離島割引を利用せず【旅費不正の構図】(8) 屋久島町出張旅費不正問題
格安の離島割引でなく、正規運賃で出張
不可解な発行経緯の領収書も
(この連載は随時掲載します)
鹿児島県屋久島町の幹部らによる一連の出張旅費不正問題をめぐり、昨年12月から始まった監査に合わせて、その実態を解明する連載「旅費不正の構図」。8回目は、格安の離島割引で航空券を買えたはずなのに、わざわざ高い正規運賃を支払ったケースを紹介します。
町職員が旅費精算で添付した航空券の領収書。離島割引ではなく、正規運賃が記載されていた
構図:旅費条例に従わず、離島割引を利用せず
屋久島町民が鹿児島と屋久島の両空港間を移動する場合、離島割引の特別運賃が利用できる。2022年1月現在であれば、片道で1万5900円かかるところを、半額以下の7600円で搭乗できる。それゆえ、同町で暮らす住民で、この離島割引を利用しない人はまずいない。
また、「屋久島町職員等の旅費に関する条例」では、第7条で次のように定めている。
「旅費は、最も経済的な通常の経路及び方法により旅行した場合の旅費により計算する」
ところが、この離島割引を利用せず、より高額な正規運賃で出張したケースが少なくとも計5件あることが、これまでの「屋久島ポスト」の取材でわかっている。さらに、鹿児島空港で航空券を購入したはずの職員が、なぜか屋久島空港や町内の旅行会社が発行した領収書を添付して、出張旅費の精算をしている事例もあった。
税務課などの職員2人が提出した旅費精算書。航空運賃が離島割引ではなく、正規運賃だった(※平成24年とあるのは、平成26年の誤りとみられる)
事例1:離島割引を利用せず、領収書の発行場所に疑問
町が開示した出張記録によると、総務課と税務課に所属する職員2人は2014年7月7日~8日、「地方財政状況調査検収、普通交付税等算出結果検収」で鹿児島市に出張した。7月8日に屋久島へ帰る際に、鹿児島空港から航空機に搭乗。出張後、航空運賃として1万5600円の領収書を添付して出張旅費の精算をした。
ところが、2人が添付した領収書の金額1万5600円は正規の片道運賃だった。当時の離島割引の片道運賃は1万500円だったので、2人は条例の規定よりも、それぞれ5100円を多く受け取っていたことになる。
税務課などの職員2人が旅費精算書に添付した航空券の領収書。鹿児島空港から搭乗したのに、発行場所が屋久島空港になっていた
また、2人が添付した領収書の発行場所にも疑問がある。2人は7月8日に鹿児島空港から搭乗して屋久島空港に到着したが、なぜか領収書の発行場所が「屋久島空港所」となっていた。領収書の発行日が「7月8日」となっていることから、2人が航空券を購入したのは鹿児島空港であり、発行場所も鹿児島空港となるはずである。
総務課の職員2人が提出した旅費精算書。航空運賃が離島割引ではなく、正規運賃だった
事例2:離島割引を利用せず、搭乗後に旅行会社が領収書発行?
町が開示した出張記録によると、総務課に所属する職員2人は2016年9月2日、「特別交付税に係る財政事情等ヒアリング」で鹿児島市に出張した。同日に屋久島へ帰る際に、鹿児島空港から航空機に搭乗。出張後、航空運賃として1万5600円の領収書を添付して出張旅費の精算をした。
ところが、2人が添付した領収書の金額1万5600円は正規の片道運賃だった。当時の離島割引の片道運賃は1万500円だったので、2人は条例の規定よりも、それぞれ5100円を多く受け取っていたことになる。
総務課の職員2人が旅費精算書に添付した領収書。鹿児島空港で航空券を購入したはずなのに、町内の旅行会社が発行した領収書だった
また、2人が添付した領収書の発行場所にも疑問がある。当初、2人は9月3日に高速船で屋久島へ戻る予定だったが、「海上天候不良のため」に急遽、9月2日に航空機で帰った。ところが、2人が精算書に添付した領収書は町内の旅行会社が発行しており、発行日も「9月2日」となっている。急遽、旅程を変更したのであれば、鹿児島空港で領収書を受け取るはずである。また、9月2日は早朝の高速船で屋久島を発っているため、出発前に旅行会社で航空券を購入することも不可能だったと思われる。
企画調整課の職員が提出した旅費精算書。航空運賃が離島割引ではなく、正規運賃だった
もう1例、離島割引を使わなかったケースを紹介する。
町が開示した出張記録によると、企画調整課に所属する職員は2017月2月8日~9日、「工業統計説明会」に出席するため鹿児島市に出張した。2月9日に屋久島へ帰る際に、鹿児島空港から航空機に搭乗。出張後、航空運賃として1万5600円の領収書を添付して出張旅費の精算をした。
ところが、職員が添付した領収書の金額1万5600円は正規の片道運賃だった。当時の離島割引の片道運賃は1万500円だったので、職員は条例の規定よりも5100円を多く受け取っていたことになる。
企画調整課の職員が旅費精算書に添付した航空券の領収書。発行場所が搭乗した鹿児島空港になっている
当初、この職員は高速船で屋久島に戻る予定だったが、「荒天のため」に急遽、航空機で帰ることにした。よって、航空券を鹿児島空港で購入しているため、領収書の発行は「日本航空 カゴシマ空港支店」と記載されており、ほかの4例のような疑問はない。
2021年3月10日の屋久島町議会で、出張旅費不正問題の監査について答弁する朝倉富美雄・代表監査委員(中央)
対応と現状:離島割引の利用なし、監査委員が見落とし
この離島割引を利用しなかった出張を含め、多数の出張に不正の疑惑があることが2021年3月の町議会一般質問で指摘された。それに対し、代表監査委員の朝倉富美雄氏は次のように答弁した。
「監査委員として、ある程度、自信と責任を持って調査をする。当然書類を見て、これはおかしいと思わないもの、通常に考えてこれは正当じゃないか、当たり前の精算じゃないかというものは、調査をする必要はないと考えている」
しかし、今回の記事で指摘したのは、ただ単に離島割引を利用しなかったケースで、監査で旅費精算書と領収書を見れば、すぐに問題がわかるはずだ。つまり、監査委員はそれを見落としていたことなる。