失われた荒木町長の信頼:【検証 屋久島町政】(14) 出張旅費不正問題
町議会で荒木町長に不信任決議案
「屋久島町は泥棒しても許される町になってしまう」
新しい年を迎え、2020年1月10日に開かれた臨時議会は、出張旅費不正の問題を抱える荒木耕治町長にとって、厳しい試練の場でした。開会前には、「着服町長は辞任せよ!」と書かれた横断幕を掲げられ、大勢の町民から辞任勧告書を突き付けられました。
そして、議場に入ると、さらなる追及が待ち構えていました。
大勢の町民に囲まれて辞任勧告される荒木耕治町長=中央(2020年1月10日、屋久島町議会)
町長に辞任迫る不信任決議案
臨時議会では、荒木町長と同様の不正で引責辞任した岩川俊広議長の後任が決まり、そのまま議会は閉会するはずでした。ところが、議事の最後に真辺真紀町議が「議長!」と手を挙げ、静かに自席を立ちました。続いて、一礼をして演壇に立つと、同僚議員や傍聴する町民たちと向かい合い、手にした文書を広げました。
「屋久島町長不信任決議案、本議会は屋久島町長荒木耕治君を信任しない」
荒木町長に対して、町長の職を辞し、旅費着服の責任を取ることを迫る、不信任決議案を発議したのです。
出張旅費不正の責任を取って議長を辞任した後、議場であいさつをする岩川俊広議員(2020年1月10日、屋久島町議会)
辞任に賛同する町民1436人の署名簿を手に
真辺町議は、荒木町長の辞任に賛同する1436人の署名簿をしっかりと抱え、提案理由の説明をはじめました。
「約4年にわたる出張旅費の着服に、それを完全否定する虚偽の議会答弁。そして、追及された果ての記者会見で、すべてを一転して認めて、深々と頭を下げての謝罪。その荒木耕治町長の姿は、入山協力金3000万円の横領事件に続く全国ニュースとして、広く流れ、今や世界自然遺産屋久島への信頼は完全に失われています」
荒木耕治町長に対する不信任決議案の提案理由を述べる真辺真紀町議(2020年1月10日、屋久島町議会)
いきなり厳しい言葉ではじまった演説に、町役場の全幹部に町議、そして傍聴席の町民がじっと耳を傾けました。真辺町議の横では、荒木町長が目をつぶり、小刻みに顔と体を揺らしていました。
真辺町議は辞職を求める理由として、次のような主張を続けました。
「着服額は数百万円になる可能性があり、それは、すべて町民の血税」
「着服の疑惑を指摘されても、荒木町長は嘘の発言を重ね、その事実を隠蔽した」
「不正に手に入れたお金は、返せば済むと子どもたちに教えられない」
議会答弁で旅費着服の疑惑を否定した荒木耕治町長。結果的に虚偽答弁だった(2019年12月10日、屋久島町議会)
議員の存在、「町長の擁護」か「町民のため」か?
そして、不信任決議案への賛成を同僚町議たちに求め、こう呼びかけて演説を結びました。
「議員は町長を擁護するために存在するのか。町民のために存在するのか。ごくごく当たり前の常識が問われています。このままでは、屋久島町は泥棒しても許される町として知られることになってしまいます」
▶今回のポイント
・2020年1月の臨時議会を前に大勢の町民が荒木町長に辞任勧告
・臨時議会では岩川俊広議長が旅費不正で引責辞任
・さらに荒木町長の辞任を求めて不信任決議案を提案
今回は、2020年1月11日に掲載した記事「【動画】屋久島町長に対する不信任決議案 提案理由/真辺真紀町議」をみてみましょう。
*
【動画】不信任決議案の提案理由を述べる真辺真紀町議(2020年1月10日)
完全に失われた世界自然遺産・屋久島の信頼
約4年間にわたる出張旅費の着服に、それを完全否定する虚偽の議会答弁。そして、追及された果ての記者会見で、すべてを一転して認めて、深々と頭を下げての謝罪。その荒木耕治町長の姿は、入山協力金3000万円の横領事件に続く全国ニュースとして広く流れ、今や世界自然遺産・屋久島への信頼は完全に失われています。
入山協力横領に旅費着服、いずれも町長に責任
入山協力金の横領について、荒木町長は「町に法的責任はない」と主張しましたが、横領を許した原因は、屋久島町の杜撰な管理態勢でした。本来であれば、その全責任を負うべき荒木町長ですが、今度は町長本人が出張旅費の着服を指摘され、議会や取材で虚偽の発言を繰り返した末、着服の事実を認めて謝罪に追い込まれたのです。
虚偽答弁で着服の事実を隠蔽
荒木町長の着服額は、数百万円になる可能性があり、それはすべて町民の血税です。そして、着服の疑惑を指摘されても、荒木町長は嘘の発言を重ね、その事実を隠蔽しようとしました。
「返還義務を怠っていた」という言い訳は、着服の事実を隠蔽する言い換えで、社会的に通用するものではありません。認識不足であるという言い訳は通じませんし、謝罪をすれば良いという問題ではありません。そんなことが通用するなら、法律や警察は不要ということになります。不正に手に入れたお金は、返せば済むと子どもたちに教えるようなことはしてはいけません。
世界自然遺産の島のリーダーとして許されない
入山協力金横領への対応も含め、これら荒木町長の言動は、1万2000人の町民が暮らす地方自治体の首長として、さらには、世界自然遺産の島を預かるリーダーとして、許されるべきものではなく、その資質を欠いているのは明らかです。
以上が不信任決議案の提案理由です。
荒木耕治町長の不信任決議案について、町議たちに賛同を求める真辺真紀町議(2020年1月10日、屋久島町議会)
虚偽答弁で町政と議会運営に支障
荒木町長自身は少なくとも18回もの着服を認めています。屋久島町の会計の最高責任者である町長として、この責任は非常に重いものです。
加えて、議会での虚偽答弁については今後の町政運営、議会での審議に大きく支障を来たすことが明確となっております。
議員は町長を擁護するために存在するのか、町民の為に存在するのか。ごくごく当たり前の常識が問われています。
このままでは「屋久島町は泥棒しても許される町」として知られることになってしまいます。この提案に反対される議員は、明確に反対の理由を討論していただきますよう重ねてお願いいたします。
何卒ご審議のうえ、本不信任決議案にご賛同くださいますようお願いいたします。
*
▶今回の教訓:責任を逃れるリーダーは信用されない
不信任決議案の提案理由は、とても厳しいものでした。まさか、ここまで追及されるとは、荒木町長は思っていなかったかもしれません。
では、どうして、ここまで厳しい言葉が並んだのか。
それは、度重なる不祥事や不正で、荒木町長がリーダーとしての責任を果たさなかったからでしょう。入山協力金3000万円の横領では、町の杜撰な管理の責任を棚上げして、記者会見で「町に法的責任はない」と発言。旅費着服では、虚偽答弁でその事実を隠そうとしたうえ、報道に追及された末の謝罪会見では「返還義務を怠っていた」と述べるなど、その責任を真摯に全うする姿勢は感じられませんでした。
この人を信じて付いていっても、何か不都合な問題が起きたら、すべての責任をなすり付けられるかもしれない。そう感じた町民は少なくなかったでしょう。
そして、そのリーダーを町議たちは信じるのか否か。不信任決議案の提案理由に続く討論と採決に注目が集まりました。
■【検証 屋久島町政】記事一覧