【検証】荒木町長の「懐刀」前副町長の虚偽領収書も不問のまま放置 屋久島町長選2023
岩川浩一前副町長、不正を報じた新聞記者らを「名誉毀損で訴える」➡ 在鹿児島の全マスコミに宣言してから3年、沈黙を貫く
岩川浩一副町長(当時)が不正精算に使った航空運賃の虚偽領収書。実際とは違う経路や金額が記載され、私的な旅行の費用が混ぜ込まれていた
今年10月の屋久島町長選で4選をめざす荒木耕治町長は12年にわたり、1万2000人の町民が暮らす世界自然遺産の町を治めている。そして、そのうちの8年間は、岩川浩一前副町長が側近中の側近として、寄り添うように荒木町長を支えてきた。
2016年は新庁舎建設をめぐる荒木町長のリコール(解職請求)。2018年は屋久島町山海留学で体罰を受けた児童からの損害賠償請求訴訟。2019年は世界自然遺産・屋久島の入山協力金3000万円の横領事件。
不祥事や問題が起きるたびに、岩川前副町長は町議会や記者会見で説明に立ち、荒木町長に代わって町の見解や方針などを示してきた。町議や記者から鋭い質問が出され、荒木町長の言葉が詰まると、岩川前副町長はあうんの呼吸で口を開き、巧みな言い回しで追及をかわしてきた。
入山協力金3000万円の横領事件を受けて、記者会見で謝罪する荒木耕治町長=左(2019年2月25日、屋久島町小瀬田)
「法的責任はない」と町の責任回避
その岩川前副町長の説明のなかで、強く記憶に残るのは「町に法的責任はない」という表現だ。町立学校に通う児童が里親宅で体罰に遭っても、町の条例で集めている入山協力金が横領されても、「法的責任」はないと主張して、荒木町長に降りかかる火の粉を払いのけようとした。町法務事務専門員の助言なのだろう。一方的な町独自の法解釈を示して、体罰を受けた児童や、入山協力金を払った観光客に対する責任から逃れようとする様に触れ、こんな無責任な地方自治体に世界自然遺産の島は預けられないと感じた。
虚偽領収書に私的旅行の費用を混ぜ込み
ところが、町幹部らによる虚偽領収書を使った出張旅費不正が2020年初めに明らかになると、岩川前副町長は首長の側近として精彩を欠くようになった。なぜなら、岩川前副町長が自ら虚偽領収書を使って出張旅費の不正精算をしていたからだ。
岩川前副町長が町に提出した航空運賃の領収書には、実際とは違う航空運賃や経路などが記載され、その金額のなかには私的な旅行の費用が混ぜ込まれていた。さらには、宿泊代と航空運賃がセットになったホテルパックを利用していたにもかかわらず、航空運賃だけを支払ったように見せかけた領収書で旅費を受け取り、それとは別途に定額で支給される宿泊代を二重取りしていた。
【左】岩川浩一副町長(当時)の不正精算について報じる南日本新聞の記事(2020年2月20日付)【右】岩川副町長(当時)が旅費精算書に添付した領収書。但し書きが「チケット代」となっているが、実際はホテルパック代だった。この領収書を使って宿泊費を二重取りした
「見積もりの領収書」とあり得ない釈明
虚偽領収書の不正が発覚すると、岩川前副町長は「見積もり段階の領収書」などと、耳を疑うような釈明をした。航空券代を支払ってもいないのに、領収書だけが発行されることはあり得ない。さらに「事務手続き上のミス」とも言って、部下の職員が誤って清算手続きをしたと説明した。そこで、精算の実務を担当したとされる職員に取材で事情を聴こうとしたところ、岩川副町長は思い直したように「最終的な責任は私にある」と取り繕い、職員への取材を制止した。
不正調査しない町長 説明しない副町長
虚偽領収書による不正精算には、岩川前副町長だけでなく、岩川俊広議長(当時)ら町議会の幹部2人も関わっていた。だが、荒木町長は不正調査をすることなく放置し、町議会も百条委員会の設置案を否決して、町と町議会がともに虚偽領収書について不問にしようとした。
