【被告 答弁書】虚偽報告の全責任は担当職員に 屋久島町補助金不正・住民訴訟

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担当職員が勝手に公印使用、決裁なく独断で報告・・・・・・赤裸々に説明

メイン)答弁書1
屋久島町が裁判所に提出した答弁書には、担当職員が虚偽報告書を独断で提出した経緯が詳細に記載されている(一部画像を加工しています)

 屋久島町が水道工事で国に補助金を申請する際に虚偽の「工事完成日」などを報告して、国から補助金1668万円の返還命令を受けたのは町幹部の責任だとして、町に対して、荒木耕治町長ら幹部3人に損害賠償を命令するように町民が求めた住民訴訟――。

 屋久島ポストは町が鹿児島地裁に提出した答弁書の全文を入手した。そこには、担当職員が幹部の決裁を受けることなく、虚偽報告書を「独断で提出した」経緯などが赤裸々に綴られ、荒木町長ら幹部の責任は一切ないとする主張が展開されていた。

 町が提出した答弁書のなかから、担当職員に関わる記述を以下に抜粋する。答弁書で担当職員は実名で記載されているが、記事では「職員A」などと匿名にする。( )内の説明は屋久島ポストが補足した。

    

虚偽報告書 職員が公印を押して「独断で提出」

 全ての工事が終わったとする報告書を作成したのは職員Aであるが、同人が矢野(和好・生活環境課長)に工事未完成の事実を伝えた事実はない。職員Aは、提出伺書の起案をすることなく、319日の県との打ち合わせに先立って部下の職員B及び生活環境課上下水道係主任Cに命じて公印使用申請書(伺い)という本来軽易な文書に用いられる簡略な手続きで公印を押させておいた提出用のかがみに、本件実績報告書を添付して独断で提出したものである。

(中略)

  なお、(虚偽報告が発覚した後の)この打ち合わせは支払期日が迫っていた職員Aの退職金の支払い差し止める(原文ママ)べきかどうかと遅滞した請負業者に対するペナルティを検討するものであった。

公印使用
屋久島町が裁判の証拠で提出した「公印使用申請書(伺い)」には、「令和2年度簡易水道等施設整備費 国庫補助金の事業実績報告について」と記載され、担当職員が公印を押印した事実が記録されている
(一部画像を加工しています)

職員が「県や国への報告の必要はない」と説明

打ち合わせにおいて、職員Aから「補助金部分の工事は完成しており補助金の交付については問題がない、(町が予算を支出する)単独事業分の遅れについては県や国への報告の必要はない」との説明があったため、(町としては)改めて報告する必要はないないと考えたからである。したがって、(虚偽報告の事実を国に報告せず)意図的に放置したとの事実はない。

町長、副町長、課長に虚偽報告の責任なし

 矢野は(工事が)未完成であることは知らなかったし、矢野が実績報告書を提出した事実もない。荒木と日高(豊副町長)が事実と異なる実績報告書について国に報告することなく放置し隠ぺいした事実もない。事実と異なる実績報告書の提出は、前記したように職員Aが伺いを立てることもなく独断で行ったものである。

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屋久島町が答弁書で、担当職員が幹部の決裁を受けずに独断で提出したと説明する虚偽の検査調書。工事が未完成なのにもかかわらず、「契約図書に基づき良好に施工されている。(合格)」と記載されている

工事未完成で代金を前払い 職員は幹部に「一切説明」せず

 実際には(最も遅れていた)5工区の工事についてはその後も進捗はなく、担当者であった職員Bからの連絡もなかなかつかないまま、時間が経過し、連絡が取れた時点において5工区の現場監督者から最終的には5月中には完成予定であるとの報告を受けた。職員Bは、(前年度の予算を執行する)出納整理期間内の支払いをするためやむなく、56日に工事請負費のうち完成払いに係る支出命令伝票を支払日528日に設定し起票した。なお、これらの事情については、決裁に関与した総務課長、副町長、町長には一切説明がなかった。

5工区支出命令書
工事が未完成の段階で作成した工事代金の支出命令書。起票した職員から事情説明がなかったため、町幹部はそのまま決裁印を押したという

荒木町長ら幹部3人に法的責任はない

 そもそも荒木ら3名には国に対する不法行為が成立する余地はないというべきである。

(中略)

 (職員A)本来、添付書類を添えて伺いを立て、町長までの決裁を取らなければならないはずの実績報告書の提出についてもこれをせず、あらかじめ部下の職員B及びCに命じて公印使用申請書(伺い)という本来軽易な文書に用いられる簡略な手続きで公印を押させておいた提出用のかがみに添付する形で、本来決裁を受けるべきはずの矢野、総務課長、副町長及び町長の決裁を受けずに、独断で提出したことが窺われ
また実績報告書の付属書類として別途提出した検査調書、完成写真を提出する際にも決裁をとった形跡がない。

(中略)

 以上の事実関係及び職員Aの一連の行為を見れば、「矢野には話した、知っているはずだ」という職員Aの発言が事実に反することは十分窺われるところである。

(中略)

 したがって、矢野が本件実績報告書の作成、提出について、自ら関与し、あるいはその内容が事実に反するものであることを認識しながら容認、放置していたということはありえないというべきである。

(中略)

 以上であるから、 矢野には原告が主張するような不法行為責任を問われなければならない事実自体がないというべきである。

 また、荒木、日高の両名についても(中略)、職員Aから「補助金部分の工事は完了しており補助金の交付については問題がない、単独事業分の遅れについては県や国への報告の必要はない」
との説明があったため、 改めて報告する必要はないと考えたからであり、原告が主張するような故意による放置、隠蔽といった事実はまったくないから、同人らの対応には不法行為法上の損害賠償をしなければならないほどの違法性があるとは考えられない。 

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