【Key Word】虚偽公文書:懲役刑もある違法行為 屋久島町補助金不正・住民訴訟

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虚偽公文書作成の経緯 住民訴訟で初めて説明

民事に加え、問われる刑事責任
KY)請求書と支出命令書
工事が未完成の段階で出された業者の請求書(左)。2021年5月6日付で請求され、約2300万円を支払う支出命令書(右)が即日で起票された

 屋久島町が水道工事で補助金を申請する際に虚偽の「工事完成日」などを報告し、国から補助金1668万円の返還命令を受けたのは町幹部の責任だとして、町に対して荒木耕治町長ら幹部3人に損害賠償を命令するように町民が求めた住民訴訟――。

 町は答弁書のなかで、担当職員たちが虚偽報告書などを作成した経緯を詳細に説明しているが、そこで問題になってくるのは、行政機関の公文書である報告書や支出命令書に虚偽の内容を記載したことだ。工事が終わっていないのを知りながら、すべての工事が完成したことにして「合格」と書いたり、工事代金を前払いする手続きをしたりすることは、公務員としては決して許されない違法行為となる。

有印の虚偽公文書作成は「一年以上十年以下の懲役」

 その虚偽公文書について、刑法では次のように定められている。

    

(公文書偽造等)

第百五十五条 行使の目的で、公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章若しくは署名を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造した者は、一年以上十年以下の懲役に処する。

2 公務所又は公務員が押印し又は署名した文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。

3 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書若しくは図画を変造した者は、三年以下の懲役又は二十万円以下の罰金に処する。

 

(虚偽公文書作成等)

第百五十六条 公務員が、その職務に関し、行使の目的で、虚偽の文書若しくは図画を作成し、又は文書若しくは図画を変造したときは、印章又は署名の有無により区別して、前二条の例による。

    

 この条文を読むと、虚偽公文書の作成には懲役刑の罰則もあり、極めて重い違法行為だということがわかる。

独断で虚偽の完成報告 工事未完成で業者に前払い

 町の答弁書によれば、担当職員は国に事業実績報告をする際に、幹部の決裁を受けることなく、工事が完成したとする虚偽の報告書を「独断」で提出したという。さらに、工事代金を前払いする支出命令書を作成した時も、工事が未完成であることを幹部に説明することなく約2300万円を業者に支払ったというから、いずれの行為も、刑法が指摘する「公文書偽造」や「虚偽公文書作成」に該当するのは明らかである。

町、違法の疑いでも調査と処分なし

 裁判所に出した答弁書に記載しているので、町が事実を書いているのは間違いないだろう。

 そうすると、ここで大きな疑問となるのは、虚偽公文書を作成した職員たちが何も処分を受けていないことだ。刑法を含めた各種法令に抵触する疑いがある行為であれば、しっかりと調査をしたうえで、懲罰委員会で職員の処分を検討しなくてはならない。

 ところが、これまでに担当職員で処分を受けた者は一人もいない。虚偽公文書を作成した経緯が町議会で報告されたことも一切なく、町は補助金返還の責任は「工事が遅れた業者にある」と主張してきた。それにもかかわらず、住民訴訟になった途端に、なぜ町は職員が虚偽公文書を作成した経緯を詳細に説明したのだろうか。

検査調書

屋久島町が国に提出して工事完成を証明する検査調書。実際には全工事の約15%しか工事が終わっていないにもかかわらず、すべての工事が完成したという虚偽の内容を記載していた(※黒塗り部分は屋久島町の判断で非開示)

刑事責任の追及で遠い幕引き

 いずれにしても、複数の職員が虚偽公文書を作成したのは事実であり、今後、さらに詳細な事実が明かされ、住民訴訟で一定の司法判断が下される。だが、それだけで事は済まされない。刑法で重い罰則規定がある虚偽公文書作成に職員が関わっていたのであれば、刑事的な責任も追及する必要がある。

 その意味で、屋久島町の役場と議会にとっては、この問題の幕引きをするまでには、かなりの時間を要することになりそうだ。

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