荒木町長らの減給額、返還総額の0.019% 鹿児島県屋久島町・補助金不正請求事件
町内業者「繰り越し手続き怠った町に全責任」
町、工事の遅れを知って決済も「悪いのは業者」 全返還額を工事業者に請求方針
返還命令の補助金と加算金 計1671万円の補正予算も成立
【動画】荒木耕治町長らの引責減給案について審議があった屋久島町議会(2022年3月23日、議会中継のモニター画面を撮影)
鹿児島県屋久島町が同町の水道整備工事で国に補助金を申請する際に、うその「工事完成日」などを報告したとして、厚生労働省から交付金1500万円の返還命令を受けた補助金不正請求事件をめぐり、荒木耕治町長ら特別職の給与を減額する条例案が3月23日、町議会3月定例会で可決された。しかし、その額は計32万円で、加算金を含めた返還額の総額1671万円のわずか0.019%。町は工事の遅れを知りながら、業者に工事代金を前払いした責任には触れず、全返還額を業者に請求する方針だ。一方、町内の業者からは「予算の繰り越し手続きを怠った町に全責任がある」といった批判の声が出ている。
荒木町長は「道義的な責任」を強調
町議会に町が提出したのは「屋久島町町長等の給与等に関する条例」の修正案で、荒木町長の月給76万1000円を10%、日高豊副町長の月給60万円を5%、それぞれ3カ月にわたって減給する内容。減給額は荒木町長が22万8300円、日高副町長が9万円となり、2人合わせて計31万8300円となる。
また、国へ納付する補助金の返還額を盛り込んだ今年度の補正予算案も、同日の町議会に提出された。予算額は返還命令を受けた1500万円に加え、加算金も含めた計1671万円で、全会一致で可決された。
荒木町長は給与等に関する条例案の提案理由で、「不適切な実績報告および支出事務を制止できず、町政運営に混乱を招いた」として、その道義的な責任を減給の理由に挙げた。だが、うその「工事完成日」を記載した書類が作成されたことを知りながら、それを放置し続けた自らの責任には触れなかった。
この問題をめぐっては、生活環境課の職員による虚偽報告のほか、その事実を知らされた荒木町長ら町幹部が、その後も国に報告することなく、うそを放置し続けたいたことがわかっている。主な虚偽報告と町幹部の対応は次のとおり。
●うその「工事完成日」:2021年3月19日と事業実績報告書に記載したが、実際に完成したのは同年9月5日だった。
●うその「工事完成検査日」:2021年3月26日と事業実績報告書に記載したが、実際に検査したのは同年4月~9月だった。
●町長らの「うそ」放置:荒木町長ら町幹部は2021年4月に虚偽報告の事実を把握したが、その後も国に報告することなく、約7カ月間にわたって「うそ」を放置した。
●工事未完成で補助金を受領:2021年4月12日に虚偽報告の事実を把握していたにもかかわらず、2021年4月19日に国から約1億1800円の補助金を受け取った。
●工事代金の前払い:工事を終えていない業者に対して、2021年5月28日に工事請負代金を前払いした。その後も未完成の状態が続き、実際に工事が終ったのは同年9月5日だった。
●町幹部が前払いを決裁:工事が終わっていないにもかかわらず、荒木町長ら町幹部は、工事請負代金を前払いする「支出命令書」に押印して決裁した。
町は工事業者に責任を転嫁
この日の町議会では、減給案への質疑があり、町議からは「返還額をどうやって補填するのか」との質問が出た。それに対し、鎌田勝嘉・総務課長は「業者に債務不履行があったと判断している」として、全返還額の補填を業者に求める方針を明らかにした。
また、日高副町長は「今回の返還については、業者に責任があると思っている」としたうえで、今後は弁護士に相談して、どのような法的措置が取れるのか検討すると述べた。
日高副町長も鎌田課長も、荒木町長と同様、工事が実際には終了していなかったことを知りながら、工事請負代金を前払いする「支出命令書」などに押印し、うそを放置し続けた。しかし、自らの責任には言及せず、責任を工事業者に転嫁した。
町議からは、工事が終わっていない段階で業者に前払いをしたのは地方自治法違反であり、「(その調査結果が)不明確なままでの処分は時期尚早」や、「前払いをした責任を感じていれば、業者に全額を補填させるという判断はない」「この金額では町民は納得しない」といった意見が出た。
町内の業者からは批判の声
全返還額を業者に請求しようとする町の姿勢に、町内の業者からは批判の声が出ている。
日ごろから公共事業を請け負っている建設業者は、「国の補助金を申請する事務手続きは、そのすべてを町が担当しており、当然、今回の不正請求の全責任は町にある。もちろん、工事が遅れた責任は業者にあるが、工事が終わっていないことが判明した段階で、町が繰り越し手続きをすれば問題は解決するのに、町はそれを怠ったのだから、業者に責任があるはずがない」と、業者に責任転嫁する町の姿勢を批判する。
また、今回の工事の事情に詳しい水道業者は、「問題となった業者は担当の工区以外にも、複数の工区で下請けをしており、そもそも、町の工事管理が杜撰だったのではないか」と、町の管理体制を疑問視する。
町議会の閉会後、報道陣の取材に応じた荒木町長は「(補助金返還で)町民にお騒がせをして、ご心配をおかけしたことで、今すぐに(処分)できるのは私と副町長なので、二人の処分をした」と述べ、すでに立ち上げた検討委員会で協議を続け、再発防止策を講じたいとした。また、業者に前払いをした地方自治法違反の問題については、「今後、(調査を)やらなければいけないと思っている」と述べた。
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責任は町にあります。
完成日の虚偽の報告、未完成工事代金の支払い等自治法違反をしたのは町です。
繰り越し明許の手続きをすれば何事もなく済むことであり、虚偽の報告を隠蔽するために故意に繰り越しをしなかったと言われても仕方ないことである。
検討委員会を立ち上げて、業者へ全額返還の手続きを取るとのことであるが、その主張が認められなかった時は、住民にその付けを回すのでなく、執行部の両責任者で全額の返還は逃れるものではないと思います。
それくらい杜撰な業務処理である。