屋久島町長交際費問題

【視点】全町民の公費、町役場「身内」の弔慰金に使える時代ではない 屋久島町長交際費問題

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財政難の町、職員らの親族に供花代を支出できる規程は見直しを

8年間で計73万円、今年度は15万5000円

【上】屋久島町葬儀供花規程【下】屋久島町役場

 なぜ、屋久島町役場の職員や町議会議員の親族が亡くなると、町民の公費から供花代などの弔慰金が出るのか?

 町から開示された町長交際費の支出記録を広げて、最初に思い浮かんだのは、そんな疑問だった。職員らの実親だけでなく、義理の親の葬儀にも、必ず1人に1万円以上の供花代や香典が支払われている。その合計は2017~2024年度の8年間で、59人に約73万円。今年度だけを見ると、昨年4月~今年1月までの間で、13人に15万5000円が支出されている。

対外的に使う町長交際費で親族に弔慰金
 そこで、町長交際費の支出基準などを定めた町の要綱を調べると、町長交際費は「町長が、町を代表して行う外部の個人又は団体との交際に要する経費」とある。当然だが、職員や町議の親族は「外部の個人又は団体」ではないので、交際費を支出する対象ではない。

親族への供花代、町葬儀供花規程が支出根拠
 それでは、何を根拠にして、町は職員や町議の親族に弔慰金を支出しているのか?

 町のウェブサイトで、町の条例や規程などが掲載された例規集を検索すると、その答えがわかった。「屋久島町葬儀供花規程」というルールがあり、その第4条に次の規定がある。

「現職の職員及び議員の1親等以内の家族が死去した際は、供花するものとする。ただし、職員及び議員が喪主を務める場合は、2親等以上であっても供花するものとする」

 つまり、町は葬儀供花規程に従って職員や町議の親族に供花代を出しているのだが、その予算を確保していないため、町長交際費から支出しているのである。だが、本来であれば、対外的な交際に使うべき町長交際費を、身内である職員や町議の親族のために使っていいものなのか?

 その点について、町総務課に取材したところ、葬儀供花規程があるので、公費から供花代を支出することは問題ない、というのが最初の見解だった。だが、その予算の出所が対外的に使うべき公費であることを指摘すると、「町長交際費の支出先として問題がないかどうか、今後検討する」となった。

屋久島町葬儀供花規程

職員らの親族も一般町民、なぜ全町民で負担を?
 こうなると、供花代の出所が町長交際費ではなく、葬儀供花規程に基づいて計上された予算であれば、支出しても問題はないとなる。

 しかし、本当にそれでいいのだろうか、と思わずにはいられない。そもそもだが、なにゆえに屋久島町民が自分たちの公費を使ってまで、職員や町議の親族の葬儀に供花しなくてはいけないのか。もちろん、哀悼の意を捧げることに異論はないが、果たして、全町民に供花代を負担させていいのだろうか。

 これが民間の会社や団体であれば、それぞれの自由なので、何も問題はない。だが、屋久島町は公費で運営されている地方自治体である。職員や町議の親族といえども、一般の町民であることに変わりはない。もし、それでも公費で職員らの親族に供花するというのであれば、全町民に対して供花代を支出し、広く平等に扱わなくてはならない。

国と自治体、税金の使い方に厳しい目
 この葬儀供花規程が施行されたのは、旧上屋久町と旧屋久町が合併した2007年10月だ。おそらくだが、旧2町に同様の規程があり、それをそのまま屋久島町の規程にしたのだと思われるが、もうそんな時代ではない。国や各自治体では、税金の使い方に厳しい目が注がれており、行政が「身内」のために公費を使うことは許されない。

子どもに図書も満足に買えない町
 さらに言えば、屋久島町に財政的な余裕はなく、公共の文化ホールや体育館などが老朽化しても、すぐには整備できない状況が続いている。また、喫緊の課題では、故障で長期運休中のフェリー屋久島2の代船運航費を負担するため、町は「貯金」に当たる財政調整基金を切り崩して、1億7340万円もの予算を捻出している。

 先日、町の図書室で尋ねたところ、ここ数年で書籍の価格が上がり、今の予算では満足な冊数の本が買えないというのだが、それは町内にある小中学校の図書室も同じだ。そこで思うのは、今年度に支出した供花代の15万5000円を使えば、もっと多くの本を子どもたちに届けられたということである。

職員は互助会費で親族に供花を
 町役場の「身内」にも公費が支出できる葬祭供花規程。町の将来を見据えて、より平等かつ広く町民に公費が行きわたるように、町には内容の見直しを求めたい。そして、もし職員や町議の親族に供花するのであれば、職員同士でつくる互助会の会費から支出してはどうだろうか。

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