海底清掃問題

原告主張「町はJTBパブリッシングの『言い値』で契約した」 屋久島町海底清掃事業・住民訴訟

yakushima-post

町、法的義務の予定価格を設定せず1700万円で業務委託 → 渡辺町議「町契約規則に違反する契約」

町、議会の予算承認で「予定価格を設定しなかった瑕疵は治癒」

【上左】海底清掃事業を請け負ったJTBパブリッシングが入るJTBグループのロゴとスローガン【上中、上右】「屋久島町ふるさと納税」と屋久島町のロゴ(町ウェブサイトより)【下】JTBパブリッシングが屋久島町に提出した海底清掃事業の見積書の一部


 ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題をめぐる住民訴訟――。

 1月に開かれた第3回口頭弁論で原告の渡辺千護町議は、事業費の上限となる予定価格を設定しないまま、町がJTBパブリッシング(本社・東京都江東区)に業務を委託したのは、屋久島町契約規則に違反する契約だと主張した。前回の口頭弁論で町は、この事業の予算が町議会で承認されたことを根拠に、「予定価格を設定していなかった瑕疵は治癒された」と主張していた。

 予定価格は、国や地方自治体などが公共事業を発注する際に事業費の上限として決める金額で、予算決算及び会計令や地方自治法、各自治体の契約規則などで設定することが定められている。

JTBパブリッシングが屋久島町に提出した海底清掃事業の見積書

渡辺町議「町は見積額を精査することなく契約」
 渡辺町議は鹿児島地裁に提出した準備書面で、町は2022年7月にJTBパブリッシングと業務委託契約を結ぶ際に、法的に義務付けられた予定価格の設定を怠り、見積書で示された見積額を精査することなく、同社の「言い値」である1698万9918円で業務委託契約を結んだと指摘。予定価格は公共事業に支出する公費を適正な金額に抑えるためのもので、町がその設定を怠ったのは、予定価格の設定を義務付けた町契約規則第26条に違反した契約だと主張した。

町、議会に「委託業務内容、予算額の内訳等を細かく説明した」
 前回の口頭弁論で町は、この事業の予算が2022年6月の町議会で承認されていることを根拠に、「委託業務内容、予算額の内訳等を細かく説明し、議会の承認をもらっているのであり、予定価格を設定していなかった瑕疵は治癒されたものと解される」と主張していた。

渡辺町議、総事業費1700万円は「町とJTBパブリッシングの共通認識」
 それに対し、第3回口頭弁論で渡辺町議は、町はJTBパブリッシングが示した見積書を精査したうえで、予定価格を設定する法的な義務を負っていたと指摘。町が予定価格の設定を怠った事実は、同社が示した見積額をそのまま予定額にすることが、「所与の前提となっていたことの証左といえる」との見解を示した。

 さらに渡辺町議は、町議会で予算が承認された段階で、町とJTBパブリッシングの間では「総事業費は約1700万円」という共通認識があり、それを受けて、同社は予算額とほぼ同額の1698万9918円の見積額を示し、「被告(町)は予定価格を設定することなく、そのままの金額で業務委託契約を結んだ」と主張した。

 この住民訴訟で渡辺町議は、海底清掃事業への支出は、ふるさと納税の寄付金の使途を定めた「屋久島町だいすき寄附条例」に違反しているなどとして、町に対して、事業に支出した約1700万円を荒木耕治町長ら町幹部3人に賠償請求するように求めている。

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事
これらの記事も読まれています
記事URLをコピーしました