オーシャナ、今年度は「主任研究員」などに742万円の人件費を提示 屋久島町海底清掃事業
参考見積書「主任研究員、経理担当職員」などの人件費含めて総事業費1570万円 → 町、228万円で町内団体に業務委託
町、2024年度はオーシャナと契約せず

屋久島町役場【写真上】ダイビング業者「オーシャナ」のロゴ(オーシャナ・ウェブサイトより)【同左下】屋久島町ふるさと納税のロゴ(町ウェブサイトより)
ふるさと納税で「屋久島の自然を守って欲しい」と寄付された1700万円を活用して、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業で、総事業費の大半が海底清掃そのものではなく、屋久島の観光情報を紹介するガイド冊子や動画の制作費に支出された問題――。
この事業の3年目となる2024年度の参考見積もりで、前年度の事業を請け負ったダイビング業者「オーシャナ」(本社・東京都中央区)が、「主任研究員」や「経理担当職員」などの人件費として約742万円を提示していたことが、屋久島ポストの取材でわかった。この参考見積もりに対し、町は減額の検討を求めたのち、最終的にオーシャナとは契約せず、町内の団体に総事業費約228万円で業務を委託した。

ダイビング業者「オーシャナ」が屋久島町に提出した2024年度海底清掃事業の参考見積書
「主任研究員」日給7万7000円×60日=462万円
屋久島ポストの情報公開請求で開示された関係文書によると、オーシャナは2023年12月3日付で参考見積書を町に出し、総事業費として1569万6120円を提示。その内訳では、総事業費の約半分となる742万5000円(税込み)が「主任研究員」などの人件費であった一方、海底と海岸の清掃業務に関わる経費は431万1420円だった。
合計で742万5000円となる人件費の内訳は、次のような内容だった。金額はすべて消費税込み。
・主任研究員:日給7万7000円×60日=462万円
・研究員:日給3万3000円×60日=198万円
・経理担当職員:日給5万5000円×15日=82万5000円
・ダイバー日給3万3000円×48人=158万4000円
また、合計で431万1420円となる「海底・海岸清掃費」の内訳は、次のような内容だった。金額はすべて消費税込み。
・ダイバー人件費:3万3000円×48人=158万4000円
・船舶借上賃:11万円×12隻=132万円
・海岸清掃の弁当と飲み物費:2万3100円×2回=4万6200円
・海岸清掃の参加賞など手配費:13万2000円×2回=26万4000円
・産業廃棄物処理費:11万円×10回=110万円

ダイビング業者「オーシャナ」が2024年度の参考見積書を出す際に屋久島町に送信したメール
オーシャナ「人件費は今年度の活動量を踏まえて多く積んだ」
この参考見積書を出すにあたり、オーシャナの担当者はメールで「人件費の箇所は今年度の活動量も踏まえて多く積ませていただいております」と説明。その後、町は「動画制作」や「PR実行委員会立ち上げ」の費用を削減することなどを求めたが、最終的にオーシャナとは業務委託契約を結ばず、海底と海岸の清掃は屋久島スキューバダイビング事業者組合、水域(川・沢)の清掃は屋久島観光協会に、それぞれ業務を委託した。
その結果、2024年度の総事業費は計227万9200円と大幅な減額となり、詳細な内容は次の通りだった。金額はすべて消費税込み。
<海底清掃>
・潜水士人件費:4万5650円×12人=54万7800円
・船舶チャーター費:11万円×4回=44万円
・産業廃棄物回収処理費:2万7500円×4回=11万円
・一般管理費:10万9780円

2024年度の海底清掃事業で、屋久島スキューバダイビング事業者組合が屋久島町に提出した見積書(※金額は税抜き)
<海岸清掃>
・労務費:3万3000円×16人=52万8000円
・船舶チャーター費:11万円×2回=22万円
・産業廃棄物回収処理費:2万7500円×8回=22万円
・一般管理費:9万6800円

2024年度の海岸清掃事業で、屋久島スキューバダイビング事業者組合が屋久島町に提出した見積書(※金額は税抜き)
<水域清掃>
・作業員人件費:1万7600円×8人=14万800円
・廃棄物運搬車両費:1万7600円×1台=1万7600円
・廃棄物処理費:2万7500円×2回=5万5000円
・管理費:2万1340円

2024年度の水域清掃事業で、屋久島観光協会が屋久島町に提出した見積書(※金額は税抜き)
海底清掃事業の人件費については、2023年度に町が「主任研究員」に支払った日給7万7000円などに対し、「地方自治体が負担する人件費としては高額すぎる」との声が上がっており、3月7日に開会する町議会3月定例会の一般質問で取り上げられる。