【最前線】寄付金の使い道 ひた隠す「異常事態」 屋久島町・環境保全プロジェクト
ふるさと納税の1700万円で海底清掃 ➡ 終了後、支出内訳は真っ黒「のり弁」 海底ごみの総量と廃棄実費も公表せず
一部町議、住民監査請求も視野に議会で追及中
【左】全面黒塗りで非開示とされた海底清掃事業の見積書【右】事業の企画提案書も大半のページが黒塗りされて非開示だった
ふるさと納税で寄せられた1700万円で海底清掃事業をしたにもかかわらず、寄付金の詳細な使い道などを隠し続ける「異常事態」がいま、世界自然遺産の屋久島で続いている。
地元の屋久島町役場で事業費の使い道を取材で確認すると、担当課が示した支出内訳の記録文書は真っ黒な「のり弁」状態で、1700万円もの予算を何にどう使ったのか、さっぱりわからない。それではと、実際に集めた海底ごみの総量や廃棄にかかった実費を尋ねてみたら、今度は「確認する必要はない」などと言われ、具体的な量や金額も教えてもらえない。
このままでは、全国から寄せられた「屋久島の自然を守ってほしい」という善意を裏切ることになる――。そう危惧した一部の町議会議員が立ち上がり、住民監査請求を視野に入れて、町執行部を追及している。
JTBパブリッシング、独占的に業務を受託
問題となっているのは、屋久島町が2022年度に実施した海底清掃を主体とする環境保全事業だ。旅行大手JTBの出版部門を担う関連会社「JTBパブリッシング」(本社・東京)が企画を提案。町は同業他社を交えた競争入札をすることなく、独占的に業務を委託する「特命随意契約」で同社と契約を結び、2023年3月までに全事業を終えた。
屋久島町が制作したユーチューブ動画では、海底清掃の様子が紹介された
企画提案書も大半のページが全面黒塗り
ところが2023年10月、屋久島ポストが情報公開請求で同事業の記録文書を入手したところ、予想もしない事態に直面した。総事業費の使い道が記された見積書を見ると、詳細な支出内訳が全面黒塗りされ、1700万円の事業費が何にどう使われたのか、まったく確認できないのだ。さらには、同社が提出した企画提案書も大半のページが真っ黒に塗られ、この事業がどのような目的や狙いで実施されたのか、一切わからない状態だった。
海底清掃事業の企画提案書は大半のページが全面黒塗りで、事業の目的や狙いが一切わからない状態で開示された
「言い値」の1700万円、支出内訳は「営業秘密」
そこで、事業を担当した観光まちづくり課の泊光秀課長に理由を尋ねると、見積書の内訳や企画提案書は「営業秘密に関する情報」であり、情報公開請求では開示できないという。だが、この事業は入札による価格競争がないままに、同社だけが独占的に請け負ったものだ。特命随意契約を結ぶ際に、町は他社からの参考見積もりも取っておらず、いわば同社の「言い値」がそのまま1700万円の契約額になっている。
それにもかかわらず、事業費の詳細な支出内訳などを全面黒塗りで隠す対応は、公金で運営される地方自治体としては、あってはならないことだ。さらには、屋久島の自然を守るために、浄財を町に託した人たちの善意を顧みない、極めて身勝手な姿勢だといえる。
全面黒塗りで非開示とされた海底清掃事業の見積書
屋久島ポストの抗議で見積書は全面開示
それを踏まえ、屋久島ポストが「寄付金で実施された事業である以上、支出内訳を黒塗りで隠す対応は許されない」と抗議し、再度の情報公開請求をすると、町の対応は一転した。町は同年12月、それまで見積書を真っ黒に覆っていたマスキングをはがし、1700万円の詳しい使い道を開示した。
JTBパブリッシングが屋久島町に提出した見積書。再度の情報公開請求を受け、一転して町は全面開示した
深まる疑念、支出7割が広報費 潜水は計2時間
しかし、その支出内訳を詳細にみると、町への疑念はさらに深まった。総事業費1700万円の約7割にあたる1165万円が、海底清掃そのものではなく、主に屋久島の魅力を広報する動画と観光パンフレットの制作に使われていたのだ。海底清掃が主体の事業としては「本末転倒」の公金支出だが、さらに疑問なのは、実際に海底で清掃をした潜水時間が計2時間だったことだ。
それでは、海底で潜水した計2時間で、どれほどの量のごみを集め、廃棄費用はいくらだったのか。黒塗りが解かれた見積書には、「ゴミ回収廃棄費用」の単価は5万円で、数量を「20」として計100万円と書かれているが、事業終了後に提出された実施報告書には、回収したごみの総量や廃棄にかかった実費は記載されていない。
海底清掃の関連事業として屋久島町が制作した観光パンフレットの一部
担当課長、ごみの総量と廃棄実費の確認取材を一蹴
そこで、ふたたび観光まちづくり課の泊課長に確認すると、またしても予想を裏切る答えが返ってきた。同社との業務委託契約書には「実費精算が必要とは記載されていない」という理由で、実際に回収したごみの総量も、廃棄にかかった実費も、いずれも取材に答える必要はないというのだ。
それに対し屋久島ポストは、実費精算が必要か否かは別にして、「事実確認として、回収したごみの総量と廃棄の実費を教えてほしい」と訴えた。だが、泊課長はその要望を一蹴し、「あとはJTBパブリッシングに聴いてほしい」と回答を避けた。そして、同社にも取材を試みたが、ごみの総量と廃棄実費について、具体的な回答は何も得られなかった。
一部町議、情報を隠す町の姿勢に危機感
なぜ、屋久島町とJTBパブリッシングは、海底清掃事業に関する情報について、それほど頑なに隠そうとするのか。このままでは、ふるさと納税で寄付をした人たちを裏切ることになるのではないか。
そんな危機感を募らせた一部の町議が、いま開会中の町議会3月定例会で、詳細な情報の公開を求めて、町執行部を追及している。
海底清掃事業について議会答弁する荒木耕治町長(2024年3月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)
荒木町長、ごみの廃棄実費は示す方針
3月11日には渡辺千護町議が一般質問に立ち、海底清掃で集めたごみの総量と廃棄実費を示すように要望。それに対し荒木耕治町長は、これまでの対応を一転させて、事業を委託した同社に確認したうえで、実際にかかった費用を報告する方針であることを明らかにした。また、渡辺町議は泊課長に対し、ごみの廃棄実費に加えて、同事業に関わったスタッフ全員の交通宿泊費についても、すべての実費を示すように求めている。
海底清掃事業について一般質問をする渡辺千護町議=中央(2024年3月11日、屋久島町議会YouTubeチャンネルより)
渡辺町議「善意を裏切らないためには住民監査請求も」
渡辺町議は取材に「この3月定例会で満足な回答が得られない場合は、貴重な寄付をいただいた方々の善意を裏切らないためにも、住民監査請求で事実を明らかにしたい」と話している。
この案件は、2022(令和4)年度事業ですよね。開会中の3月定例議会一般質問でこの問題を取り上げた渡辺千護町議は、今会期中に町当局から満足な回答が得られなければ、住民監査請求も辞さない構えのようです。
ただ、地方自治法第242条第2項の規定に「前項の規定による請求は、当該行為のあった日又は終わった日から1年を経過したときは、これをすることができない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない」とあるので、今から住民監査請求となると、正直言って、問題提起の時期を逸してしまった感は否めません。
先の「町長交際費住民訴訟」と同じ結果になる可能性があると思います。