うその記載で1億1000万円 補助金書類うそ記載問題
屋久島町 うその日付で国に補助金を申請
工事が終わっていないのに「終わった」
1億1000万円を受給
屋久島町が国に提出した水道工事の検査調書。工事はすべて終わっていなかったが、「契約図書に基づき良好に施工されている。(合格)」と手書きで記載されている
▶この記事のポイント
・町が業者にメール送信 「工事完成していなくても、完成検査が出来る状況に」
・当時の担当参事がうその日付を記載したことを、課長にも知らせたと証言
・実際に工事が終わったのは、うその「工事完成日」から約5カ月後
鹿児島県屋久島町が国に水道工事の補助金を申請する際に、実際には工事が終わっていなかったにもかかわらず、すべて完成したかのように装い、うその日付を記載した文書を作成して、厚生労働省に提出していた。この結果、町は補助金1億1000万円を受け取った。
問題の工事が行われていたのは、鹿児島市から約130キロ南にある屋久島町・口永良部(くちのえらぶ)島。
屋久島町に拠点を置く調査報道メディア「屋久島ポスト」(編集・発行:地域メディア・屋久島)の取材でわかった。私たちの取材に対し、町は事実関係を認めた。
手書きで「良好に施工。(合格)」…。しかし、終わったのは5カ月後
問題の水道施設整備はどんな工事だったのか──。2020年度に行われ、口永良部島に浄水場を整備したり、その浄水場からそれぞれの家庭に水道管を引いたりする工事だ。
町はこの事業に国の補助金(*1)を利用しようとした。補助金が利用できれば、半額が補助される。補助の対象となる事業費は2億2000万円だったので、1億1000万円を国の補助金でまかなうことができる。
屋久島町が国に提出した着工前の工事現場写真
しかし、条件があった。すべての事業を2020年度内、つまり今年、2021年3月末までに終了しなければならなかった。
屋久島ポストが入手した町作成の関連文書では、町は、同年3月19日にすべての工事が完了し、その1週間後の26日に工事完成の確認検査も問題なく終わった、となっている。それが鹿児島県を通じ厚労省に提出された。
屋久島町が国に提出した工事終了後の現場写真。しかし、実際にはすべての工事が終わっていなかった
例えば、町の生活環境課が2021年3月に作成した工事の「検査調書」では、荒木耕治町長に対して、工事業者が「※下記工事について,令和3年(2021年)3月19日完成したので,通知します。」(カッコは屋久島ポスト)と報告している。さらに、同年3月26日の日付で「下記のとおり検査を完了しました。」とあり、担当した生活環境課の参事(当時)が、検査所見の欄に「契約図書に基づき良好に施工されている(合格)」と手書きで記載している。
屋久島町が国に提出した工事の検査調書。工事完成日が「令和3年3月19日」などと記載されているが、実際に工事が終わったのは8月下旬だった
ところが──。
実際には、工事は2021年3月末までに終わらず、一部の工事が遅れていた。工事関係者によると、その日付から、少なくとも5カ月後の8月下旬にすべて工事が終わったという。
いったい、何が起こっていたのか。
「工事完成していなくても」
私たちが“異変”に気づいたのは2021年7月だった。こんな情報を私たちは得た。
〈町は、いつも工期を守れと厳しいのに、えらぶ(口永良部島)の水道工事は、年度末の工期を過ぎても、まだ終わってないぞ〉
私たちは、関係者から、ある文書を入手した。問題の工事を担当した生活環境課の参事(当時)が工事業者に送ったメールだった。
送信日時は「2021年3月15日月曜日9:39」。国や県に「工事完成日」として報告した「2021年3月19日」の4日前だ。
そこに、こんな一文があった。
〈もし、工事完成していなくても、完成検査が出来る状況にして下さい。出来るところで写真を撮ります。〉
担当課の参事(当時)が工事の完成検査を前に各業者に送ったメール。「もし、工事完成していなくても、完成検査が出来る状況にして下さい。出来るところで写真を撮ります。」と書かれていた
関係者によると、このメールを受信した業者の一つで、工期に間に合わなかった会社の社長は9月中旬、検査調書に記載された「2021年3月19日」に工事は終わっておらず、実際に終えたのは「8月のお盆すぎだった」と話したという。
私たちはさらに取材を進めた。すると、時を同じくして、町が動いた。
