「陸」での移動を伏せて「空」で精算【旅費不正の構図】(4) 屋久島町出張旅費不正問題
「航空機で出張」、実は新幹線利用 領収書には「航空券代」
領収書発行の経緯、旅行会社で調査せず
(この連載は随時掲載します)
鹿児島県屋久島町の幹部らによる一連の出張旅費不正問題をめぐり、今月から始まった監査に合わせて、その実態を解明する連載「旅費不正の構図」。4回目は、新幹線で出張したにもかかわらず、それより高額な航空運賃で精算した事例を紹介する。
屋久島町の一般職員Aが出張旅費の精算書に添付した領収書。「航空券代として」と但し書きされ、「¥47,700」と記載されているが、実際にはホテル代を含む新幹線パックを利用していた
構図:新幹線を利用したのに「航空運賃」
航空機で出張したかのように見せかけて、実際は新幹線で出張し、その差額を着服していたというのが今回のケースだ。旅費精算書に添付された領収書には「航空券代として」と但し書きされ、金額欄には航空機の正規運賃が記載されていた。さらに、ホテル代も含まれた新幹線パックを利用して、定額でもらえる宿泊費を二重取りした例もあった。
屋久島町の一般職員AとBのケースがこれに当たる。
事例:一般職員Aの場合
一般職員AとBの場合、ポイントは、新幹線を利用したにもかかわらず、なぜ「航空券代として」と但し書きされた領収書が精算書に添付されたのか、ということだ。
屋久島町の一般職員Aが出張旅費の精算で作成した明細書。航空運賃が4万7700円となっているが、実際にはホテル代を含む新幹線パックを利用。さらに、宿泊費を二重取りしていた
詳しくみていこう。
一般職員Aは2019年5月29日~6月1日の予定で、公務で福岡市に出張した。
町が開示した出張記録によると、職員Aは5月29日に屋久島空港から直行便で福岡空港に到着。その後、公務をするために福岡市内で3泊し、6月1日に福岡空港から直行便で屋久島空港へ帰った。
その出張記録をもとに、職員Aは6月5日に出張旅費を精算し、航空運賃や宿泊費などの総額10万1200円の旅費を確定させた。
屋久島町の一般職員Aが不正受給した旅費を町に返還する際に作成した明細書。航空機ではなく新幹線パックを利用したうえ、宿泊費を二重取りしていたため、3万3100円を返還することになった
ところが、屋久島空港と福岡空港を往復したという旅程は、実際とは違っていた。
職員Aは5月29日に屋久島から高速船で鹿児島市へ渡り、その後、鹿児島中央駅から新幹線で博多駅に到着。福岡市内で2泊した後、5月31日に博多駅から新幹線で鹿児島中央駅に戻り、鹿児島市内で宿泊した。そして、6月1日に鹿児島市から高速船で屋久島へ帰った。
総額10万1200円とされた出張旅費も、実費より高額だった。4万7700円とされた航空運賃は、実際にはホテル代が含まれた新幹線パック料金の3万800円と高速船運賃の1万1000円だった。さらに、職員Aは定額でもらえる宿泊費の2泊分にあたる2万1800円も請求して、宿泊費を二重取りしていた。その結果、10万1200円で精算した旅費は、実際には6万8100円となり、職員Aはその差額である3万3100円を着服していた。
屋久島町の一般職員Bが出張旅費の精算書に添付した領収書。「航空券代として」と但し書きされ、「¥47,700」と記載されているが、実際には新幹線で出張していた
事例:一般職員Bの場合
一般職員Bは2019年6月9日~12日の予定で、公務で福岡市に出張した。
町が開示した出張記録によると、職員Bは6月9日に屋久島空港から直行便で福岡空港に到着。その後、公務をするために福岡市内で3泊し、6月12日に福岡空港から直行便で屋久島空港へ帰った。
その出張記録をもとに、職員Bは6月14日に出張旅費を精算し、航空運賃や宿泊費などの総額10万1200円の旅費を確定させた。
屋久島町の一般職員Bが出張旅費の精算で作成した明細書。航空運賃が4万7700円となっているが、実際には新幹線を利用して、その差額を着服していた
ところが、屋久島空港と福岡空港を往復したという旅程は、実際とは違っていた。
職員Bは6月9日に屋久島から高速船で鹿児島市へ渡り、その後、鹿児島中央駅から新幹線で博多駅に到着。福岡市内で2泊した後、6月11日に博多駅から新幹線で鹿児島中央駅に戻り、鹿児島市内で宿泊した。そして、6月12日に鹿児島市から高速船で屋久島へ帰った。
