ホテルパックで宿泊費を二重取り【旅費不正の構図】(3) 屋久島町出張旅費不正問題
航空運賃+ホテル代=「航空運賃」で精算、さらに定額の「宿泊費」も請求
領収書には「チケット代」「航空券代金」と記載
(この連載は随時掲載します)
鹿児島県屋久島町の幹部らによる一連の出張旅費不正問題の実態を解明する連載「旅費不正の構図」。3回目は、航空運賃とホテル代がセットになったホテルパックを利用した手法だ。宿泊費を別に請求することで、ホテル代を二重取りしていた。その事例を紹介する。
岩川浩一副町長(当時)が旅費精算書に添付した領収書。但し書きが「チケット代」となっているが、実際はホテルパック代だった。この領収書を使って宿泊費を二重取りした
構図:ホテルパックなのに「航空運賃」
航空運賃とホテル代がセットになったホテルパックが今回の主役だ。実際にはホテルパックを利用したにもかかわらず、精算するときは、それを航空運賃の名目で処理していた。こうすることで、町の規則で支給される定額の宿泊費を別に請求することが可能になる。
屋久島町の岩川浩一副町長(当時、2020年4月末に退任)と総務課長(同、2017年3月末に定年退職)のケースがこれに当たる。
事例:岩川副町長(当時)の場合
岩川氏らの場合、ポイントは、ホテルパック代を航空運賃として請求し、それとは別途、領収書がなくても定額でもらえる「宿泊費」を受給したことだ。旅行会社が発行した領収書には「ホテルパック代」との記載はなく、「チケット代」や「航空券代金」と但し書きされていた点も見逃せない。
岩川浩一副町長(当時)が旅費精算で作成した明細書。航空運賃が6万6000円となっているが、実際にはホテル代が含まれており、宿泊費が二重取りになった
詳しくみていこう。
岩川氏は2015年11月4日~6日の予定で、東京へ出張した。目的は、全国道路利用者会議などが主催する「安全・安心の道づくりを求める全国大会」に出席するためだった。
町が開示した出張記録によると、岩川氏は11月4日に屋久島空港から鹿児島空港を経由して羽田空港に到着し、東京に宿泊した。11月5日は同大会に出席して、東京に宿泊。11月6日は帰任日で、羽田空港から鹿児島空港を経由して屋久島空港に帰った。
その出張記録をもとに、岩川氏は11月24日に出張旅費を精算し、航空運賃や宿泊費などの総額10万3400円の旅費を確定させた。
岩川浩一副町長(当時)が二重取りとなった宿泊費を町に返還する際に作成した明細書。返還額は2泊分の2万1800円と記載されている
ところが、航空運賃として請求した6万6000円は、実際にはホテルパック代だった。
岩川氏は旅費を精算する際に、「チケット代」と但し書きされた「¥66,000」の領収書を添付し、その全額を航空運賃として精算書に記載した。しかし、この金額のなかには、東京でのホテル代も含まれていた。さらに、岩川氏は領収書なしでもらえる定額の宿泊費(1泊1万900円)も請求し、2泊分の2万1800円を受け取った。
事例:総務課長(当時)の場合
次に、すでに退職した総務課長(当時)の例をみてみよう。
元総務課長は2016年11月15日~17日、全国町村議長大会に出席するため、東京に出張した。屋久島と鹿児島市の間は高速船、鹿児島市と東京の間は航空機でそれぞれ往復し、東京と鹿児島市に1泊ずつした。
出張後、元総務課長は11月29日に出張旅費を精算し、航空運賃や宿泊費などの総額9万1400円の旅費を確定させた。
ところが、航空運賃として請求した4万4300円は、実際にはホテルパック代だった。
総務課長(当時)が旅費精算書に添付した領収書。「航空券代金」と但し書きされているが、実際はホテルパック代だった
元総務課長は旅費を精算する際に、「航空券代金」と但し書きされた「¥44,300」の領収書を添付し、その全額を航空運賃として精算書に記載した。しかし、この金額のなかには、東京での1泊分のホテル代も含まれていた。それにもかかわらず、元総務課長は領収書なしでもらえる定額の宿泊費1万900円も請求した。
