垂水市盗撮事件

【視点】盗撮事件の取材で感じる垂水市役所の「隠蔽体質」/鹿児島ポスト

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公共施設で4年、児童が盗撮被害 → 垂水市、調査検証せずに9カ月放置

市、プライバシー保護を理由に一切の説明なし

【左】垂水市のウェブサイトに掲載された市のマークなど【右】情報公開制度で垂水市が開示した弁護士への相談記録。当初の取材に対し、担当職員はこの文書は「存在しない」と説明していた(※黒塗りは垂水市が加工)

 鹿児島県垂水市が設置する公共施設で児童10人が盗撮被害に遭った事件について、垂水市は一切の事実を市民や報道機関に明らかにしていない。その理由は、被害児童のプライバシーを守るためだという。

 だが一方で、垂水市は被害児童やその保護者に謝罪や補償をしておらず、市として再発防止策も講じていない。盗撮被害が発覚したのは2024年9月なので、約9カ月間にわたって事件を放置していることになる。そして、この状況を問題視した保護者有志が、事件の調査や検証などを求める申入書を尾脇雅弥市長に出す事態となっている。

再発防止策なく再び同じ事件の恐れ
 これらの経緯を踏まえると、垂水市の対応は極めて無責任だと言わざるを得ない。表向きは被害児童のプライバシーを口実にして、実質的には地方自治体としての管理責任から逃げているようなものだ。事件の調査や検証もせず、市として再発防止策も講じていない状況が続けば、また同じような事件が起きる恐れもある。

 盗撮して有罪となったのは、垂水市が業務を委託する公益社団法人の30代の男性職員(当時)だ。今回の事件で立件されたのは児童10人に対する盗撮だが、この職員は約4年にわたって盗撮を続けており、さらに大勢の児童が被害に遭っていたとみられる。その点についても、垂水市はしっかりと市民に説明と謝罪をする責任がある。

垂水市役所(鹿児島県ウェブサイトより)

市職員、関係文書の開示請求で虚偽説明
 この事件を取材して感じるのは、不都合な事実に蓋をしようとする垂水市役所の「隠蔽体質」だ。今年2月に垂水市の情報公開制度を利用して、業務委託先の法人に関する関係文書の開示を求めた際に、市の担当職員からこう言われた。

「関係文書は業務委託契約書しかありません」

 だが、そんなはずはないので、こう切り返した。

「業務連絡のメールや会議録などの文書があるはずなので、しっかり探してください」

 それでも、職員は「業務委託契約書しかない」と言うばかり。そこで「それでは、『文書不存在』の通知書を出してください」と返したのち、実際は存在する文書の「不存在通知書」を出したら、違法行為になることを伝えた。

 すると、職員の対応が一転して、「上役と相談してみます」とだけ言って、電話を切った。

情報公開制度で垂水市が開示した保護者の意見に関する文書。当初の取材に対し、担当職員はこの文書は「存在しない」と説明していた(※黒塗りは垂水市が加工)

「契約書しかない」→ 一転、メール文書など400枚を開示
 それから約2カ月後、垂水市は約400枚の関係文書を開示した。その大半は黒塗りで読めないが、事件に関するとみられるメールのやり取りや、市と市教育委員会の協議記録、弁護士への相談記録などが数多く含まれていた。さらには、事件への対応をして、関係文書を作成した職員名を見ると、当初の電話で「業務委託契約書しかない」と言ったのと、同じ職員だった。

 つまり、担当職員は契約書以外にも複数の文書があることを知りながら、虚偽の説明をしていたということである。その職員が自分の意思で嘘をつくとは思えないので、おそらく上司である垂水市の幹部が指示をしていたのであろう。

情報公開制度で垂水市が開示した市と市教育委員会の協議に関する文書。当初の取材に対し、担当職員はこの文書は「存在しない」と説明していた(※黒塗りは垂水市、モザイクは鹿児島ポストがそれぞれ加工)

 被害児童のプライバシーを守ることは極めて重要である。だが、それを口実に盗撮被害があった事実を一切公表せず、事件の調査や検証をしないまま放置することは、安心安全な市民生活を守る地方自治体として、絶対に許されることではない。

 被害児童の保護者有志が出した申入書に従って、早急に事件の調査と検証をしたうえで、その結果を保護者や市民に報告することが、垂水市役所に強く求められている。

■垂水市役所のコメント
 これまでの鹿児島ポストの取材に対し、事件があった公共施設を所管する垂水市保健課は次のコメントを出している。

「貴方がお聞きになられている事項は被害者が存する刑事事件に関するものであり、権利保護の観点から、情報の拡散は謙抑的にならざるを得ず、(中略)令和7年6月3日付けのメールで頂きました質問に対しては、回答を差し控えさせていただきます」

情報公開制度で垂水市が開示したメール文書。当初の取材に対し、担当職員はこの文書は「存在しない」と説明していた(※黒塗りは垂水市、モザイクは鹿児島ポストがそれぞれ加工)

情報公開制度で垂水市が開示した弁護士への相談記録。当初の取材に対し、担当職員はこの文書は「存在しない」と説明していた(※黒塗りは垂水市が加工)

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