【取材後記】町を訴訟騒ぎに導く専門家の助言 屋久島町長選2023

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高額贈答を反省した荒木町長、一転して「妥当な贈答」と答弁して 住民訴訟に

社会常識を踏まえた町民目線の専門家に相談を

裁判所と町長①
【左】屋久島町の荒木耕治町長(荒木耕治後援会ウェブサイトより)【右上】町長交際費などの住民訴訟が提起された鹿児島地裁の法廷と建物(裁判所ウェブサイトより)【右下】山海留学の体罰訴訟の審理が行われた大阪地裁

 なぜ、屋久島町では訴訟騒ぎが続くのか?

 連載【訴訟の町】を続けながら、その理由を熟慮してわかったことがある。

 この町には、日ごろの町政運営に対して、適切に助言ができる顧問弁護士的なアドバイザーがいないのだ。法的な面だけでなく、一般の社会常識などにも照らして、町民目線で物事の判断ができる専門家が荒木耕治町長に寄り添っていないのである。

豹変した発言「今後は金額や頻度を改める」「妥当な贈答」

 直近の町長交際費をめぐる住民訴訟は、その典型だろう。国会議員らに贈答をするのに、1件で数万円~10万円も支出していたことについて、荒木町長は2022年8月、屋久島ポストの取材にこう答えていた。

「私の政治は情の部分が多かったかもしれないと反省している。今後は金額や頻度を改めていきたい」

 ところが、その1カ月後にあった町議会一般質問で、荒木町長の発言は豹変する。一連の高額な贈答について、町議から「予算の執行上、妥当な金額と思うか」と問われ、荒木町長は「妥当だと思う」と答えたのだ。

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屋久島町長の交際費問題について答弁する荒木耕治町長(2022年9月13日、屋久島町議会)

町長裁量で贈答1件 100200万円もOK!?

 取材で示した「反省」はどこに行ったのか?と、わが耳を疑うような答弁だったが、これがきっかけとなって住民訴訟が提起された。町長裁量で110万円分の贈答が問題ないというのならば、1100万円や200万円分の贈答でも、荒木町長が「妥当」と認めれば許されるからだ。

裁判官も金額と頻度が「多いという印象」

 そして訴訟が始まると、案の定、裁判官は一連の贈答について、金額や頻度が「多いという印象」との認識を示した。さらに、町が黒塗りして非開示にしている贈答先の国会議員名の開示を指示して、町と議員との関係性や贈答した理由などの説明を求めている。

 ここで重要なのは、裁判官が「違法かどうかは別にして」と前置きしたうえで、これらの説明を求めていることだ。屋久島町のルールでは、町長交際費で贈答する際の金額について「社会通念上妥当と認められる額」と規定されているだけで、具体的な金額が明示されていない。つまり、金額を定めた明確なルールが存在しないため、贈答額が適切なのかどうかは、「社会通念」に照らして判断するしかないのだ。

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【左】鹿児島地裁の法廷【右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)

「社会通念」からかけ離れた贈答額

 自身の贈答について、荒木町長は常日ごろから頼りにしている法務事務専門員に相談したようだが、その答えが「妥当な贈答」だった。それを踏まえ、町は一連の贈答を「町長裁量の範囲を逸脱しておらず、違法ではない」と主張したが、裁判官の認識からもわかるとおり、「社会通念」から大きくかけ離れた贈答であることは明らかである。

法的判断だけに頼った結果 住民訴訟に

 「違法か」それとも「適法か」だけでなく、一般社会で共有される社会常識なども含めた「コンプライアンス」に照らして判断できる専門家であれば、荒木町長にこんなアドバイスをしていただろう。

「町のルールに照らして、一連の贈答が違法とは考えていないが、町民から高額であるとの指摘があることを真摯に受け止めて、今後は金額や頻度を改めたい」

 もし、荒木町長がこんな答弁をしていれば、いま鹿児島地裁で審理が進んでいる住民訴訟は提起されなかったに違いない。

訴訟騒ぎを遠ざける専門家が必要

 地方自治体だけでなく、民間企業でもそうだが、訴訟沙汰になることは可能な限り避けなくてはいけない。ひとたび訴訟になったら、基本的に裁判は公開で行われるため、その市町村や会社の信用に傷がつくおそれがあるからだ。

 その意味で、山海留学の体罰問題も訴訟ではなく、裁判所の民事調停で和解する道を模索するべきだった。児童が里親から体罰を受けたことは、児童側と町側の認識は同じで争いはなく、そうであるならば、まずは謝罪をしたうえで、荒木町長が児童側に歩み寄る必要があった。

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山海留学の体罰訴訟が審理された大阪地方裁判所

 さらに、町診療所でインフルエンザの予防接種を受けて体調不良になった町民との訴訟も、町が一定の責任を認めていたのであれば、これも訴訟は避けるべきだった。弁護士事務所が言うままに裁判で争えば、町民も町も高額な弁護士費用を支払うことになる。それゆえ、町民が受け取った和解の解決金173万円と、町が支払った弁護士費用165万円は、どちらも町の公金で負担する結果となった。

 1029日の町長選で誰が当選しても、11月から町を治める町長には、屋久島町を訴訟騒ぎから遠ざけることができる専門家に相談することを求めたい。

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  1. たぶん

    法務相談員は訴訟したがっているのでは?弁護士を儲けさせるために。勝ち負けは関係なく。

  2. 呆れています

    非公式な?時の本音の発言が一転、議会と言う公式な場所では、法務事務相談員の指導に従って、変わって来るのは、首長とし筋の通った信念を持ち合わして無い証です。
    あんまり学生時代に勉強してませんね。
    こんな有り様では引き続きの町政を任せられません。
    大体、これ程の不祥事を起こしながら立候補する事が厚かましい。

  3. 安房よかにせ

    屋久島町役場の町長や職員を見ていると、「法令遵守」の意識が低いのではないかという気がしてなりません。
    公務員の仕事とは、法令を執行することです。職員ならば当然知っていなければならない屋久島町の条例・規則・規程・要綱等の他に、それぞれの部署には仕事をするに当たっての関係法令が必ずあるはずです。
    副町長か総務課長が音頭を取って、年に数回職員研修をやらないとだめです。
    特に、職員には「地方公務員法」第6節 服務(第30条から第38条まで)を徹底して教え込んでください。それが法務事務専門員の出番を減らすことに繋がると、私は思います。
    以下は、第6節 服務からの抜粋です。
    (服務の根本基準)
    第30条 すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。
    (法令等及び上司の職務上の命令に従う義務)
    第32条 職員は、その職務を遂行するに当つて、法令、条例、地方公共団体の規則及び地方公共団体の機関の定める規程に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。
    (信用失墜行為の禁止)
    第33条 職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない。
    (秘密を守る義務)
    第34条 職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする。
    2 法令による証人、鑑定人等となり、職務上の秘密に属する事項を発表する場合においては、任命権者(退職者については、その退職した職又はこれに相当する職に係る任命権者)の許可を受けなければならない。
    3 前項の許可は、法律に特別の定がある場合を除く外、拒むことができない。

  4. uターン住民

    そうですね!
    職員のやっていることは仕事ではなく作業では?
    よく感じます。

  5. 有権者1

    現在の法務事務専門員が適切なのか?
    違う者に交代起用が必要ではないか。
    話をこじらせてるに見えない。
    それにしても情けない、自治体首長がこの体たらく。
    根本的に住民意識が変わらなけりゃ、屋久島は絶対に変わらない。

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