議会取材の自由を守る訴訟

屋久島町、全面的に「屋久島ポスト」と争う姿勢【議会取材の自由を守る訴訟】

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石田尾議長、マスコミ以外は事実を正確に報道する能力に欠ける

荒木町長は「開かれた議会」を望んでいるのに…

 屋久島町議会(石田尾茂樹議長)が市民メディア「屋久島ポスト」の議会取材を拒否しているのは、「表現の自由」などを保障した憲法に違反しているとして、屋久島ポストが町を相手取って提起した「1円訴訟」――。

 8月6日の第1回口頭弁論を前に、被告である町の答弁書が8月2日、屋久島ポストの共同代表2人に届きました。内容としては、原告の請求の棄却を求めるもので、町は全面的に争う姿勢をみせています。

 そこで、答弁書を精読したところ、どれも「一般論」を並べた抽象的な主張ばかりで、屋久島ポストが町議会に与えた不利益、または、与えると予見できる不利益については、何ら具体的に示されていませんでした。

屋久島ポスト、これまで事実を正確に報道
 屋久島ポストの共同代表である武田剛は、全国紙で20年の取材経験があり、屋久島移住後の2015年から約5年間は、新聞社とテレビ局の屋久島駐在として、町議会の審議について報道をしていました。そして、今年4月に屋久島ポストが議会取材を許可されたのち、私たちは6月定例会を取材しましたが、議事を妨げるなどの行為は一切していません。さらには、これまで屋久島ポストが配信した議会関連の記事は、どれも事実を踏まえた正確なもので、議会で審議された内容を歪めて伝えたこともありません。

 つまり、屋久島ポストには、議会審議について正確に報道する能力と資質があり、町議会に不利益を与えたことも、不利益を与える心配もないということです。

マスコミのみ許可は「法の下の平等」に違反
 ところが、町は次のような主張しています。石田尾議長がマスコミだけに議会取材を許可しているのは、日本新聞協会などに加盟するマスコミは「事実を正確かつ公平に報道することが出来る能力、資質を備えている」からだというのです。

 この主張を逆に解釈すると、日本新聞協会などに加盟していない報道機関や出版社、記者、ライターなどは、「事実を正確かつ公平に報道することが出来る能力、資質」がないということになります。

 しかし、そんな乱暴な判断はあり得ません。日本新聞協会などに加盟していなくても、事実を正確かつ公平に報道している記者、ライターは全国に大勢います。そして、この訴訟で最も問題となる屋久島ポストについては、先に示したとおり、事実を正確に報道する能力と資質があることは明らかです。

 それにもかかわらず、石田尾議長は、一律にマスコミ以外は報道する能力と資質に欠けていると断じて、屋久島ポストの議会取材を拒否してきました。私たちは、この判断こそが「法の下の平等」を保障した憲法14条に違反していると主張しています。

町、取材禁止したけど「表現の自由は制限していない」
 また、憲法21条が保障する「表現の自由」について、町は興味深い主張をしてきました。石田尾議長は屋久島ポストの議会取材を禁止してきましたが、「報道という表現活動をすること自体を制限したものでない」として、「表現の自由」は制限していないというのです。

 これを読んで、私たちは目を疑いました。「こんな主張を本気でしているのか」と。

 なぜなら、記事を書いて報道するためには、その前段で、必ず取材をしなくてはならないからです。その「取材の自由」を石田尾議長は制限したのですから、その結果として、「表現の自由」も制限したことになります。

 つまり、報道取材をする記者にとっては、憲法21条が保障する「表現の自由」と「取材の自由」は、別々に論じることはできないということです。

 それにもかかわらず、町は「表現の自由」は制限していないと強弁していますが、実に意地の悪い主張だと言わざるを得ません。これではまるで、野球選手からバットを取り上げたうえで、バターボックスに立たせるようものです。

合理的な理由なき議会取材の禁止
 町の答弁書を読んで確信したのは、実は石田尾議長には、屋久島ポストの議会取材を禁止する合理的な理由はなかったということです。マスコミと同じように、屋久島ポストが事実を正確に報道できる能力があることを、石田尾議長は知っています。そして、それがゆえに今年4月、石田尾議長はこれまでの判断を一転させて、屋久島ポストの議会取材を許可したのです。

議会取材のあり方、荒木町長と石田尾議長は正反対
 余談になりますが、6月に荒木耕治町長と屋久島空港で一緒になった際に、私たちから議会取材のあり方について尋ねてみました。すると荒木町長は、取材の可否は石田尾議長の判断になるとしたうえで、町長自身としては「できる限り、開かれた議会にした方がいいと思っている」と言っていました。それを聞き、私たちは「屋久島ポストとしては、話し合いで解決したかったが、石田尾議長が受け付けないので、やむ無く提訴せざるを得なかった」と伝えました。

 以上を踏まえると、荒木町長はマスコミだけではなく、各種メディアに対して、もっと広く議会取材を認めるべきだと考えているようです。そうであれば、法廷で憲法違反かどうかを争う必要もないのですが、町が提出した答弁書には、荒木町長の考えとは正反対の主張が累々と並んでいます。

実質的に「石田尾議長」vs「屋久島ポスト」
 要するに、この訴訟の被告は屋久島町ではありますが、実質的には石田尾議長と屋久島ポストの争いだということです。

 そして、石田尾議長には強く言いたいです。荒木町長の考えに耳を傾けて、屋久島ポストも含めて広く議会取材を許可していれば、弁護士費用で町民のお金を無駄に使う必要はなかったと。

 そう考えると、本当に愚かな公費の支出です。

※「屋久島ポスト」は訴訟の当事者であるため、この【議会取材の自由を守る訴訟】については、記事の文体を「です、ます調」にしたうえで、主観を入れた体験取材記の体裁にしています。

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