そこで、住民団体は岩川前副町長ら3人を刑事告発した。その結果、岩川前副町長は2020年10月に検察で詐欺と虚偽有印公文書作成・同行使の容疑事実が認定されたが、減給などで社会的制裁を受けたとして起訴猶予の不起訴処分となり、刑事裁判になることは免れた。
鹿児島地検が発行した岩川浩一前副町長に対する処分通知書の一部。不起訴の理由として「起訴猶予」と記載されている
8年の長きにわたり、荒木町長の側近を務めてきた岩川前副町長だが、自身が起訴猶予になったあとは、町議会や町民に対して何も説明していない。見積もり段階で受け取ったとする領収書は、誰が、何の目的で、どのように発行したのかは不明のままだが、荒木町長も町議会も不正調査をすることなく、うやむやの状態で幕引きをしようとしている。
県庁で記者会見「刑事告訴と民事提訴する」
なんとも無責任な対応が続く屋久島町だが、岩川前副町長の無責任はそれだけでは終わらなかった。自身が起訴猶予になる3カ月前に鹿児島県庁で記者会見を開き、岩川前副町長らの旅費不正問題を報じた新聞記事2本が名誉毀損に当たるとして、新聞社と記者らを訴えると発表したのだ。それも、刑事告訴をしたうえで、さらに民事提訴もするというので、かなり大がかりな司法闘争を宣言したことになる。
岩川前副町長はテレビカメラや記者たちに向かって、こう主張した。
「私自身、この二つの報道により、地元では犯罪者扱いを受けており、非常に許しがたいものだと思っています」
さらに、報道に対して「怒りの持っていきようがない」として、刑事と民事の両方で訴えることを「自分で決めたというのが、いまの心境です」と述べた。
一転して告訴も提訴もなく沈黙
ところが、その後に岩川前副町長は、刑事告訴も、民事提訴も、両方ともすることはなかった。在鹿児島の全マスコミを集めて開いた記者会見から、今年7月20日で丸3年が過ぎたが、岩川前副町長からは何も説明はなく、ずっと沈黙が貫かれている。
その岩川前副町長が支え続けた荒木町長が今年10月の町長選で4選をめざす。それも、町長の「懐刀」だった岩川前副町長が不正精算に使った虚偽領収書を不問のままにして、さらに4年の任期を務め、計16年の長きにわたって世界自然遺産の島を治めたいという。
屋久島ポストが配信した連載記事「【検証 屋久島町政】出張旅費不正問題」を再録するシリーズの10回目では、2020年7月20日の記者会見で、岩川前副町長が自身の不正精算について報道した新聞記者らを名誉毀損で訴えると発表した経緯を振り返る。
前副町長「名誉毀損で新聞を訴える」と言ったまま何もせず沈黙:【検証 屋久島町政】(25)
2022年7月19日配信
「見積り領収書」は実に見事な新語だし、「職員のミス」は部下に責任を押し付ける、駄目上司の典型です。
あそこまで、「名誉毀損で訴えます」と公言したにも拘わらず3年が経過した今でも訴えが有りません。
自分の賤しい行為を認めて居るのでしょう。
刑法の名誉毀損罪は、以下のように規定されています。
「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法第230条第1項)
ただし、公務員については、以下のような例外規定があります。
「前条第1項の行為が公務員又は公選による公務員の候補者に関する事実に係る場合には、事実の真否を判断し、真実であることの証明があったときは、これを罰しない。」(刑法第230条の2第3項)
つまり、公務員について摘示された事実が真実であることの証明があったときは処罰されないと定められているわけです。
当時、岩川浩一氏は、屋久島町の副町長というバリバリの公務員だったわけですから、この条文があることを知り、新聞社と記者を告訴することをあきらめたのではないでしょうか……?