【取材後記】屋久島の焼酎を「おねだり」する国会議員?/編集委員会
荒木町長、国会議員から「おいしい焼酎があるよね と必ず言われて」贈答
不適切な贈答に使った公金は町に返還を
【上】国会議事堂(Wikimedia Commons より)
【下】東京のイベントで屋久島の魅力を話す荒木耕治町長(2017年12月17日)
5年間で370万円分を国会議員らに贈答
8月末、屋久島町長の「無駄遣い」を伝える記事を配信しました。
荒木耕治町長が自身の裁量で支出できる交際費を使い、過去5年間に約370万円分の贈答品を贈っていたことが判明。そこで驚きなのは、贈答先に延べ85人もの国会議員がいることです。
荒木耕治町長が国会議員に贈答した焼酎。左から「三岳」「三岳原酒」「無何有」「愛子」「水ノ森」
高級焼酎「三岳原酒」を140本贈答
贈答品で多いのは、「三岳」や「愛子」といった人気銘柄を中心とした焼酎。そのなかには、屋久島山麓で熟成させたプレミア焼酎「無何有」や高級焼酎「三岳原酒」などもあり、一般町民には高嶺の花の贈り物です。
町役場は贈答の主な目的を「町産品のPR用」と説明しています。しかし、1人の国会議員に1本2700円の「三岳原酒」を合計で約140本も贈っているケースもあり、単なるPR用にしては異常な多さです。そこで、荒木町長に事情を尋ねると、こんな答えが返ってきました。
「(陳情などで)私が行くと、国会議員は『三岳』を知っている。『おいしい焼酎があるよね』と必ず言われるので、私も贈らなくてはいけないという気持ちになる」
国会議員の「無心」に応えて焼酎を贈る
この説明のとおりだとすると、まるで国家議員が屋久島の焼酎を贈ってほしいと、「おねだり」しているかのようです。そして、荒木町長は「私も贈らなくてはいけないという気持ちになる」ということで、実際に高級な焼酎を渡しているのですから、複数の国会議員が屋久島焼酎の「無心」を続けていることになります。

荒木耕治町長が1人の国会議員に約140本贈った焼酎「三岳原酒」
町民の公金を「自分の財布」のように使う荒木町長
これだけ多くの焼酎を受け取る国会議員も問題ですが、もっと問題なのは、屋久島町民の公金を使って贈っている荒木町長です。その金銭感覚は異常かつ非常識であり、これでは町民の公金を「自分の財布」だと勘違いして使っているようにみえます。
一方、これら大量の焼酎が荒木町長のポケットマネーで贈られているのであれば、私たち町民は何もいいません。自分の感謝の気持ちを表すために、自分のお金で高級な焼酎を国会議員に贈るのは、荒木町長の自由です。

国会議員が事務所を構える議員会館(東京・永田町、Wikimedia Commons より)
町の公金で私的な贈答を続ける
つまり、今回の交際費問題は、荒木町長が自己負担すべき私的な贈答を、私たち町民の公金を使って続けているということです。国会議員が国民のために働くのは当然であり、屋久島町のために何かしてくれたとしても、町民の公金でお礼をする必要はありません。
荒木町長は取材に対して、不適切な贈答であったことを認めたうえで、「私の政治は情の部分が多かったかもしれないと反省している。今後は金額や頻度を改めていきたい」と言っています。不適切な贈答だと認め、今後は改めるというのであれば、これまでの贈答について、荒木町長は適切に対処しなくてはなりません。
2019年末に発覚した航空運賃の高齢者割引を悪用した出張旅費着服問題で、荒木町長は着服を「差額の返還を怠っていた」と釈明して、合計で約200万円を町などに返還しています。そして今回、一連の贈答が不適切な支出だったと認めた以上は、それらの贈答に使った公金は町に返還すべきです。
単に謝って済む話ではありません。
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