屋久島町議会がフリージャーナリストや独立メディアを排除 「閉ざされた議会」を選択 議会取材拒否問題
「マスコミだけに便宜」の基準を決定 「取材の自由」を認めず
石田尾茂樹議長が主導
屋久島ポスト「時代に逆行する決定」
議員席から取材拒否の理由を問われた後、手を出して発言を制止する石田尾茂樹議長。この後、屋久島ポストのカメラは議場から排除された(2021年12月7日、屋久島町役場議会棟)
 屋久島町議会は目標に掲げていた「開かれた議会」から「閉ざされた議会」へ大きく後退することになった──。同町議会は5月24日に議会運営委員会(日高好作委員長)を開き、フリージャーナリストや独立メディアを排除し、新聞社やテレビ局などのマスコミだけに議会取材の便宜を供与する方針を決定した。議運委員長を除く委員6人のうち5人が、プレスの自由(Press
Freedom)の根幹をなす「取材の自由」を認めない異例の決定となった。6月7日の議運で正式決定する。
「取材の自由」に賛成はたった1人
この日、議運が決定したのは傍聴規則の取扱要綱。取材許可を議長権限とする傍聴規則の判断基準を新たに定めた。採決の結果、「自由に撮影と録音を許可」の案は否決され、「日本新聞協会会員社、日本民間放送連盟加盟社及び専門新聞協会加盟社に属する者▽議長が認める者」の案が採択された。フリージャーナリストや独立メディアには議場で撮影や録音を禁止して、「取材の自由」を認めなかった。
「取材の自由」を認めなかったのは、議運委員の岩川卓誉、中馬慎一郎、榎光德、緒方健太、大角利成の各町議の5人。真辺真紀町議1人だけが「取材の自由」を認めることに賛成した。
石田尾茂樹議長は屋久島ポストの取材に対して、「議長が認める者」の判断基準は「日本新聞協会などの加盟社になる」と説明。新聞社やテレビ局などのマスコミ以外は議会取材ができないことになった。
岩川卓誉町議、一転して「取材の自由」を認めず
採決前の討論で、榎光徳町議は「日本新聞協会などの日本を代表する団体には、しっかりとした倫理規程がある」と、マスコミだけに議会取材を許可すべきだと主張した。
岩川卓誉町議は、これまでの議運で、フリージャーナリストや独立メディアを含めて自由に撮影と録音を許可することに賛同する意見を述べ、この日も自由に取材ができるように傍聴規則を改めるべきだと主張した。
ところが、傍聴規則を改正しないことが賛成多数で決まり、傍聴規則の取扱要綱を改正する審議に入ると、一転して「取材の自由」を認めない案に賛同した。
岩川町議は、日本新聞協会などの加盟社だけでは「(傍聴規則で議長権限としている)今より範囲が狭まるので、開かれた議会からは逆行すると思う」と述べたうえで、マスコミだけに便宜を図る案に加え、すでに傍聴規則で定められている「議長が認める者」を入れる修正案を提案した。
一方、真辺真紀町議は、日本新聞協会などの加盟社に限定することは「非常に時代錯誤で、とても恥ずかしいこと。一般も報道も区別することはない」と述べ、一貫して「取材の自由」を認めるべきだと主張した。
議運で提案された3案と賛同者(敬称略)
①「日本新聞協会会員社、日本民間放送連盟加盟社及び専門新聞協会加盟社に属する者」=榎光徳、大角利成
②「日本新聞協会会員社、日本民間放送連盟加盟社及び専門新聞協会加盟社に属する者▽議長が認める者」=岩川卓誉、中馬慎一郎、緒方健太
③「自由に撮影と録音を許可」=真辺真紀
*日高好作町議は委員長のため採決に参加していない。
議会取材について石田尾茂樹議長(左)と話し合う屋久島ポストの鹿島幹男共同代表(手前右)。この時は「特例」で取材が認められたが、2021年12月以降は取材拒否が続いている (2021年11月26日、屋久島町役場)
石田尾議長の取材拒否に抗議し、ルール化を検討
議会取材ルールの見直しは、石田尾議長が2021年12月、取材中の屋久島ポストを議場から排除したことをきっかけに始まった。同町議会の傍聴規則では、撮影と録音の許可は議長権限とされているが、可否を判断する基準がないため、屋久島ポストは「議長の恣意的な判断で、プレスの自由の根幹となる取材の自由が侵害されている」と抗議していた。
それを受け、議運での検討が始まったが、関係者によると、当初あった「日本新聞協会などの加盟社に限定」と「自由に撮影と録音を許可」の2案のうち、石田尾議長の意向で後者の自由に許可する案は排除されていた。
議長主導で「取材の自由」を制限し、プレスの自由を侵害する方針が決まった。
屋久島ポスト・鹿島共同代表「マスコミ以外の取材者を排除する差別的な議会」と批判
今回の決定について、屋久島ポストの鹿島幹男共同代表は「多くの地方議会がネットで配信され、自由に取材が認められる流れが進む中で、時代に逆行する決定だ。マスコミに属さない取材者には『取材倫理がない』というような主張も極めて差別的で、社会における多様な職業のあり方を否定する考え方だ」と批判している。



 
																											 
																											 
																											 
																											 
																											 
																	 
																											 
																											