補助金不正請求事件

賠償責任135万円、町報で町長個人のコメントなし 補助金不正・住民訴訟/屋久島ポスト

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屋久島町、今後は「適切に監督してまいります」→ 総務課、関係する職員らの処分や再発防止策を検討へ

【左】「町報やくしま」(2025年4月号)の表紙題字と記事【右】国への虚偽報告について取材に応じる屋久島町の荒木耕治町長=2021年12月1日、屋久島空港

 屋久島町が水道工事の国庫補助金を不正請求した問題をめぐる住民訴訟で、国に返還した約1668万円(補助金の一部と加算金)のうち加算金の約135万円について、荒木耕治町長に賠償責任があることを認める控訴審判決が確定したことを受けて、町は4月10日、「町報やくしま」(2025年4月号)で裁判結果を町民に報告した。町役場としては「今後、このような事態が生じないよう適切に監督してまいります」とする一方、賠償責任が認められた荒木町長による個人としてのコメントは掲載されなかった。

工事未完成で「完成」と虚偽報告、国に伝えず放置
 問題となった水道工事は2020年度に口永良部島で実施され、町は2021年3月末、工事が未完成の段階で、すべての工事が終わったとする虚偽の報告書を国に提出。荒木町長ら町幹部は同年4月12日に虚偽報告について把握したが、その事実を国に報告することなく放置し、4月19日に補助金を不正に受給した。

 荒木町長の賠償責任を認めた控訴審判決は、虚偽報告の事実を把握した段階で国に報告していれば、町は国から補助金を受給していなかったと指摘。それにもかかわらず、町が補助金を受け取ったことによって、不正に補助金を受給していた期間に発生した加算金については、町に対して荒木町長に賠償請求をするように命じた。

住民訴訟の結果を報告する「町報やくしま」(2025年4月号)の記事

判決に不服も最高裁の上告棄却で確定
 4月10日に発行された「町報やくしま」で町は、「口永良部島簡易水道事業補助金返還に係る裁判結果控訴審判決について」と題して、住民訴訟の経過を報告。2024年9月25日に福岡高裁宮崎支部が出した控訴審判決を不服として、町は最高裁に上告していたが、2025年3月13日付で上告が棄却されたことを受けて、控訴審判決が確定した経緯を説明した。

 この報告を踏まえ、荒木町長に賠償請求するように命じられた町は、町役場として「長期間、町民の皆さんに混乱とご心配をおかけし申し訳なく思います。今後、このような事態が生じないよう適切に監督してまいります」と謝罪。その一方、賠償責任が認められた荒木町長による個人としてのコメントは掲載されなかった。

町、今後の対応を県町村会の顧問弁護士に相談
 町総務課によると、控訴審判決の確定を受けて町は、今後の対応を検討するため、鹿児島県町村会の顧問弁護士に相談を始めた。判決では荒木町長だけに賠償責任が認められたが、一連の事務手続きに関わった町職員らに対する処分の必要性や、再発防止策などについて、法的な判断を踏まえて検討するという。


■「町報やくしま」(2025年4月号)の記事

口永良部島簡易水道事業補助金返還に係る裁判結果について

 令和2年度に実施した口永良部島簡易水道事業に係る国庫補助金交付決定が一部取消しとなり、補助金の返還と加算金の支出に要した金額の支払いを町長、当時の副町長及び担当課長に求める住民訴訟の控訴審においては、令和6年9月25日に町長のみに加算金部分の請求をせよとの福岡高等裁判所宮崎支部による判決が出されたところでありますが、 同判決には判断に至った十分な理由が付せられておらず、また、判決内容に食い違いや判例違反ないし法令の解釈の誤りがあると判断したため、町は同年10月3日付で、最高裁判所に対し上告及び上告受理申立てを行いました。しかし、去る令和7年3月13日付で上告については理 由がない、上告受理申立てについては申立ての要件を欠くため受理しないとの決定がなされました。

 これにより、上記高裁の判決が確定することとなったため、町は町長に対し、総額16,677,534円の請求額のうち、加算金の一部にあたる 1,352,204円について支払いまでの年3分の利息を含め賠償請求することとなりました。

 長期間、町民の皆さんに混乱とご心配をおかけし申し訳なく思います。今後、このような事態が生じないよう適切に監督してまいります。

令和7年4月

屋久島町長 荒木耕治

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