「屋久島ポスト」創刊します!

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市民のためのジャーナリズム活動

不正のない清く正しい屋久島町をめざして

調査報道で町役場が公表しない情報に迫ります

 私たち住民有志は、報道機関による監視の目が届かない屋久島町で、市民の、市民による、市民のためのジャーナリズム活動を始めます。東京のジャーナリストや法律の専門家の協力で、徹底した調査報道によって町政を監視していきます。だれにも平等に開かれ、だれもが安心して暮らせる町にするための活動です。

2回目の町長リコールについて記者会見する「清く正しい屋久島町を創る会」の鹿島幹男代表(2021年5月21日、屋久島町安房)

説明責任果たさず、2回リコール
 屋久島町の荒木耕治町長は、5年間に2回のリコール(解職請求)を受けるという、全国でも極めて稀な首長です。おもな原因は、情報公開に消極的で、なにか不祥事や不正が起きても自らの責任から逃れ、町民に説明責任を果たさないという、その政治姿勢です。

総事業費が24億円だった屋久島町役場の新庁舎

 2016年のリコールは、総事業費が24億円にもなる新庁舎建設の計画について、町民に詳細な説明をしないまま、強引に事業を進めたために起きました。

町議会の一般質問に対する答弁で、シルバー割引の利用を否定する荒木耕治町長。その後、出張旅費不正を認め、結果的に虚偽答弁となった(2019年12月10日、屋久島町小瀬田)

 2021年は、荒木町長が発端となった町幹部による出張旅費の不正着服問題をめぐり、荒木町長が虚偽答弁で不正の事実を隠蔽した末、一転して謝罪して認めたことが原因です。荒木町長の着服額は約200万円にもなり、町民の公金を預かる首長として、その責任は極めて大きいものでした。さらには、町が積極的に調査をしないため、問題の発覚から2年近くが過ぎた今でも、不正の全容は明らかになっていません。

屋久島町山海留学の児童募集のチラシ

説明責任を果す町ですか?
 2回のリコールの間にも、いくつもの不祥事があり、その都度、荒木町長は責任から逃れようとしました。2018年には「屋久島町山海留学」で里親が体罰をしたことを受けて、被害に遭った児童側が裁判所に提訴しました。それに対し、町は「山海留学の実施主体は町ではないので、法的な責任はない」と反論しました。

入山協力金3000万円の横領事件を受けて、記者会見で謝罪する荒木耕治町長=左(2019
年2月25日、屋久島町小瀬田)

 2019年に起きた入山協力金3000万円の横領でも、事件を起こしたのは町の職員ではなく、協力金を集める団体の職員だとして、「町に法的な責任はない」と主張しました。

 しかし、いずれも、町の杜撰な管理体制が原因であることは明らかでした。それゆえ、山海留学の訴訟は町の責任を認める形で和解しました。町の条例に基づく入山協力金制度については、町は「最終的な責任は町にある」と町議会で認めました。

出張旅費の不正を認め、記者会見で謝罪する荒木耕治町長(2019年12月26日、屋久島町宮之浦)

あなたの声が届く町役場と町議会ですか?
 私たちは、このような問題が起きるたびに、荒木町長と屋久島町役場の責任の明確化と情報の公開を求めてきました。しかし、荒木町長は詳細な情報を公表しないばかりか、町に都合がいい主張ばかりをして、責任から逃れようとしました。

 さらに、町を監視する立場にある町議会では、一部の少数派議員を除き、大半の議員は荒木町長や町役場を擁護して、不正を追及する姿勢を一切見せませんでした。

 こんなことが続けば、私たち町民だけでなく、自然豊かな屋久島に魅かれて訪れる人たちまでもが、次々と「被害者」になってしまいます。

住民団体から辞職勧告を受ける荒木耕治町長=中央(2020年1月10日)

報道が町を良くする
 そんななかで、私たちの活動の支えになったのは、鹿児島本土から取材に来たマスコミ各社です。それまで、公になっていなかった「負の情報」が報道で知られると、町役場の態度は少しずつ変わり、やがて不正や不祥事の事実を認めるようになりました。

町長への面会を求めて、町総務課長と話し合う住民団体のメンバー。後方では多く報道陣が取材した(2020年1月20日、屋久島町小瀬田)

 そして、その報道陣と肩を並べて、マスコミ以上に詳細な情報を発信したのは、住民有志でつくる地元メディア「屋久島ポスト」でした。地道な取材で報道された情報は、私たちの活動を後押しする大きな原動力になってくれました。しかし、その報道をよく思わない一部の町民や町議から有形無形の圧力を受け続け、2020年5月、やむなく、その幕を閉じることになりました。

権力乱用を防ぐジャーナリズム
 今年2021年のノーベル平和賞は、2人のジャーナリストが受賞しました。

 1人はフィリピンの女性記者で、麻薬犯罪の捜査で超法規的な殺害などを続けるドゥテルテ大統領と対峙し、独自のネットメディア「RAPPLER」で報道を続けています。

https://www.rappler.com/author/maria-a-ressa

 もう1人は、ロシアの独立系新聞「ノーバヤ・ガゼータ」の編集長で、プーチン大統領による独裁政権に批判的な報道を続けており、これまで6人の記者が殺害されています。

https://novayagazeta.ru

 そして、同賞選考委員会の委員長は、「自由で独立し、事実に基づいたジャーナリズムは、権力の乱用と戦争への扇動から人々を守ることができる」と、2人の活動およびジャーナリズムの役割を高く評価しました。

https://www.nobelprize.org/prizes/peace/2021/summary

 大きく世界は違いますが、これは屋久島町でも全く同じことが言えます。権力側である屋久島町役場は、なにか問題が起きると、不都合な情報を隠して、その責任から逃れようとしてきました。そして、私たち町民や島を訪れる人たちが、その「被害」に遭う恐れがあるということは、この6年間で起きた数々の不正や不祥事からも明らかです。

調査報道で町民のための町づくりを
 以上を踏まえ、私たち住民有志は「屋久島ポスト」の編集の権限と記事を引き継ぎ、新たな調査報道メディアとして創刊させることを決めました。そして、東京のジャーナリストや法律の専門家から指導を受けながら、世界各国のジャーナリストが実践している調査報道の手法を用いて取材をします。さらに、その結果を専門家の指導で記事に仕上げて、これまで公にはならかった情報を届け、町民による町民のための町づくりをめざします。

 つきましては、皆さまのご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2021年11 月9日
地域メディア・屋久島
屋久島ポスト編集委員会
代表・鹿島幹男

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