対応:岩川副町長(当時)、「着服の意図はなかった」と釈明
この問題が2020年2月に発覚すると、岩川氏は報道取材に「資料などが残っておらず、当時の経緯はわからないが、着服の意図はなかった」と釈明。二重取りになった経緯については、「事務方のミスとみられる」と説明した。
また、「チケット代」と但し書きした領収書を発行した旅行会社は、取材に「金額を誤った可能性がある」と説明した。
そして、岩川氏は同年3月の町議会で、その事実を認めて謝罪。二重取りとなった東京での2泊分の宿泊費2万1800円に加え、ほかの出張で不正に受給した分も併せて、余分に受け取った航空運賃や宿泊費など7万4900円を町に返還したと報告した。
元総務課長は、関係者によると、この宿泊費の二重取りについて3月に報道取材を受けた際に、事実関係の確認はしない、と答えたという。
現状: さらに一般職員も二重取り
一連の旅費不正問題で刑事告発された岩川氏は2020年10月、鹿児島地検で起訴猶予の不起訴処分を受けた。だが、岩川氏は同年4月に任期満了で退任しており、「チケット代」と記載された領収書が発行された経緯などについて、詳細に説明していない。
また、元総務課長は同年9月、二重取りとなっていた宿泊費1万900円を町に返還した。
町監査委員が作成した報告書の一部。一般職員がホテルパックを利用して宿泊費を二重取りした事例が記載されている
一方、町監査委員は2020年9月、退職者を除く一般職員を対象にした監査結果を示し、複数の不正を報告。そのなかに、岩川氏らと同様に宿泊費を二重取りした事例あった。
その監査結果報告書によると、ある一般職員が2014年と2015年に大阪へ2回出張した際、出張後に作成した旅費精算書に航空運賃の領収書が添付されていなかった。そこで、職員が航空券を購入した旅行会社に確認したところ、2回ともホテルパックを利用していたにもかかわらず、旅費精算では航空運賃として記載していたという。
宿泊費の二重取りによる差額は以下の通りだった。
2014年
精算額:9万8600円 屋久島空港~大阪・伊丹空港(往復)+2泊×2
実際額:6万7300円 屋久島空港~大阪・伊丹空港(往復)+2泊
差 額:3万1300円
2015年
精算額:9万8600円 屋久島空港~大阪・伊丹空港(往復) +2泊×2
実際額:5万8300円 屋久島空港~大阪・伊丹空港(往復) +2泊
差 額:4万300円
町役場でホテルパックを利用した宿泊費の二重取りが常態化していた可能性がある。
【メモ】
屋久島町の荒木耕治町長ら町幹部をめぐる出張旅費不正問題は2019年12月の町議会で発覚した。その後、一連の不正は岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長(同)ら町役場と町議会の幹部4人に広がる刑事事件に発展。さらに、一般職員にまで不正が及んでいることが判明し、被害の総額は少なくとも約230万円になった。荒木町長は、一部の町議らが求める第三者委員会の調査は拒む一方、今年4月に町監査委員に対し監査を要請し、今月から本格的な監査が始まった。対象は2014年度~2019年度に航空機を利用して出張した退職者を含むすべての職員と町議で、その数は120人ほどの見込み。監査委員は今年度末の2022年3月の監査終了をめざしている。
岩川浩一副町長(当時)が旅費精算書に添付した領収書。但し書きが「チケット代」となっているが、実際はホテルパック代だった。この領収書を使って宿泊費を二重取りした
岩川浩一副町長(当時)が旅費精算で作成した明細書。航空運賃が6万6000円となっているが、実際にはホテル代が含まれており、宿泊費が二重取りになった
岩川浩一副町長(当時)が二重取りとなった宿泊費を町に返還する際に作成した明細書。返還額は2泊分の2万1800円と記載されている