掃事業への支出は、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、町に対して、事業に支出した約1700万円を荒木耕治町長ら町幹部3人に賠償請求するように求めている。