総額10万1200円とされた出張旅費も、実費より高額だった。4万7700円とされた航空運賃は、実際には新幹線運賃の1万8000円と高速船運賃の1万1000円だった。その結果、10万1200円で精算した旅費は、実際には7万7100円となり、職員Bはその差額である2万4100円を着服していた。
屋久島町の一般職員Bが不正受給した旅費を町に返還する際に作成した明細書。航空機ではなく、新幹線を利用していたため、2万4100円を返還することになった
対応:「航空券代」領収書を監査せず
航空機を利用したと見せかけて、実際は新幹線で出張した一般職員AとBの不正は、2020年9月に公表された監査報告書で明らかになった。町監査委員は、2016年度~2019年度に航空機を利用した一般職員の出張記録を調べたが、対象が町役場によって抽出された記録に限られていた。さらに、退職者や特別職、町議会議員が除外されていたため、町議会で「不適正な監査」だと批判された。
また、報告書の「監査委員の意見」では、旅費精算書に添付する証拠書類について、「金額だけではなく実際に利用した航路が確認できるものが必要」と指摘したが、精算書に添付された領収書については言及がなかった。岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長(同)の例からも、旅行会社が架空領収書を発行した疑いもあるにもかかわらず、監査委員は領収書が発行された経緯などを調査することはなかった。
現状:領収書発行の経緯を調べず、減給処分
一般職員AとBを含む監査では、新たに5人、計8件の不正精算が判明した。それを踏まえ、5人は2020年11月に全額を返還したうえで、12月の懲罰委員会で処分が検討された。その結果、町は4人を減給処分、1人を懲戒処分とした。
一方、町監査委員は、領収書を発行した旅行会社に対して、事情聴取などの調査はしておらず、架空の疑いがある領収書が発行された経緯はわかってない。町幹部に不正な領収書を発行した旅行会社の元社員、検察で起訴猶予の処分を受けており、今後の監査では、旅行会社側への聴き取り調査は必要不可欠である。
【メモ】
屋久島町の荒木耕治町長ら町幹部をめぐる出張旅費不正問題は2019年12月の町議会で発覚した。その後、一連の不正は岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長(同)ら町役場と町議会の幹部4人に広がる刑事事件に発展。さらに、一般職員にまで不正が及んでいることが判明し、被害の総額は少なくとも約230万円になった。荒木町長は、一部の町議らが求める第三者委員会の調査は拒む一方、今年4月に町監査委員に対し監査を要請し、今月から本格的な監査が始まった。対象は2014年度~2019年度に航空機を利用して出張した退職者を含むすべての職員と町議で、その数は120人ほどの見込み。監査委員は今年度末の2022年3月の監査終了をめざしている。
屋久島町の一般職員Aが出張旅費の精算書に添付した領収書。「航空券代として」と但し書きされ、「¥47,700」と記載されているが、実際にはホテル代を含む新幹線パックを利用していた
屋久島町の一般職員Aが出張旅費の精算で作成した明細書。航空運賃が4万7700円となっているが、実際にはホテル代を含む新幹線パックを利用。さらに、宿泊費を二重取りしていた
屋久島町の一般職員Aが不正受給した旅費を町に返還する際に作成した明細書。航空機ではなく新幹線パックを利用したうえ、宿泊費を二重取りしていたため、3万3100円を返還することになった
屋久島町の一般職員Bが出張旅費の精算書に添付した領収書。「航空券代として」と但し書きされ、「¥47,700」と記載されているが、実際には新幹線で出張していた
屋久島町の一般職員Bが出張旅費の精算で作成した明細書。航空運賃が4万7700円となっているが、実際には新幹線を利用して、その差額を着服していた
屋久島町の一般職員Bが不正受給した旅費を町に返還する際に作成した明細書。航空機ではなく、新幹線を利用していたため、2万4100円を返還することになった