行政監視の責務 否定する町議の暴論【検証・岩山討論】(2) 屋久島町新ごみ処理施設
意図的な無効入札 町議と公取委、町も疑問視 ➡ 岩山鶴美町議、町議ではなく「公取委が調査すべき」「町が動く必要はない」
屋久島町議会の予算審議で、特定の個人を攻撃する討論をしたとして、議長から厳重注意を受けた岩山鶴美町議(2023年3月24日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより)
屋久島町の新ごみ処理施設の建設費をめぐる予算審議で、同町議会の岩山鶴美町議が「個人攻撃」をしたとして、石田尾茂樹議長から厳重注意をされた。討論の内容が自身の考えを主張するものではなく、自分とは異なる意見や行動を名指しで否定、批判するものだったからだ。町民からの多種多様な意見を束ねて議論するのが町議会だが、今回の岩山町議の発言は、言論の府である議会の存在意義を否定するものともいえる。
相対する町議の言動を否定することで、自身の主張を正当化しようとした「岩山討論」を検証する連載の2回目は、疑義がある同施設建設の入札については、国の調査機関である公正取引委員会が調べるべきで、町議や町が調査する必要はないと断じた討論について考えたい。
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公取委「競争が働いたと言い切れない」
岩山町議は3月24日にあった町議会3月定例会で、同施設の建設費が盛り込まれた2023年度一般会計予算案に反対する真辺真紀町議らの主張に対し、各町議の個人名を挙げて否定と批判をした。
反対した真辺町議によると、同施設の建設業者を決めた入札について、公共事業の談合などを調査する公取委が「競争が働いたと言い切れない」「町は入札業者に事情を聴く必要がある」と疑問視しているという。なぜなら、24億6100万円の予定価格が事前公表されていたにもかかわらず、入札に参加した2社のうち1社が、予定価格を15億円も上回る無効入札をして意図的に失格。その結果、もう1社が予定価格とほぼ同じ24億4870万円を提示し、価格競争がないまま落札業者に決まったからだ。
町が聴き取り調査しないため予算案に反対
この入札を公取委が疑問視していることを受けて、真辺町議らは町に入札業者への聴き取り調査の実施を要請。町は調査する方針を示したが、肝心の荒木耕治町長が一向に調査をしないため、真辺町議らは予算審議で「疑念が払拭されていない」と主張したうえで、予算案に反対した。
それに対し、岩山町議は次のように批判。その内容を論点ごとに三つに分けて紹介する。
①公取委が調査しなければ問題ない
「真辺(真紀)議員、(渡辺)千護議員、小脇(淳智郎)議員は公正取引委員会に電話をかけたそうですけれども、違反行為を取り締まる公正取引委員会であれば調査に入るんではないでしょうか」
岩山町議、勝手に論点を広げ「違反行為」か否かを議論
まず、岩山町議は「違反行為を取り締まる公正取引委員会であれば調査に入る」と主張しているが、真辺町議らはこの入札が「違反行為」だとは言っていない。公取委が入札の経緯に疑問を呈しているのに、町が入札業者に聴き取り調査をしないので、「疑念が払拭されていない」と反対しているのだ。逆に言えば、町が早々に聴き取りをして、業者から納得できる回答があれば、反対する理由はなくなるということだ。
ただ、それだけの問題なのに、岩山町議は勝手に論点を広げて、「違反行為」であるか否かの議論を始めた。
行政監視の責務がある町議会議員なのに・・・
何か違反行為があったとき、それが最初から違反行為だとわかる状態で発覚することは、ほとんどない。まずは、「何かおかしい」「これは怪しい」と小さな疑問から始まり、それを地道に調べた結果として、違反行為であるか否かがわかるのだ。
そして、それを調べるのは、警察や検察、公取委などの機関だけではない。行政監視の責務がある議員はもちろん、一般市民であっても不正疑惑を調べることはあり、それがゆえに刑事告発や公益通報といった制度があるのだ。
岩山町議は「公取委が調査しなければ問題ない」と言いたいのだろうが、この主張は完全に誤りである。日本中で無数にある不正疑惑について、いきなり公取委が調査できるはずなく、その端緒に気づいて調べるのは、町議会議員である岩山町議も含めた、すべての日本国民である。
②町議が調査するべきではない
「先ほど担当課長に確認しました。何も連絡は来ていない。動いていないようなんですね」
「あなた方が電話をして、さらに動いているということですけれども、おかしいことがあれば、公正取引委員会がやるべきではないですか」
町議会議員による調査を否定
次に、岩山町議は「あなた方が電話をして、さらに動いている」と言って、この入札について、真辺町議らが調べていることを問題視している。さらには、「おかしいことがあれば、公正取引委員会がやるべき」だと主張して、真辺町議らが調査することを否定までしている。
つまり、岩山町議が主張したいのは、不正や違反行為の疑いがある事案があっても、町議会議員が調査をする必要はないということだ。
どんな疑惑も「見て見ぬふりしろ」と言うのか?
しかし、それは暴論中の暴論である。町議会議員は行政を監視するために、選挙で町民から負託を受け、町長や町役場を向かい合っているのだ。
それなのに、目の前に不正や違反行為が疑われる事案があっても、何も調べないのであれば、それは町議会議員が見て見ぬふりをしたことになる。そして、そんな議員は屋久島町民の公金から議員報酬をもらってはいけない。
③町が調査する必要するのは「おかしい」
「町が動かなければならない必要は、私は何もないと思いますし、町が動く方がおかしいとさえ思います」
町議や町が「動かない方がおかしい」
最後に、岩山町議は「町が動く必要はない」と断言している。だが、公取委は真辺町議に「町は入札業者に事情を聴く必要がある」と言っており、それを受けて、町も業者に聴き取り調査をする方針を示している。
それにもかかわらず、どうして、声高らかに岩山町議は「町が動く方がおかしいとさえ思います」と言い切れるのか。
真辺町議の疑問に始まり、それを受けた公取委、そして町でさえも、この入札に関して疑問があると判断している。それを踏まえれば、「町が動く必要がある」のは当然のことであり、「町が動かない方がおかしいとさえ思います」と言うべきである。
公取委に関する岩山町議の発言は、暴論ばかりを並べたもので、とても議会討論と呼べる内容ではない。
【動画】屋久島町議会の予算審議で、特定の個人を攻撃する討論をしたとして、議長から厳重注意を受けた岩山鶴美町議(2023年3月24日、屋久島町議会、同町議会YouTubeチャンネルより)
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