石田尾議長が議場取材を妨害 屋久島ポストが抗議、一転容認 補助金申請うそ記載問題
「議長が取材は許可しないと言っています」
鹿児島県屋久島町が、同町の水道整備工事で国に補助金の申請をする際に、うその「工事完成日」を報告して補助金を受け取った問題が取り上げられた11月26日の同町議会全員協議会で、町議会の石田尾茂樹議長が調査報道メディア「屋久島ポスト」を編集・発行する報道機関「地域メディア・屋久島」に対して、議場での撮影取材の禁止を通告した。地域メディア・屋久島はその場で、「言論や取材活動を妨害するものだ」として抗議。抗議を受けて、石田尾議長は一転して取材を認めた。

屋久島町議会の石田尾茂樹議長(2021年11月26日、屋久島町役場議会棟)
「マスコミ」には便宜
私たちが撮影取材の禁止を告げられたのは11月26日午前9時半すぎだった。その日は、町議会の全員協議会が午前10時から開かれる予定で、この補助金問題について、荒木耕治町長が初めて説明することになっていた。地元テレビ局と並んで、私たちは町議会の傍聴席に三脚を立て、ビデオ撮影の準備をしていた。
すると、そこへ町議会の日高孝之事務局長が現れて、いきなり言った。
「議長が取材は許可しないと言っています」
そこで理由を尋ねたが、日高事務局長は「議会取材の可否は議長の権限ですから」と言うだけ。取材を禁止する根拠を示さなかった。
それなら議長から理由を聞こうと、議員控室の横にある議長室を訪ねると、石田尾議長が応接用のソファに腰かけていた。
取材禁止の理由を尋ねる私たちに、石田尾議長はこう説明した。
「議会の傍聴については録音、画像(の撮影)については許可されていない。報道の方々については、議長が判断をして特別に許可している。地域メディア・屋久島については、いま記事を書いていることは知っているが、県庁記者クラブや日本新聞協会などに加盟しているのか。法人登録はしているのか、どうなのか」
それに対し、私たちは「近年では、首相官邸などの記者会見でフリーランスの記者も取材している。町民に開かれた議会を目指している屋久島町議会としては、時代の流れに逆行する判断ではないか」と反論。さらに「国民の知る権利は憲法21条で保障されていて、日本新聞協会などに所属していないフリーランスの記者も報道の仕事をしている。議長が認めれば取材できるのに、それを禁止したら、町民の知る権利を奪うことになる」と主張した。

取材禁止を通告した石田尾茂樹議長(左)に抗議する「屋久島ポスト」編集委員会の鹿島幹男共同代表(手前) (2021年11月26日、屋久島町役場)
「今回限りの特例」
しかし、石田尾議長は取材許可の条件として、かたくなに「報道機関」、それも日本新聞協会などに加盟するメディアであることを主張。20分近くにわたって、「町民に知らせたい」「取材は許可しない」との主張が繰り返された。最終的に石田尾議長は「今回限りの特例」として、地域メディア・屋久島の取材を認めた。
石田尾議長は開会した全員協議会の冒頭で、私たちの要望について、次のように述べた。
「知る権利を奪うということをおっしゃいましたが、そういうことではありません。議会は議会なりの、しっかりしたルールの判断の基で、今回は遠慮していただきたい、というふうに言いましたが、今回はどうしてもということで承諾しました。しっかり今後はルールづくりを早急にやるということを約束します」
地域メディア・屋久島では、石田尾議長による今回の取材妨害を深刻な問題としてとらえており、現在、対応を検討している。

補助金申請うそ記載問題について報告があった屋久島町議会の全員協議会(2021年11月26日、屋久島町役場議会棟)