金額を水増しした領収書がもらえる町:【検証 屋久島町政】(20) 出張旅費不正問題
元副議長「実際より高額な領収書を書いてもらった」
割引航空券を購入したのに普通運賃で不正精算
(この検証シリーズは随時掲載しています)
虚偽領収書の件で書類送検されたことを受けて、2020年8月14日付の南日本新聞の記事に掲載された岩川修司氏のコメント。「東京ではタクシー代などがかかるため、実際より高額な領収書を書いてもらい、多めに旅費を受け取った」と証言している
岩川浩一副町長(当時)の「見積もりの領収書」に岩川俊広町議の「予約の領収書」。この二つの取材を続けるなかで、もう一つ怪しい領収書があることがわかりました。2020年2月の取材で入手した関係文書を調べると、町に提出した領収書の金額より安く、その半額以下で航空券を購入していたケースが見つかったのです。
つまり、実際に支払った額より高い金額が記載された「水増し領収書」です。
町長に副町長、議長に副議長の町トップ4人が不正精算
そして、その領収書の宛名には、岩川俊広町議が議長を務めていた時の副議長、岩川修司町議(当時)の名前が書かれていました。これで町長に副町長、議長に副議長と、屋久島町のトップ4人が出張旅費の不正精算に関わっていたことになり、町民である取材者としては愕然としました。
岩川修司副議長(当時)が2018年の出張で提出した航空券代の領収書。9万3980円と記載されているが、実際の金額は3万7500円だった
「水増し領収書」で約11万円多く旅費を請求
町の出張記録や独自に入手した関係文書によると、岩川修司副議長(当時)は2018年5月と2019年5月の2回にわたり、全国町村議会議長会の研修会に出席するため東京に出張しました。その後、いずれも屋久島と東京の往復航空券代として、9万3980円と記載された領収書を添付して旅費精算しました。ところが、実際にはそれぞれ半額以下の割引航空券を購入しており、2回の出張を併せて、計約11万円を余分に受け取っていたのです。
岩川修司副議長(当時)が2019年の出張で提出した航空券代の領収書。9万3980円と記載されているが、実際の金額は4万400円だった
ただ1人 謝罪「大変悪いことをした」
この取材を進めていた2020年1月、岩川修司町議は、旅費不正の引責で議長を辞任した岩川俊広町議の後任として、新議長に就任したばかりでした。ところが就任早々の2月半ばに、突如として「体調不良」を理由に議員辞職してしまいました。その後、この不正精算の件で刑事告発され、同年10月に起訴猶予の不起訴処分となるのですが、書類送検された時に受けた地元紙の取材に、次のように述べています。
「東京ではタクシー代などがかかるため、実際より高額な領収書を書いてもらい、多めに旅費を受け取った」「大変悪いことをした。町民に深くおわびしたい」(*1)
このコメントを踏まえれば、2月に議員辞職した本当の理由は体調不良ではなく、この不正精算の責任を取る意味があったのではないかと思えてきます。そして、一連の出張旅費不正問題で、虚偽領収書の発行経緯について具体的に説明したのは、この岩川修司元町議、ただ一人です。
▶今回のポイント
・岩川修司副議長(当時)の「水増し領収書」を使った不正精算が発覚
・町長と副町長、議長と副議長の町トップ4人が不正に関与
・岩川修司氏は報道取材に「実際より高額な領収書を書いてもらった」と証言
今回は、2020年2月19日に掲載した記事「【速報】岩川修司議長が『病気により』議員辞職 2月17日に辞表を提出」をみてみましょう。
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屋久島町議会の岩川修司議長が議員辞職したことが2月19日、町議会事務局への取材でわかった。2月17日に副議長あてに辞表が提出され、理由について「病気により」とされているという。
岩川修司議長は1月10日、出張旅費着服の責任を取る形で議長を辞任した岩川俊広町議の後任として議長に就任していた。
同事務局によると、2月25日に全町議で協議をし、新議長の選出時期など、今後の方針を決める予定だという。
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▶今回の教訓:公人の不正は説明責任を果たすまで許されない
いま振り返ると、岩川修司町議(当時)の議員辞職は、この「水増し領収書」による不正精算と無関係だったとは思えません。もし、その不正が関係していたのであれば、辞職の時に事実を語ってもらいたかったという思いです。そうしていれば、2年半もの長きにわたり、一連の出張旅費不正問題が続くことはなかったでしょう。
その一方で、虚偽領収書の発行経緯を地元紙に証言したことで、ほんの少しではありますが、公人だった元町議としての説明責任を果たしたと言えます。この岩川氏の証言がなければ、いまでも虚偽領収書の真相は全くもって闇の中でした。
それに引き換え、ほかの町幹部はどうでしょう。岩川浩一副町長(当時)は「事務手続き上のミス」、岩川俊広町議は「すべて警察で説明する」などと言った切り、何も説明をしていません。さらに、岩川俊広町議は現職でありながら、説明責任を果たすどころか、虚偽領収書の不正調査をする百条委員会設置案の採決で、みずから反対して否決に持ち込んでしまう始末です。
しかし、だんまりを決め込んでも、不正調査に反対しても、それで公人としての説明責任が終わることはありません。この虚偽領収書について、しっかりと説明するまでは、この旅費不正問題は延々と続くことになります。
*1) 2020年8月14日付 南日本新聞社会面に掲載