垂水市、市児童施設での盗撮事件に対し「市に監督責任はない」/鹿児島ポスト
担当課長、国の基準等を根拠に「利用者の安全確保は委託業者の責任」
尾脇市長、被害者保護を理由に具体的な答弁は拒否
垂水市議会定例会・一般質問

【左】垂水市のウェブサイトに掲載された市のマークなど
鹿児島県垂水市が設置する児童施設で児童10人が盗撮の被害に遭い、市が業務を委託する公益社団法人の元職員が児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)などで有罪となった盗撮事件――。
この事件をめぐる市議会の一般質問で、同市の尾脇雅弥市長は「事実を公開することを望まない関係者が多い」として、個別具体的な内容については答弁を拒否した。また、市町村による定期的な施設の点検や巡回、監視といった安全対策について、担当の保健課長は「国が定める基準等に規定はない」と述べて、市としての監督責任はなかったとした。
高橋市議、被害児童50人の可能性を指摘
9月16日にあった市議会の定例会で、高橋理枝子市議の一般質問に対して尾脇市長らが答弁した。
質問をした高橋市議は、事件として立件された被害児童10人に加え、さらに40人の児童が盗撮被害に遭っていた可能性があることを踏まえ、「一連の事実関係と重大性を、市としてはどのように認識しているか」と尋ねた。
答弁に立った尾脇市長は、「誠に遺憾であり、市民の皆さまにもご心配をおかけしております」としたうえで、「私自身も心を痛め、重大性についても十分に認識をしている」と答弁。その一方、「被害関係者が多人数存在をして、事実を公開することや、特定されることを望まない意向を示す関係者も多い」として、事件に関する具体的な事実や評価については「一貫して回答を控える」と述べた。
担当課長、市町村に定期的な巡回や監視の義務なし
続けて高橋市議は、「盗撮カメラを仕掛けられるほど管理が甘かったことは、どう考えても明らかに監督義務不履行ではないか」と指摘。児童施設での安全確保は「自治体の基本的義務」であると主張したうえで、「委託者責任として、定期的に点検や巡回、監視の仕組みはあったのか」と問いただした。
これに対し尾脇市長は、高橋議員の質問に「事実誤認」があると指摘した。
続いて担当の保健課長が答弁に立ち、「安全対策は国が定める放課後児童健全育成事業の設備、および運営に関する基準等に定められている」としたうえで、利用者の安全確保は委託業者の責任で行われると説明。国が定める基準等では「市町村が定期的な巡回や監視の仕組み等の対策を講じなければならないといった規定は特にない」と述べて、市に監督責任はなかったとした。

垂水市役所=2025年8月、鹿児島ポスト撮影
盗撮4年、市は被害児童の保護者に謝罪せず
この盗撮事件は2024年9月に発覚。市が業務を委託する公益社団法人の職員が、更衣室内に仕掛けた4台のカメラで児童10人を盗撮したとして、性的姿態撮影等処罰法違反(撮影)と児童買春・児童ポルノ禁止法違反(製造)の罪で、 懲役2年、執行猶予4年の有罪判決を受けた。また、職員が約4年にわたって盗撮を続けていたことから、さらに40人の児童が被害に遭っていた可能性があるとみられている。
複数の被害児童の保護者によると、盗撮事件が発覚して以降、垂水市が保護者に謝罪をしたことはなく、市としての再発防止策を講じないまま、2025年度も同じ公益社団法人に業務を委託しているという。
