うそをついた末の記者会見:【検証 屋久島町政】(10) 出張旅費不正問題
荒木町長、完全否定したシルバー割引の利用を認める
着服した金額は「返還を怠っていた」
記者会見でシルバー割引の利用を認めて謝罪する荒木耕治町長(2019年12月26日)
2019年12月26日夕、ついに屋久島町の荒木耕治町長が記者会見を開き、自身の出張旅費着服疑惑について説明する時が来ました。会場となった町内のホテルの宴会場には、鹿児島市内から駆け付けた報道各社の記者やカメラマンが並び、この問題に対する関心の高さがうかがえました。
町議会と報道取材で、あそこまで完全否定したシルバー割引の利用について、荒木町長は認めるのか否か。そして、もし認めれば町議会での虚偽答弁になるので、それをどう釈明するのか。大勢の記者が荒木町長の発言に注目しました。
荒木耕治町長の記者会見には大勢の報道陣が集まった(2019年12月26日)
ところが、いざ記者会見が始まってみると、荒木町長の口から妙な説明が飛び出しました。
「私が東京などの出張の際、航空券をシルバー料金の航空券に買い替えて、その差額の返還を怠っておりました」
シルバー割引の利用は認めたものの、普通運賃との差額については、「返還を怠っていた」というのです。本来なら返すべきところだったが、返し忘れたとでもいうのでしょうか。これでは、差額を返しさえすれば、何も問題はないと言っているようにも映ります。
記者会見でシルバー割引の利用を認めた荒木耕治町長(2019年12月19日)
しかし、です。この時点ではわかりませんでしたが、結果的に荒木町長は80回以上もシルバー割引を利用して、合計で約200万円もの差額を着服していました。空港カウンターで航空券を買い替えるたびに、荒木町長のポケットには数万円の現金が入り、それを自由に使っていたのです。そして、その差額が税金から出ていたとなれば、単に「返還を怠っていた」と説明されても、多くの町民は納得するはずがありません。
記者会見で手元の文書を見ながら説明する荒木耕治町長(2019年12月26日)
会見に同席した弁護士が準備した文書でしょうか。荒木町長は、手元に置いたその文書にずっと目を落としながら、「返還を怠った」「(精算のルールを)理解していなかった」などと釈明を続け、核心部分の説明では、文書に頼らずに語ることはありませんでした。
▶今回のポイント
・出張旅費の着服疑惑で荒木町長が記者会見
・完全否定だったシルバー割引の利用を認めて謝罪
・着服額については「返還を怠っていた」と釈明
今回は、この記者会見を検証する1本目として、2019年12月26日に掲載した記事「【速報】屋久島町長会見
シルバー割引利用認める」をみてみましょう。
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屋久島町の荒木耕治町長(69)が東京などに公務出張する際、町役場から受け取った普通運賃の航空券を払い戻し、その半額以下となるシルバー割引で再購入して、差額を着服していたとされる疑惑を受けて、荒木町長は12月26日に記者会見を開き、航空券を払い戻し、シルバー割引を利用していたことを認めた。町議会で「やっていません」と否定したことについては、虚偽答弁だったとの認識を示した。
町長としての進退については、「詳細な差額が判明した段階で検討する」と述べるに留まった。
【動画】出張旅費不正問題について記者会見する荒木耕治町長(2019年12月26日)*
▶今回の教訓:うその軌道修正は早めに
大そうな記者会見まで開き、結局は認めざるを得なくなったシルバー割引の利用について、どうして荒木町長はうそまでついて、頑なに否定を続けたのでしょう。荒木町長が会見で説明したとおり、単に「返還を怠っていた」のであれば、すぐに認めて謝罪し、全額を返金すれば済む話です。ここまで大問題になることなく、2年も経てば忘れ去られ、こんな検証記事を書く必要もありませんでした。
議会答弁でシルバー割引の利用を否定する荒木耕治町長(2019年12月10日)
「返還を怠っていた」という説明は、言い換えれば、「悪気はなかった」ということなのかもしれません。もし、そうであれば、町議会の一般質問で否定する必要はなく、逆に荒木町長が「シルバー割引を使って、何か問題でもあるのか」と、質問した町議に聞き返してもよかったはずです。
その点については、次回以降の検証記事に譲りますが、いずれにしても、うそを一度でもついてしまったら、できるだけ早めに軌道修正して、本当のことを言うことが大切です。
■荒木耕治町長の主な発言(2019年12月26日)
私が東京などの出張の際 、航空券をシルバー料金の航空券に買い替えて、その差額の返還を怠っておりました。現在、弁護士を通じて各所に資料を求めて、具体的な返還額を計算しておりますが、資料等がそろうまでに、今しばらく時間がかかりますので、資料がそろって正確な返還額が判明次第、各関係各位に差額の返還を行ってまいります。
今回は私の不徳の致すところで、皆さまにご迷惑をお掛けしまして、誠に申し訳ございませんでした。
記者:差額の返還を怠ったということだが、もともと返す必要があると感じていたのか。
町長:正直に申し上げて、当時は理解をしていなかった。
記者:何を理解をしていなかったのか。
町長:返還をしないといけないということだ。
記者:町長は職を辞する考えはないのか。
町長:最終的に資料が出そろって返還額を確定し、返還を終了後に自分の責任を取りたい。現段階では、表明は控えさせていただきたいと思っている。
記者:責任を取るというのは、具体的にはどうするのか。辞職することと捉えていいのか。
町長:(差額を)払って、自分に罰をする。例えば減俸なり、そういうことも一つの仕方だと思っている。
記者:シルバー割引を利用していた時の心境は?
