【視点】最高裁への上告は「町民よりも自分の利益を守るためか?」 屋久島町補助金不正請求・住民訴訟
最高裁、事実認定の見直しはせず ➡
町民の損害135万円の法的責任は荒木町長に確定済み
【動画】補助金不正請求の損害賠償責任などについて答弁する荒木耕治町長(2023年3月8日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)【右上】最高裁判所(裁判所ウェブサイトより)【右下】屋久島町が国に補助金を申請する際に提出した虚偽の検査調書
屋久島町が水道工事の補助金を不正請求し、国から補助金1668万円の返還命令を受けた問題をめぐる住民訴訟で、荒木耕治町長は10月4日、自身に135万円の賠償責任があると認定した控訴審判決を不服として、最高裁判所に上告した。
この控訴審判決は、高等裁判所が屋久島町に対して、個人としての荒木氏に町の損害である135万円を賠償請求するように命じたものだ。本来であれば、屋久島町民の代表である荒木町長は、失われた町民の財産を取り戻すために、個人である自身分身に賠償を求めなくてはならない。
最高裁「住民監査請求をした時期が違法か否か」を判断
町が上告した大きな理由は、住民訴訟の前提要件となる住民監査請求をした時期が、地方自治法に照らして「不適法」であるということだとみられる。町が補助金を受給したのは2021年4月19日で、住民監査請求がなされたのは翌2022年5月9日なので、法的に住民監査請求が認められた1年間を過ぎているという主張だ。
つまり、最高裁が判断するのは、住民監査請求をした時期が違法か否かということであり、荒木氏の違法行為で町に135万円の損害が生じたという事実は変わらず、すでに確定したということである。
これらの事実を踏まえると、今回の上告は、荒木氏が「町民1万1000人の利益を守る町長」というよりも、「自分の利益を守る個人」として決断したとしか思えない。
町長、議会答弁で「裁判所の判断に従って損害賠償請求あるいは懲戒処分」
そこで、過去の町議会の議事録を辿ってみたところ、補助金の請求で国から返還命令を受けた責任について、荒木町長は2023年3月8日の町議会一般質問で、次のような答弁をしていた。
「裁判所の判断がなされた場合には、町としては、その判断に従って損害賠償請求あるいは懲戒処分といった、しかるべく対応をとることは当然と考えております」
この答弁が本心であれば、荒木町長は高裁の判決に従って、個人である自分自身に135万円を賠償請求するべきである。なぜなら、最高裁が上告審で何らかの判断をしたとしても、荒木氏の違法行為が見直されることはないからだ。
【動画】補助金不正請求の損害賠償責任などについて答弁する荒木耕治町長(2023年3月8日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)
■屋久島町議会一般質問・議事録抜粋(2023年3月8日)
真辺真紀町議:生活環境課の担当職員ですよね、上下水道係の。職員らへの懲罰についてどのようにお考えですか。
荒木耕治町長:それに関わった職員の各行為が法的にどのように評価され、どのように意味を持つのか、さらには町に対して損害賠償責任を負担すべき行為なのかどうか、責任を負担すべき行為だとしてその範囲はどこまでなのかといった問題は、5月17日の鹿児島地方裁判所による判決言い渡しによって明らかになることなどの事情から、この場で懲罰処分の方針を示すことは時期尚早かと考えている次第です。
もちろん、それら法的手続きのなかで、それら行為に関わった職員について何らかの責任があるというような裁判所の判断がなされた場合には、町としてはその判断に従って損害賠償請求あるいは懲戒処分といった、しかるべく対応をとることは当然と考えております。
荒木町政を10年以上にわたって見ていますが、この町長は、未だに組織の長とはどういうものなのかが分かっていないと思います。
組織の長とは、自分自身だけではなく部下の不始末があった場合でも、最終的に責任を取らなければならない立場にある人のことを言うのであって、その覚悟がない人が屋久島町役場のトップになってはいけません。
それから、今までも何度となく書いてきましたが、この御仁は、自分自身のお金になると、人が変わるところがありますね。
屋久島ポストも書いているように、町長の他に副町長、担当課長にも連帯責任があるとの一審判決から、二審判決では町長一人に全責任があるとの判決に変わったことに対する個人的な不満が上告を決めた最大の理由ではないかと、私も思います。