正規運賃の領収書で作り出した差額【旅費不正の構図】(1) 屋久島町出張旅費不正問題

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旅行会社から「見積額の領収書」

実際より高額な航空運賃を受給

 (この連載は随時掲載します)

 鹿児島県屋久島町の荒木耕治町長に端を発した出張旅費不正問題=文末のメモを参照=は、この12月で発覚から丸2年を迎えたが、詳細な実態が不明なままだ。一連の旅費不正は町と町議会の幹部にも広がる刑事事件に発展しただけではなく、一般職員にまで及んでいた。町監査委員の本格的な監査もやっと動き出した。調査報道メディア「屋久島ポスト」が入手した出張記録などをもとに、町に潜む「旅費不正の構図」の実態を解明していく。
メイン)領収書

岩川浩一副町長(当時)が旅費精算書に添付した航空運賃の領収書。金額「¥72,220」と但し書き「鹿児島~名古屋航空券代」が実際とは違う内容だった

構図:領収書には正規運賃の金額

 実際より高額な航空運賃が記載された領収書を精算書に添付し、その差額を私的な旅行の費用に混ぜ込む方法があった。

 岩川浩一副町長(当時)20204月に退任=のケースがこれに当たる。

事例:岩川副町長(当時)の場合

 岩川氏の場合、ポイントは、実際に利用した航空運賃より高額な正規運賃が記載された領収書で精算することで、「差額」を作り出していた点だ。

 岩川氏は20174月に名古屋市などへ出張する際に、公務で利用した実際の航空運賃は26110円だった。しかし、岩川氏が旅行会社から受け取った領収書には正規運賃の「¥72,220」が記載されていた。この「うその領収書」を使って出張精算することで、岩川氏は46110円の差額をつくり出した。

 詳しくみていこう。

 岩川氏は同年421日~24日の予定で、鹿児島市と名古屋市に出張した。目的は、飲食店の独立や店舗拡大をめざす県内の若手起業家らが出店する「かごっまふるさと屋台村」5周年セレモニーと、屋久島出身者でつくる「中部屋久島会」の総会への出席だった。

 岩川氏の出張記録によると、岩川氏は421日に高速船で屋久島から鹿児島市に渡り、屋台村5周年のセレモニーに出席した後、鹿児島市内のホテルで宿泊した。422日は移動日で、鹿児島空港から空路で中部国際空港へ行き、その日は名古屋市内で宿泊。423日に中部屋久島会の総会に出席した後、空路で鹿児島市内に戻って宿泊し、424日に高速船で屋久島に帰った。

 その出張記録をもとに、岩川氏は426日に出張旅費を精算し、航空運賃や宿泊代などの総額127220円の旅費を確定させた。
精算書1

岩川浩一副町長(当時)が作成した旅費精算の明細書。旅程が実際とは違い、航空運賃や宿泊代など旅費の総額も実費より高額だった

 ところが、実際の旅程と航空運賃は違っていた。

 岩川氏は5周年セレモニーに出席した翌422日、出張記録に記載した中部国際空港ではなく、実際には羽田空港に空路で行き、東京で宿泊していた。そして、423日に新幹線で名古屋市へ向かい、中部屋久島会の総会に出席した。

 旅費精算書に添付された航空運賃の領収書には、「鹿児島~名古屋航空券代」の但し書きで「¥72,220」と記載されていた。だが、岩川氏は、私的な用事で東京に立ち寄ったため、実際には公務で名古屋を空路で往復していなかった。46110円の差額を作り出し、私的な旅行の費用に充てていた。

対応:「事務方のミス」と釈明

 この問題が20202月に発覚すると、岩川氏は報道取材に「事務方のミス」「事務手続き上のミス」などと釈明した。実際の経路や金額と違う領収書については、「見積もり段階で旅行会社から受け取った」としたうえで、航空券の支払いや領収書の受け取りは、「すべて町職員に任せていた」と説明した。

 そして、岩川氏は同年3月の町議会で、その事実を認めて謝罪。東京への移動は「私事旅行」だったとして、ほかの出張で不正に受給した分も併せて、余分に受け取った航空運賃や宿泊代、日当など749000円を町に返還したと報告した。
精算書2
岩川浩一副町長(当時)が町に旅費を返還する際に作成した精算書。旅程を東京経由、航空運賃を2万6110円に修正し、5万3100円を返還する内容だった

現状:鹿児島地検「容疑事実は認められた」

 不正な領収書が発行された経緯を説明していないとして、岩川氏は2020年4月に住民から刑事告発された。そういった動きに対し、岩川氏は7月に県庁記者クラブで記者会見を開き、この問題を報じた新聞記事が事実に反するとして、新聞社や記者らを名誉毀損などで刑事告訴および民事提訴すると発表した。

 ところが、事態は一転する。

 刑事事件の捜査が進み、鹿児島地方検察庁は10月に岩川氏らを起訴猶予の不起訴処分にした。地検は「容疑事実は認められたが、それぞれが全額を町に返還したことや、役職を辞任するなど一定の社会的制裁を受けている」と説明した。

 当初、「事務方のミス」などと釈明していた岩川氏だが、もし単なるミスだったと検察が判断すれば、起訴猶予ではなく、「嫌疑不十分」や「嫌疑なし」といった処分になるはずだ。その一方、起訴猶予で裁判が開かれなかったため、実際とは違う内容が記載された領収書がどのように作成され、また、岩川氏がその不正な領収書をどのようにして受け取ったのかなどの詳細な経緯は、いまだに不明のままだ。

 また、記者会見で発表した告訴と提訴については、会見から約1年半が過ぎた現在まで、岩川氏はなんの動きもみせていない。

 岩川氏は20204月末に副町長を任期満了で退任した。

【メモ】

 屋久島町の荒木耕治町長ら町幹部をめぐる出張旅費不正問題は201912月の町議会で発覚した。その後、一連の不正は岩川浩一副町長(当時)や岩川俊広議長()ら町役場と町議会の幹部4人に広がる刑事事件に発展。さらに、一般職員にまで不正が及んでいることが判明し、被害の総額は少なくとも約230万円になった。荒木町長は、一部の町議らが求める第三者委員会の調査は拒む一方、今年4月に町監査委員に対し監査を要請し、今月から本格的な監査が始まった。対象は2014年度~2019年度に航空機を利用して出張した退職者を含むすべての職員と町議で、その数は120人ほどの見込み。監査委員は今年度末の20223月の監査終了をめざしている。
領収書
岩川浩一副町長(当時)が旅費精算書に添付した航空運賃の領収書。金額「¥72,220」と但し書き「鹿児島~名古屋航空券代」が実際とは違う内容だった

調定伝票1
岩川浩一副町長(当時)が町に旅費を返還する際に作成した「調定伝票」。ほかの不正請求も含め、7万4900円を返還する内容だった

返還書
岩川浩一副町長(当時)が
町に旅費を返還する際に作成した文書。荒木耕治町長あてに7万4900円を返還する内容だった

戻入)精算書
岩川浩一副町長(当時)が町に旅費を返還する際に作成した旅費明細書。概算から精算で航空運賃と旅程が修正され、5万3100円を戻し入れる内容だった


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