町長:そういう割引制度があることを私は知らなかったので、JALカウンターで、そういうのがあるということで、それをした。そういうのがあるんだと、そう思っている。
記者:何度も利用していて、常習性もあったと思うが、悪いことをしていると思わなかったのか。
町長:正直、清算するということまで考えが及んでいなかった。
記者:この件について、先の議会では、百条委員会の設置を求める動きもあった。町長がそういうことを分かっていたら、きちんと説明する場も何回もあったと思う。いま(説明が)この場になった理由は?
町長:一般質問で受けた、最初に身に覚えのない200万円の贈収賄事件の(質問の)後の質問だったので、私も少し、だいぶ感情的になっていて、冷静な対応ができず、深く反省している。
記者:結果的に隠していたと思われても仕方がないと思うが、(説明が)今日になった理由についてどう感じているか。
町長:今日はこういう事態になって、本当にすまないと思っている。
記者:議会でうその答弁をしたということになるが、その認識はあるのか。虚偽答弁をしたと認めるか。
町長:先ほども言ったが、身に覚えのないことを言われて、その次の質問だったので、自分も冷静さを欠いて、少し感情的になっていたことで、そういう答弁をしてしまったということは事実だ。
記者:虚偽答弁をしたということでいいか。
町長:そう捉えられても、仕方がないと思っている。
記者:その件については、着服とは別に責任が発生すると思うが、その点はどう考えるか。
町長:先ほども言ったが、そういう冷静さを欠いていたので、そういう話になった。
記者:虚偽答弁をした責任は感じているのか、その責任も取るつもりはあるのか。
町長:その責任も取らなければいけないのかなと思っている。
記者:この差額については何に使ったのか、わかる範囲で説明を。
町長:電車で行くところをタクシーで行ったり、お茶を飲んだり、そういうことに使った。
記者:使途について、少なくとも(差額は)数十万円になると思うが、他にどう使ったのか。
町長:特別に何かそれで、大きなものを買った記憶はない。通常の自分の生活のなかで、使ったぐらいだと思っている。
記者:払い戻しをする際に(差額)をポケットに入れて飲食代に使った。税金がもとになっている。その時に罪悪感はなかったのか。
町長:正直なところ、当時はシルバー割引の理解がなかった。返さなければいけない(理解)というのがなかったので、そういう(罪悪感の)気持ちはなかった。
記者:それは首長として、その認識がないのは非常に杜撰だと思うが、どう考えるか。
町長:正直言って、清算しなければいけないというのが、そういう理解をしていなかったのが原因だと思う。
記者:今後、町民への信頼回復については、どのように考えるか。
町長:それは仕事を一生懸命やっていくということだと思っている。
記者:「信頼回復に向けて 仕事を一生懸命にやっていく」というのは、
ある意味で続投宣言だ。金額が確定した段階で、どのような状況になったら、別の責任の取り方をするのか。
町長:それは(金額が)出た時点で、また考える。そこまでは一生懸命に仕事をやる。
記者:そこまでは一生懸命やって、どのような形だったら、町民から声が出るとか、議会から何か意思表示されるとか、そういうことがあれば、辞めるケースもあると考えているのか。
町長:それはいろいろなケースで、私自身が決断することだと思っている。
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