屋久島町、公務災害の根拠となった勤務記録は「信用性に欠ける」 町営牧場 過重労働死訴訟
町、実労時間に関係なく週40時間で記録 ➡ 同僚職員の記憶に基づく勤務記録で公務災害を認定
遺族、町の指示で「1日6~7時間」に改ざん
【上左】屋久島町営長峰牧場の衛星写真(Google Earth より)【上右】鹿児島地裁(裁判所ウェブサイトより)【下】屋久島町役場
2019年8月に屋久島町営の長峰牧場で町職員だった田代健さん(当時49)が公務中に死亡し、過重労働による公務災害と認定されたことを受けて、田代さんの遺族が屋久島町(荒木耕治町長)を相手取り、慰謝料など約7000万円の損害賠償を求めた民事訴訟――。
この訴訟の口頭弁論で、田代さんの過重労働が認定される際の根拠となった勤務記録について、被告の町が「信用性に欠ける」と主張していることが、訴訟関係者への取材でわかった。町は田代さんの実際の労働時間を把握していなかったため、同僚職員が当時の記憶に基づいて勤務記録を作成。地方公務員災害補償基金はその記録を基に過重労働があったと判断しており、町の主張は同基金が認定した公務災害を否定したことになる。
死因は「長時間の過重労働で発症した心筋梗塞」
田代さんの勤務記録をめぐっては、町が労働時間を週40時間と記録するように指示をして、実際の労働時間が不明だったため、当初は同基金で公務災害の認定が受けられなかった。そこで、田代さんと一緒に働いていた同僚職員が、当時の記憶を頼りに勤務記録を作成。その記録を基に調査した同基金は2023年2月、田代さんの死因は長時間の過重労働が原因で発症した心筋梗塞だったとして、民間の労働災害にあたる公務災害と認定した。
町「勤務時間を伸長する心理が働いていた可能性」
町が鹿児島地裁に提出した準備書面によると、同僚職員が作成した勤務記録について、町は「確たる資料もない中で約2年経過後に作成されたもの」と指摘。さらに、公務災害の認定を受けるために「潜在的に勤務時間を伸長して記載する心理が働いていた可能性も否定できない」として、「信用性に欠ける」と主張した。
また、実際の労働時間とは関係なく、町の指示で労働時間が週40時間とされた勤務記録について、町は「正にその当時において作成されたもの」だとして、「その内容は十分信用できる」と主張した。
同僚職員「月の時間外労働100時間超で年中無休」
それに対し遺族側は準備書面で、同僚職員の証言として「月の時間外労働は100時間超で、週2日どころか、年中無休の状態」だったと反論。さらに、町の担当係長から「労基法に触れるので、作業日報を雇用契約通り(週40時間)に書き直して欲しい」と指示されたことを受けて、労働時間を「1日6~7時間」に改ざんしていたと主張した。
加えて遺族側は、公務災害を認定した同基金が「(町が)当時の長峰牧場の勤務実態を正確に把握していたとは考えがたい」としたうえで、日々の業務に従事していた同僚職員が作成した勤務記録の方が「実態に近いものと考えられる」と認定していると指摘。労働時間を週40時間に改ざんした町の勤務記録について、「十分信用できる」とする町の主張は「失当」だと反論した。
連続勤務50日で半年間の休暇は5日
長峰牧場では約90頭の牛を飼育しており、田代さんが勤務していた当時は、2人の職員で作業をしていた。公務災害を認定した同基金の鹿児島県支部は、田代さんが亡くなる3日前までの連続勤務が約50日間で、半年間で取得した休暇が5日だったことなどから、「通常の日常の職務に比較して特に過重な職務に従事していた」と判断している。
長峰牧場の過重労働死をめぐる訴訟は2023年10月に提訴され、2024年7月までに4回の口頭弁論が開かれた。次回の口頭弁論は10月8日。