【視点】市児童施設の盗撮事件、なぜ垂水市は被害関係者に謝罪しないのか?/鹿児島ポスト
児童50人が盗撮被害の可能性 → それでも市幹部「児童の安全確保は委託業者の責任」と主張
被害児童の保護者「市には公共事業の委託者責任がある」

【左】垂水市のウェブサイトに掲載された市のマークなど
児童に対する盗撮事件について、「事実を公開することを望んでいない被害関係者が多く、一貫して回答できない」――。
鹿児島県垂水市が設置する児童施設で児童10人が盗撮被害に遭った事件をめぐる市議会の一般質問で、尾脇雅弥市長はこう答弁して、事件に関する詳細を何も語らなかった。被害児童らのプライバシーを保護するためだとしているが、それを理由に、これまで垂水市は市民に対し事件の報告や謝罪を一切していない。せめて、被害関係者だけを集めた場で直接、市幹部が事件の説明や謝罪をすればいいのだが、それもしていないという。
被害関係者6世帯、市に事件の説明と謝罪を要望
被害児童の保護者によると、この事件に関係するのは計9世帯で、そのうち少なくとも6世帯は市による事件の説明と謝罪を求めている。また、市が施設の運営業務を委託する公益社団法人の元職員で、事件で有罪となった男性は、2024年9月までの約4年間にわたって盗撮を続けており、さらに40人の児童が被害に遭っていた可能性があるという。
垂水市が設置する児童施設で、50人もの児童が盗撮被害に遭ったとなれば、これは極めて大きな社会問題である。それなのに、なぜ市幹部は被害児童の保護者にすら謝罪をしないのか?

垂水市役所=2025年8月、鹿児島ポスト撮影
保健課長、国の規定等に照らして市の監督責任なし
尾脇市長に代わって答弁に立ち、その根拠を説明したのは、児童施設を所管する市保健課の永田正一課長だった。
「国が定める基準等において、市町村が定期的な巡回や監視の仕組み等の対策を講じなければならないといった規定は特にありません」
つまり、国が定めたルールに照らせば、児童の安全確保は業務を委託した公益社団法人の責任で行われるものであり、垂水市に監督責任は一切ないというのが、市側の「言い分」である。
児童施設、市が設置して公費で運営しているに……
しかし、この児童施設は垂水市の責任で設置されている。さらには、施設運営の業務委託費は市民の公金から支出されており、この施設の運営は垂水市が主体となった事業である。そうであれば、施設内で発生した盗撮事件に対し、公共事業の委託者として、垂水市が一定の責任を負うのは当然ではないのか。
複数の被害関係者に取材をすると、そう強く訴えてくる。だが、尾脇市長ら市幹部の認識はまったく違い、事件の全責任は委託先の公益社団法人だけにあるという。
市として再発防止策の報告をすべき
市議会の一般質問で尾脇市長は、盗撮事件に対する個人的な思いをこう語っている。
「私自身も心を痛め、重大性についても十分に認識をしている」
「誠に遺憾であり、市民の皆さまにもご心配をおかけしている」
真にそう思うのであれば、いまからでも遅くはない。せめて被害児童の保護者にだけでも、市幹部が謝罪をしてはどうか。
このまま両者の溝が埋まらなければ、すべては司法の判断ということになる。だが、いまも施設を利用している児童への影響を考えれば、それは回避するべきだ。
そして何よりもまず、垂水市の幹部に求められているのは、市として再発防止策をしっかりと講じて、被害児童の保護者に報告することである。