町議に「工事は8月までかかった」「ミスだった」と説明
2021年10月28日午後1時すぎ。町役場の議会棟で、町議会の決算審査特別委員会が開かれ、問題となった口永良部島の水道工事を盛り込んだ簡易水道特別会計の決算審査が行なわれた。予算の執行が適正か否かを審査する場所だ。
屋久島町役場の議会棟(中央手前)
その場に、生活環境課の矢野和好課長が出席した。矢野課長によると、今回の問題の事業についてこう説明したという。
「口永良部島の簡易水道工事は、工期の年度末までに工事が終わらず、最終的に終了したのは8月のお盆すぎ」
「最終検査は9月初めになった」
「担当課としては、工期が遅れるとわかった時点で、予算の繰り越しをするべきだった」
委員からは「工事の検査が終わっているのに、工事が終了していないのは整合性が取れない」などと疑問の声が上がったという。
採決では、委員長を除く7人の委員のうち6人が決算を認定しなかった。理由は、実際には工事が終わっていないのに「終わった」ということにして、うその日付を記載したことが「適切ではない」からだった。
国の補助事業に議会から「ノー」を突きつけられる異例の事態となった。町議会の12月定例会でも不認定になる可能性がある。不認定の結論になっても決算自体が無効になることはないが、町長は説明を公示することが地方自治法(*2)で定められている。
町はその委員会の8日後の11月5日、この決算審査特別委員会のメンバーではない、ほかの8人の町議に電話をして、「予算の繰り越しをしなかったのはミスだった」などと説明を始めていた。
課長「担当の参事に任せ切りだった」
元参事「課長が知らないはずはない」
そこで、私たちはその日の午後3時半すぎ、町役場を訪ねた。矢野課長に事実関係を確かめるためだ。
生活環境課が入る屋久島町役場の町民窓口棟
矢野課長は、工事が終わっていないにもかかわらず、補助金をもらうための書類に、事実とは違う「工事完成日」を記載していたことを認めたうえで、何度も「(工事を担当した)参事に任せ切りにしていた」といった。
そうであれば、その参事に会って話を聞かないわけにはいかない。
私たちは翌日、問題の工事を担当した元参事に話を聞いた。彼は2021年3月末に定年退職していた。
元参事も、工事が終わってないにもかかわらず、事実とは違う日付を書類に記入したことを認めた。そして、退職前の3月中に、そのことを「課長にも伝えていた」と答えた。
屋久島町が国に提出した配管工事の現場写真
元参事とのやりとりはこうだった──。
屋久島ポスト「矢野課長は4月になって、工事が終わっていないことを知った、と言っています」
元参事「3月中に課長には話をしたと思うんですよ。私は3月で退職だったから。(課長が)知らないはずはないんですよね」
屋久島ポスト「実際には工事が終わっていないことは、矢野課長も知っていましたか?」
元参事「報告はしてますから。だから(書類に)印鑑を押しているんですから」
屋久島ポスト「矢野課長は、あなたに任せっ切りにしていて、実際には工事は終わっていなかったことは知らなかった、といっています」
元参事「もちろん、水道(工事)はぜんぶ私の責任でしていましたけど、上は上だから、(課長に)報告はしています」
そして、私たちは11月8日早朝、荒木町長の自宅を訪ねて、今後の方針を直に聞くことにした。
玄関の格子戸を開けて、「おはようございます」と声をかけると、パジャマ姿の荒木町長が現れた。そして、床にしゃがみ込んだ荒木町長は、この事業の決算が不認定なったことなどを踏まえて、「いま(担当課などと)検討している最中です」と答えた。
*1) 正式名称は「簡易水道施設整備費の(生活基盤近代化事業)国庫補助金(離島振興事業費)」
*2) 地方自治法第233条
(決算)
第233条 会計管理者は、毎会計年度、政令で定めるところにより、決算を調製し、出納の閉鎖後三箇月以内に、証書類その他政令で定める書類と併せて、普通地方公共団体の長に提出しなければならない。
(中略)
3 普通地方公共団体の長は、前項の規定により監査委員の審査に付した決算を監査委員の意見を付けて次の通常予算を議する会議までに議会の認定に付さなければならない。
(中略)
7 普通地方公共団体の長は、第三項の規定による決算の認定に関する議案が否決された場合において、当該議決を踏まえて必要と認める措置を講じたときは、速やかに、当該措置の内容を議会に報告するとともに、これを公表しなければならない。