屋久島町長、自身の賠償責任を認めた判決確定で減給処分 補助金不正請求・住民訴訟/屋久島ポスト
荒木町長、月給10%×3カ月=計22万8300円の減給
法務事務専門員の指南で上告も 裁判官5人一致で棄却

【左】自身に減給処分を科すための条例案を提案する屋久島町の荒木耕治町長=2025年3月21日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより【右上】屋久島町の上告を棄却した最高裁=裁判所ウェブサイトより【右下】屋久島町役場
屋久島町が国の補助金を不正請求した問題をめぐる住民訴訟で、国に返還した約1668万円(補助金の一部と加算金)のうち加算金の約135万円について、荒木耕治町長に賠償責任があることを認める控訴審判決が確定したことを受けて、町議会は3月21日、町長の給料を月10%減で3カ月間、計22万8300円を減額する条例案を可決した。この日の町議会に、荒木町長が自身の管理責任を認めて、自らに減給処分を科す条例を町議会に提案していた。
町、地裁と高裁で一部敗訴
この住民訴訟は、町が2020年度の水道工事で補助金を請求する際に虚偽の「工事完成日」などを報告し、国から補助金の返還命令を受けたのは町幹部の責任だとして、同町の住民が2022年8月に提起。町に対して、荒木町長ら幹部3人に約1668万円を賠償請求するように求めていた。
一審で鹿児島地裁は2023年9月、荒木町長ら幹部3人に約135万円の賠償責任があることを認定。町は控訴したが、福岡高裁宮崎支部は2024年9月に一審判決の一部を取り消し、荒木町長のみに賠償責任があるとする控訴審判決を言い渡した。さらに町は上告したが、最高裁が2025年3月13日に町の上告を棄却したことで、荒木町長の賠償責任を認めた控訴審判決が確定した。

【左】鹿児島地裁=裁判所ウェブサイトより【右】福岡高裁宮崎支部=同
上告理由、補助金の収納権限は会計管理者で町長ではない
この住民訴訟で町は、町法務事務専門員の河野通孝氏と町職員を指定代理人にして住民と争った。
控訴審判決が出たのち、荒木町長は河野専門員の指南を受けて、最高裁への上告を決定した。そして上告理由書では、補助金の収納は町の会計管理者である会計課長に権限があり、収納の権限がない荒木町長には、補助金の収納で発生した加算金約135万円に対する賠償責任はないと主張。控訴審判決は「何ら根拠、理由を示すことなく」町長の責任を認めており、民事訴訟法312条2項6号が上告できる理由として定めた「判決に理由を付せず、又は理由に食い違いがあること」に該当するとした。
最高裁「単なる法令違反を主張するもの」と棄却
この町側の上告に対し、最高裁第一小法廷(岡正晶裁判長)は3月13日、裁判官5人全員一致の結論で上告棄却を決定。町の上告理由について、「理由の不備・食違いをいうが、その実質は単なる法令違反を主張するもの」だとして、民事訴訟法312条2項6号が定めた上告できる理由に該当しないとした。

自身に減給処分を科すための条例案を提案する屋久島町の荒木耕治町長(中央)=2025年3月21日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより
荒木町長、町民への謝罪の言葉は述べず
この日の町議会で荒木町長は、自身に減給処分を科すための条例案を提案する前に行政報告を行い、「町の主張が認められず残念に思うところであります」としたうえで、「(町長自身が)国庫補助金一部返還の際に発生した加算金の金額にあたる135万円余りを賠償金として町に支払うこととします」と明言。だが、町民に対して謝罪の言葉を述べることはなかった。