【視点】住民不在で決まった新ごみ処理施設の業務委託費 年1億8876万円/屋久島ポスト
町、委託業者が決定後も運営管理委託費を非公表 → 屋久島ポストの求めで本契約後に公表
町議会にも詳細な金額は伝えられず

新ごみ処理施設の運営管理業務を委託する業者の選定について、屋久島町がウェブサイトに掲載した記事画面。この記事が公開された時点では、運営管理業務委託費に関する情報は示されていなかった
屋久島町の新ごみ処理施設が11月から本格稼働するのを前に、町は9月22日、この施設の運営管理業務の委託費が3年間で計5億6628万円(消費税込み)になることを町のウェブサイトで公表した。
1年あたりでは1億8876万円(同)。この業務委託費がどのような経緯で決まったのか、屋久島ポストは金額公表前の8月に取材を始めたのだが、いきなり大きな壁にぶつかった。町が委託業者といくらで契約する予定なのか、ごみ処理施設を所管する生活環境課の担当者が明らかにしないのだ。
「住民の公費で委託する業務なのに、なぜ具体的な金額が公表できないのか?」
そう何度も迫ってはみたが、担当者の口は重かった。
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町が公開した新ごみ処理施設の完成イメージ=町報やくしま 2023年2月号より
業者選定審査、参加1団体 予定価格98%で決定
この施設の運営管理業務を委託する業者の選定は今年7月、公募で企画提案を求めるプロポーザル方式で実施された。3年間の業務委託費となる予定価格(事業費限度額)は事前公表され、5億7714万2280円(同)に設定。プロポーザル審査会には、日本管財環境サービス(本社・大阪市中央区)とヤクデン商事(本社・屋久島町)で結成された特定JVのみが参加し、予定価格の約98%となる5億7024万円(同)を提示して、町の委託業者に選ばれた。
日本管財環境サービス・ヤクデン商事の特定JVに委託
ところが、この審査会の終了後、町がウェブサイトで公表した結果は、次の内容だけだった。
1 優先交渉権者
日本管財環境サービス・ヤクデン商事特定委託業務共同企業体
2 総合評価結果
総合評価点 109.07点
この内容では、審査会に参加した業者がいくらの入札額を提示したのか、まったくわからない。さらには、「総合評価点 109.07点」の具体的な内容も不明で、明確にわかるのは落札した業者名だけである。
「最終的な金額が変わる可能性がある」
住民が最も知りたいのは業務委託費の金額だ。自分たちの公金から支出されるので当然だが、なぜ町は公表しないのか。
担当者の言い分を聞くと、「まだ本契約を結んでいないので、最終的な金額が変わる可能性がある」という。それでは、その旨を記載したうえで、審査会で提示された入札額を示せばいいだけだ。
そこで、屋久島ポストは迫った。
「正式に契約が結ばれた段階で、業務委託費の金額をウェブサイトで広報してほしい」
だが、担当者は「ウェブサイトで公表できるかどうか、課内で検討はしてみますが……」と歯切れが悪かった。
「最終的な金額が変わる可能性がある」――。
屋久島町政を10年にわたって取材してきた経験から、これは町役場の常套句だといえる。何か大きな事業をする際に、その事業費を公表しない理由として、町幹部がよく言う「口実」である。

2016年当時に公開された新しい屋久島町役場のイラスト(屋久島町提供)
新役場建設の事業費を伏せて町長リコールに
その最たる例は、新しい町役場を建設するために、2016年3月に提案された予算案だった。当初の総事業費だった約20億円が初めて町議会の全員協議会で示される際に、町幹部の要望で、取材していた新聞記者が傍聴席から排除されたのだ。
当時の担当課長は、記者を退席させた理由について、「今後、総事業費が変わる可能性があるので、金額をひとり歩きさせないためだ」と説明した。だが、建設費の予算が町議会で承認されると、高額な総事業費に驚いた住民たちが反対運動を開始。やがて、荒木耕治町長の解職を求めるリコール運動にまで発展し、1年にわたって小さな町は大きく揺れた。
いま思えば、反対運動が起きる可能性を予想して、関連予算を成立させるまでは、総事業費の金額を住民に伏せていたとしか思えない展開だった。
10年変わらぬ情報公開に後ろ向きな体質
あれから10年近くが過ぎたが、情報公開に後ろ向きな町役場の体質は、どうやらいま現在も変わっていないようだ。
町議会の関係者によると、新ごみ処理施設の運営管理業務委託費が年1億9000万円ほど(2025年11月1日~2026年10月31日)になることについて、今年8月の定例会までに具体的な説明はなかったという。おそらくだが、2025年度の当初予算で旧施設の業務委託費(2025年4月1日~10月31日)が承認されているため、新施設の業務委託費については説明しなくても問題ないと、町幹部が判断したのではないか。
一般の住民はおろか、町議会にも業務委託費の予定金額を伝えないまま、委託業者と契約を結んでしまう。なんとも住民不在の町政運営だが、それを問題にもしない町議会は、さらに住民不在の議会運営をしていると言わざるを得ない。

新ごみ処理施設の運営管理業務委託費について、屋久島町が9月22日にウェブサイトに掲載した記事画面
公金支出、新議会はしっかりと監視を
かくして9月19日、町は新ごみ処理施設の業務委託契約を同JVと締結。9月22日には屋久島ポストの求めに応じるかたちで、町は業務委託費が3年間で計5億6628万円(同)になることをウェブサイトで公表した。
だが、順序が逆ではないか。本来であれば、まずは町議会に業務委託費の詳細を示し、そこで出た意見を踏まえて業者を選定したうえで、業務委託契約を結ぶべきだったはずである。
10月1日からは新たな町議会が船出する。この新ごみ処理施設の業務委託費も含めて、新町議14人には、どのように住民の公金が使われているのかを、しっかりと監視してもらいたい。
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屋久島町議選の当選証書附与式が終わったのちに記念撮影する14人の新町議たち=2025年9月22日、屋久島町役場・議会棟、屋久島ポスト撮影
