【取材後記】この競争入札は「無気力相撲」だ/編集委員会
事前公表の予定価格なのに15億円超で入札 新ごみ処理施設
町要領では入札「無効」で不成立のケース
現在稼働中のごみ処理施設「屋久島町クリーンサポートセンター」(Google Earth より)
屋久島町が近く着工を目指す新ごみ処理施設をめぐり、町が建設業者を決める一般競争入札で、極めて理解に苦しむ入札があった。落札基準額の上限となる予定価格が事前に公表され、その価格を超えた入札金額では落札できないと知っていながら、あえて予定価格を超えて入札した業者がいたのだ。それも15億円も高い金額を入れていたとなれば、この業者は最初から競争する気がなかったということである。
その入札に参加したのは2社のみで、結果的に競合するはずだった片方の1社が落札業者に選ばれたのだが、果たして、これが競争入札といえるのか?
相撲でいえば、最初から勝つ気がなく、わざと対戦相手に負けた「無気力相撲」である。
川崎技研、落札する気がないのに入札に参加
問題の入札は、昨年11月にテスコ(本社・東京都)と川崎技研(本社・福岡市)の2社が参加して実施された。町が事前に公表した予定価格(税抜き)は24億6100万円。それに対し、テスコが上限ぎりぎりの24億4870万円で入札して、落札率99.5%で建設業者に決まった。
一方、競合するはずだった川崎技研は、予定価格を約15億円も超える39億5000万円で入札。事前に予定価格は公表されていて、予定価格を上回る入札では落札できないことを知っていたことを踏まえれば、川崎技研は落札業者になる気が微塵もなかったということである。
こんな無気力相撲のような競争入札が許されていいはずはない。ところが驚くことに、屋久島町はこの入札を成立したと認め、誰とも競争していないテスコと契約するというのだ。
予定価格「事後公表」と「事前公表」は大違い
競争入札の予定価格を事前公表するか否かは、発注する国や地方自治体の判断に任されている。
事前公表せずに入札を実施して、もし参加した全社が予定価格を超える金額を提示すれば、入札不調でやり直しになってしまう。それを未然に防ぐには、参加する全社に予定価格を事前に知らせ、予定価格を超えない入札をしてもらえばいいということだ。落札額が高止まりして、談合が起きやすいという欠点はあるが、職員に予定価格を探るような不正行為や入札不調を防げるという利点もある。
ただし、予定価格の公表が「事後」と「事前」とでは、大きな違いがある。
事後公表の場合は、もし今回のように、参加した2社のうち1社が予定価格を超える入札をしたとしても、それも競争したとみなされる。予定価格がわからないなかで、各社が建設計画を立案した結果として予定価格を超えていたのであれば、その過程で競争が成立することになる。
一方、事前公表の場合は、参加した全社は予定価格を下回る金額で入札することが期待される。なぜなら、予定価格を上回る入札では落札できないからだ。それでも、もし参加した2社のうち1社が予定価格を超える金額を提示したとしたら、その社は最初から落札する気がなかったということだ。そして、競合するはずだった片方の1社は競争することなく、落札業者に選ばれたということになる。
無効とは「最初から効果を生じない状態」
予定価格の「事後公表」と「事前公表」。その違いを踏まえて、屋久島町では「建設工事の予定価格の事前公表に関する要領」を定めている。そして、予定価格を事前公表した入札について、次のような規定を第6条で明記している。
<予定価格を超える価格による入札は、無効とする。>
<入札者が2人に達しないときは、入札を中止する。>
つまり、予定価格を超える入札は競争を放棄したとみなされ、入札した行為自体が「無効」になるということだ。無効とは、有効要件を満たさないため、最初から効果を生じない状態であり、その入札行為がそもそも存在しなかったと判断される。
そして、その結果として、有効な入札をしたのが1社だけとなれば、その入札は「中止」になるということである。
競争のない競争入札は不適法の疑い
この要領を踏まえれば、今回の新ごみ処理施設の入札は「中止」または「不成立」になるケースであり、そのまま成立させる判断は不適法の疑いがある。
この指摘を取材ですると、町の担当課長は「法律行為的に意思表示はあったが、結果として効力がなくなり、落札候補者にはなれないという意味で失格と判断した」という。「無効」ではなく「失格」ということは、入札した行為そのものは「有効」と認めたということだ。そして、川崎技研はその後の価格審査に進むことを許され、「失格」になったということである。
それでは、町が要領で明記する「無効」の規定はどうなるのか。
次の町議会3月定例会で提案される新年度予算案には、この新ごみ処理施設の建設費も計上される。「無効」か「失格」かの判断もさることながら、そもそも、今回の入札は競争が一切ない「無気力入札」だ。16人の町議たちはどう対応するのだろう。
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こういう行為は談合っぽい
納得できないことがある。
荒木町長は議会の一般質問で、今回の入札で採用された横型ストーカー炉を選ぶ理由は「メーカーが多く、競争性があるから」と答弁していた。
ところが、結果はまったくの逆で、入札に参加したのはわずか2社だった。しかも、そのうちの1社は自分から予定価格を上回る入札をして、価格競争を放棄したという。
そこで、今回の入札は「規則に反して不調ではないのか?」と、ある職員に聞いたところ、「一般競争入札であるから成立する」という回答であった。
だが、予定価格が非公表の入札であれば、その言い分は成り立つが、事前公表していたとなると、町の要領が定めたとおり「無効」な入札ではないのか。
都合の良い解釈をして、全く問題意識がないと感じる。
このまま、これで良しとするのか? 良識ある議会の対応が望まれる。