屋久島町・虚偽報告の記録 補助金不正請求事件
不正発覚から半年、今後の焦点は「法的責任」の所在
鹿児島県屋久島町が同町の水道整備工事で国に補助金を申請する際に、すべての工事が完成したと虚偽の報告をした補助金不正請求事件は、屋久島ポストの取材で不正が発覚してから半年を迎える。
当初、荒木耕治町長は新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に、「不可抗力」「やむを得ない事態」と釈明していた。だが、取材を進めていくと、工事が終わっていないにもかかわらず、町が工事代金を業者に前払いしていたり、荒木町長ら町幹部が7カ月間も虚偽報告の事実を国に伝えずに放置していたり、次々と問題が明らかになった。
そして2022年3月、厚生労働省は町が補助金適正化法に違反したとして、補助金の返還命令を通告。町は加算金を含む約1668万円を国に返還した。
ところが、町は補助金返還の「法的責任」は工事の遅れを招いた業者側にあると主張し、返還金の全額を複数の業者に請求する方針だ。それに対して、業者からは「予算の繰り越しをせずに、強引に補助金の申請をした町に責任がある」「工事の未完成を報告したのに、町の都合で完成検査をした」などと批判の声が出ている。
町と業者の主張が食い違うなか、今後の焦点は、補助金返還の「法的責任」の所在だ。6月に開かれる町議会定例会では、この問題が大きな議題になり、第三者委員会などによる調査について議論が交わされるとみられる。
その6月議会に向けて、屋久島ポストは以下の形で、補助金不正請求事件の記録(2022年4月27日時点)をまとめた。
補助金不正請求事件の記録
2020年(令和2年)
10月20日:「口永良部島地区簡易水道施設整備工事」の全9工区で工事を開始。
12月14日:町が国から補助金4641万円を受領。
2021年(令和3年)
3月8日:1回目の工事完成検査を実施(2、3、7の各工区)。
3月26日:2回目の工事完成検査を実施(1、4、5、6、8、9の各工区)。
3月29日:町が鹿児島県を通じて厚生労働省に水道工事の事業実績報告書を提出。(※2020年度末で工事が未完成にもかかわらず、「すべての工事が完成」と虚偽報告)
屋久島町が国に提出した工事完成を証明する「検査調書」。実際には工事は完成していなかったが、2021年3月19日に工事が完成したなどと虚偽の記載をしていた
4月12日:荒木耕治町長や日高豊副町長ら町幹部が国への虚偽報告の事実を把握。(※国と県に対して虚偽報告の事実を報告せず、その後、7カ月間にわたって放置)
4月19日:町が国から補助金7194万円を受領。(※国への虚偽報告を把握していたにもかかわらず、補助金を受け取る)
5月6日:第5工区の工事請負代金2302万1000円の支出命令書を起票。(※工事完成が未確認の状況で起票)
5月28日:第5工区の工事請負代金2302万1000円を業者に支払い。(※工事が未完成の状況で工事代金を前払い。実際に工事が完成したのは9月初めだった)
うその検査調書を根拠に作成された工事代金の支出命令書。工事完成の確認をしないまま決裁したため、業者に2300万円を前払いする結果となった
5月31日:町の担当職員が工事の完成状況を現地で確認。第5工区の未完成が判明。
8月:第5工区の工事未完成について、町議会で事実関係を確認する質問。町生活環境課の矢野和好課長は回答を保留。
9月:屋久島ポストが関係者の取材を開始。
10月27日:屋久島町の情報公開制度で、屋久島ポストが「口永良部島地区簡易水道施設整備工事」の検査調書や工事請負契約書などの関係文書を入手し、虚偽報告の事実を把握。
10月28日:町議会の決算審査特別委員会で、生活環境課の矢野課長が国への虚偽報告について報告。「口永良部島の簡易水道工事は、工期の年度末までに工事が終わらず、最終的に終了したのは8月のお盆すぎだった」などと説明。
11月5日:午前、生活環境課が各町議に虚偽報告について個別に説明を開始。15時30分、屋久島ポストが生活環境課を取材。
11月9日:屋久島ポストが初報「うその記載で1億1000万円 補助金書類うそ記載問題」を掲載。
11月11日:日高豊副町長と矢野和好・生活環境課長が県に虚偽報告の事実について説明。
11月16日:町議会の決算審査特別委員会の各委員が口永良部島で現地視察。
水道工事の現地視察をする屋久島町議会・決算審査特別委員会の委員ら(2021年11月16日、屋久島町の口永良部島、関係者提供)
11月26日:町議会の全員協議会で、町が国への虚偽報告について説明。
12月3日:虚偽報告を受けて、修正した事業実績報告書を国に提出するため、町が県と事実関係を確定するための作業を開始。
12月7日:町議会本会議で「口永良部島地区簡易水道施設整備工事」の決算が不認定。荒木耕治町長は新型コロナウイルスの感染拡大などを理由に、「不可抗力」「やむを得ない事態」と釈明。
補助金申請うそ記載問題について答弁する荒木耕治町長。左は日高豊副町長(2021年12月9日、屋久島町議会)
2022年(令和4年)
2月22日:再発防止策を講じるため、町が「水道工事管理検討委員会」(委員長:日高豊副町長)の第1回会議を開く。(※委員構成は町幹部5人と工事関係者1人の計6人で、第三者の参加はなし)
3月1日:町が県を通じて修正した事業実績報告書を国へ提出。
3月8日:町議会本会議で、荒木町長が複数の工区で虚偽報告があったことを認め、国による補助金の返還命令に応じる方針を示す。
うその「工事完成日」などを国に報告した問題を受けて、国への補助金返還などについて説明する荒木耕治町長(2022年3月8日、屋久島町議会)
3月16日:厚生労働省が補助金適正化法違反を認定し、町に補助金1500万円の返還命令を通告。
3月23日:町議会本会議で、荒木町長と日高副町長の減給案が可決。町長10%、副町長5%をそれぞれ3カ月間の減給。
国への返還金1671万円の補正予算案が可決。
町は、補助金返還の法的な責任は工事を遅延させた業者にあるとして、全額を業者側に請求する方針を表明。
3月24日:町は加算金を含む1668万円の補助金を国に返還。
4月14日:2021年3月の工事完成検査をめぐり、業者が「事前に工事の未完成を町に報告したが、それでも町は検査を実施した」と証言したことを屋久島ポストが報道。一方、町は国に「完成検査時に工事の未完成を初めて知った」と報告。
4月20日:補助金申請の期限だった2020年度末の段階で、工事を担当した全9業者のうち、8業者の工事が未完成だったことを屋久島ポストが報道。
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