町監査委員、返還した補助金の弁済を認めず 鹿児島県屋久島町・補助金不正請求事件
荒木町長らに調査を一切せずに結論
監査請求の町民「監査委員が機能不全に陥っていることを自ら証明」
左:補助金不正請求について初めて町議会で説明する荒木耕治町長(右)。左は日高豊副町長(2021年11月26日、屋久島町議会)
右:町幹部らに調査することなく住民監査請求を退けた朝倉富美雄代表監査委員
鹿児島県屋久島町が国に返還した補助金の弁済を町幹部らに求めた住民の訴えは、調査されることなく却下に――。同町が水道整備工事で国に虚偽報告をした補助金不正請求事件をめぐり、町の監査委員は7月8日、荒木耕治町長らに聴き取り調査を一切せず、住民監査請求を退ける結果を公表した。監査請求した住民は「監査委員が機能不全に陥っていることを自ら証明する結果だ」と批判。町役場、町議会、そして監査委員も不正調査をしない異常事態が続いている。
荒木町長らに全返還額の弁済を請求
監査請求したのは元町議の小脇清保氏ら2人で、2022年5月9日に請求書を提出。国に返還した補助金約1668万円(加算金含む)について、荒木耕治町長や担当職員ら個人による弁済に加え、再発防止策を検討する第三者委員会の設置を求めていた。

住民監査請求書を町監査委員事務局長(左)に手渡す小脇清保氏ら(2022年5月9日、屋久島町役場議会棟)
請求期限の「1年を経過している」と調査せず
監査委員が公表した決定書によると、住民側が監査対象に挙げた項目の大半について、請求できる法的期限の「1年を経過している」などの理由で調査をせずに却下した。ところが、監査委員が「請求できる期限(1年)」の起算日にしたのは、補助金の不正請求に関わる手続きなどが行われた2020年12月23日~2021年5月6日だった。当時、住民は町が補助金を不正に請求したことは把握できなかったが、それにもかかわらず、監査請求できる起算日として設定した。
工事代金の前払い、会計管理者だけに調査
さらに、工事が終わっていないにもかかわらず、町が工事代金を業者に前払いした違法な支出についても、支出命令書に押印して決裁した荒木町長や日高豊副町長、鎌田勝嘉総務課長(当時)らに聴き取り調査をしなかった。その理由として、工事代金を支出する「権限を法令上本来的に有する者」は会計管理者だという独自の主張をした。また、その会計管理者も「工事未完了を知らなかった」といった理由で、職務上の義務違反はないとして住民の請求を退けた。
返還した補助金の弁済とは別に、再発防止策を検討する第三者委員会を設置する求めについても、住民監査請求の目的にそぐわないとして請求を認めなかった。

屋久島町が国に提出した第5工区の検査調書。この時点で工事全体の約15%しか終わっていなかったが、すべての工事が完成したとする虚偽の内容を記載していた
国、補助金適正化法違反で1668万円の返還命令
問題となった水道工事は、2020年度に同町の口永良部島で実施され、補助金を受け取るには、2021年3月末までにすべての工事を終えることが条件だった。ところが町は、一部の工事が未完成なのにもかかわらず、すべての工事が終わったとする虚偽の報告書を国に提出した。その後、虚偽報告が発覚したため、厚生労働省は補助金適正化法に違反したとして、2022年3月に補助金の返還命令を通告。町は加算金を含む計約1668万円を返還した。
「監査委員は目の前の不正を黙認」と批判
今回の決定書を受け取った小脇氏は取材に、「監査委員は自分たちが見逃した不正が目の前にありながら、それを見て見ぬふりして黙認しており、断じて許すことはできない。監査委員が機能不全に陥っていることを自ら証明した結果だ」と批判している。

 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																	 
																											