海底清掃問題

【視点】日給7万7000円 「主任研究員」に弁護士や医師の5倍の人件費 屋久島町海底清掃事業

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何も研究しないのに「主任研究員」 仕事は調整役で時給1万円

2022年度から始まった海底清掃事業で、海底のごみを回収するダイバーたち(屋久島町YouTubeチャンネルの動画「海・山・川の繋がりで豊かな屋久島の自然を守るプロジェクト」より)

 2023年度、屋久島町が海底清掃事業を業務委託したダイビング業者「オーシャナ」(本社・東京都中央区)の見積書をじっくり見ると、世間相場では考えられない人件費が計上されている。前回の【視点】で紹介した「経理担当職員」は日給5万5000円(税込み)で、時給にすると約7000円にもなった。


専門性がない業務に20日で計154万円

 だが、今回取り上げる「主任研究員」は、それをはるかに上回る日給7万7000円(同)だ。1日8時間の労働をしたというので、時給にすれば約1万円。労働日数は20日間におよび、人件費の合計は154万円にもなった。

 そんな破格の高給がもらえるのだから、「どのような研究をしたのか?」と町役場に尋ねてみると、なんと「特に研究はしていない」という。それでは、どういった仕事をしたのかと、町が開示した勤務記録を調べたところ、こんな内容が記載されていた。

「現地参加メンバー打ち合わせ」「海岸清掃実施」「屋久島町へ移動」「海の特設サイト打ち合わせ」「メディア露出打ち合わせ」「環境プログラム作成打ち合わせ」「海底清掃現場調整」「事業報告書確認」・・・・・・。

 これらを見る限り、単なる調整役の業務であって、「主任研究員」と呼べるほど、何か専門性のある仕事だとは思えない。見積書にある個人名は黒塗りされており、この研究員の専門や資格がわかる肩書も記載されていない。さらに言えば、どの業務も個別に業務委託費を支払っており、なぜ別途に、これほど高額な人件費を支払う必要があるのかもわからない。

2023年度に「オーシャナ」が町に提出した海底清掃事業の見積書

弁護士や医師、日額1万5000円~1万8000円の報酬
 そこで、町ウェブサイトの例規集に掲載された「屋久島町特別職の職員で非常勤のものの報酬及び費用弁償に関する条例」を見ると、専門家に対する報酬として、次の金額が挙げられていた。

「情報公開・個人情報保護審査会会長:日額1万8000円」
 この審査会は、町の公文書開示をめぐる不服審査などを担当するのだが、会長は弁護士など法律の専門家が務めている。

「生活保護手当等嘱託医(内科・精神科):日額1万5000円」
 これは町の嘱託医なので、特に説明するまでもなく、医師に対する報酬である。

 つまり、極めて専門性が高い弁護士や医師など、国家資格を有した専門家であっても、町は1万5000円~1万8000円しか支払っていないということである。

専門性も資格もなく 報酬は弁護士や医師の5倍
 その一方、海底清掃事業の「主任研究員」の日給7万7000円はどうだろうか。見積書では、さも専門性があるかのように「主任研究員」と書いているが、実際は何も研究せず、単なる調整役をしていただけだ。それにもかかわらず、弁護士や医師と比べて、約5倍もの報酬を支払う必要があるとは思えない。

法外な人件費に消えた寄付金
 これが民間の事業であれば、何も問題はない。発注と受注の双方が納得した人件費であれば、どんなに高給であっても、それに口を挟む必要はない。

 だが、この海底清掃事業は公費で実施された公共事業だ。その財源には、ふるさと納税の寄付金1991万円が使われている。全国から寄せられた善意の浄財が、こんな法外な人件費に消えたと知れば、寄付した人たちは、屋久島町に裏切られたと思うに違いない。

 それにしても、見積書で日給7万7000円もの高額な人件費を見て、事業を担当した観光まちづくり課の課長や職員は、何も疑問に思わなかったのだろうか。普通の感覚であれば、「どうして、こんなに人件費が高いのですか?」と尋ねるはずである。

 来月に開かれる町議会3月定例会では、そのあたりの説明をじっくり聞きたいものだ。

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